ジャックと豆の木 その一
パロディ昔話第三十五弾。今回は『ジャックと豆の木』です。
原作は読み返すと、ジャックから見ると大冒険ですが、巨人側から見れば窃盗と殺人……。
歴史はいつだって勝者が決めるものなのですね……。
そんな小難しい内容は一切含まれておりませんので、お気軽にお楽しみください。
昔々あるところに、ジャックという男の子がいました。
ジャックの家はとても貧乏で、とうとう家の最後の財産である牛を売る事になりました。
「高く売って来るんだよ!」
怖いお母さんにそう言われて、ジャックは牛を連れて街へ向かいました。
途中でおじいさんに出会いました。
おじいさんはジャックに小さい豆を見せて言いました。
「ひっひっひ。お前さんのその牛と、この魔法の豆を取り替えてやろう」
「いや、いいです」
「えっ」
「えっ」
牛がンモ〜と鳴きました。
「いや、待て待て。これは不思議な魔法の豆で、すごい事が起きるんじゃよ。ほしいじゃろ?」
「いや、全然。もっと具体的にわかりやすく効果を教えてもらわないと」
「うぬぬ、もっともな意見……」
おじいさんは咳払いを一つ。
「さ! 始まりました! ミステリアスおじいさんの道端ショッピング!」
「おお〜」
ジャックと腰を下ろして、甲高い声で陽気に喋り出したおじいさんに拍手を贈ります。
「さ、では早速商品に参りましょう! 今日ご紹介する商品はこちら! 『魔法の豆』!」
「ほうほう」
「見てくださいこのボディー!」
「緑色ですね」
「この瑞々しさあふれる緑色が、この豆のポテンシャルを物語ります! これは地面に植えると、な、な、何と! 一晩で雲の上まで届くほど成長するのです!」
「すごい」
「しかもただ伸びるだけではありません! 雲の上には宝を持った人喰い巨人が住んでいて、危険ですが高価な財宝が手に入る大、大、大チャンス!」
「わくわく」
「こんなチャンス今だけ! こんな機会めったにない! 見逃したらきっと後悔されますよー!」
「でもお高いんでしょう?」
「ご安心ください! 通常ですと高級牛五頭のところを本日限定で、何と! 牛一頭でお買い求めいただけます」
「やったぁ」
「勿論分割手数料は、ミステリアスおじいさんが全額負担いたします」
「一括払いで」
「ありがとうございます! おっと! 本日はここでお時間となってしまいました!」
「残念」
「それではまたお会いいたしましょう! さようなら!」
「次回も絶対観よう」
豆を受け取ったジャックは、家に帰りました。
「牛は高く売れたんだろうね!」
「この豆を買ってきた」
「お前は何てバカなんだろうね! こんな豆一個でどうするんだい!」
「まぁ任せてよ」
ジャックは裏の畑に豆を埋めると、立て札を書き始めました。
翌日。
天まで伸びた豆の木の前に、ジャックが立て札を立てました。
『富、名声、力、かつてこの世の全てを手に入れた男・人喰い巨人。彼の財宝? 欲しけりゃくれてやる! 登れ! この世の全てがそこに置いてある……。
登る人は挑戦料を払ってください。パラシュートは別料金です ジャック』
看板を見た男達は浪漫を求め豆の木へと登りだす。
世はまさに大木登り時代!
「すごいじゃないかジャック! お客さんが途切れないよ!」
「ね? 牛一頭なら安いでしょ?」
ジャックはにっこり微笑みました。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
はい皆さんご一緒に。
「登らんのか〜い!」
そのうち登るバージョンも書きましょうかね。
次回はネタを頂いたので、『酸っぱいブドウ』でいこうと思います。
原作だと二百文字いかなさそうな短編ですが、果たして……?