北風と太陽 その一
パロディ昔話第三十四弾。今回は北風と太陽です。
子ども達に語る時のバージョンでは短かったので、少し夢詰め込んでみました。
頭からっぽにしてお楽しみください。
昔々のお話。
北風と太陽が、どちらがすごいかを言い合っていました。
「太陽よりオラの方がぜってぇ強ぇぞ」
「フン! 何を言う! 貴様は冬以外は大した事ないだろうが! この太陽系の超エリートである太陽様に叶うなど、バカも休み休み言え!」
「じゃあ力比べしてみっか?」
「いいだろう。オレと貴様の力の差を見せつけてやる!」
そこに旅人が通りかかりました。
「お、アレで試してみねぇか?」
「何? あの旅人が何だと言うんだ」
「あの旅人が着てる、コートっちゅーもんを脱がした方が勝ちって勝負、やってみねぇか?」
「フン! くだらん勝負だ」
「やんねぇならオラの勝ちだな」
「やらないとは言っていないだろう! どんな勝負だろうとオレは貴様に絶対負けん!」
まずは北風が試す事にしました。
「行っくぞー! ハァー!」
北風は凄まじい風を旅人に放ちました。
旅人は驚いてコートを強く握り締めました。
「ぐ、ぐぐっ……!」
「はっはー! 北風さんよ、お前も大した事ないようだな!」
「ま、まだ勝負はわからねぇ……! もってくれよ! オラの身体! 三倍だー!」
凄まじい威力の風が旅人を襲います。
「おい! よせ! 貴様あの旅人ごと吹き飛ばすつもりか!」
「ぐっぐぐぐぐぐ……っ! 四倍だーーーっ!」
旅人は空の彼方に飛んでいってしまいました。
「おい貴様! 何をやってるんだ! あの旅人吹っ飛んで行ったじゃないか!」
「わ、悪ぃ悪ぃ。つい力が入りすぎちまって……」
「今回の勝負は貴様の反則負けだ!」
「いいーっ!? そ、そりゃねぇよ太陽……。な! もう一回! もう一回だけ! な!」
「くどいぞ!」
その一方で飛ばされた旅人は……。
「親方! 空から旅人が! あっちゃー……。まるで自爆に巻き込まれたみたいに倒れてら……。おい! しっかりしろ! オレがお前を死なせねぇ!」
旅人は何やかんやで軽症ですみ、目的地にも早く着けたので結果オーライでした。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
いやー、文字でここまで脳内再生しやすい人ってありがたいです。
ちなみに子どもに無茶な物真似を要求された時は、
「おっす! オラ◯◯! ◯◯するとオラワクワクすっぞ!」
これで乗り切ってます。
ありがとう御歳八十四歳のでぇベテラン様。
次回は『ジャックと豆の木』でいきたいと思います。
ぜってぇ見てくれよな!