長ぐつをはいたネコ その一
パロディ昔話第三十一弾。今回は『長ぐつをはいたネコ』です。
一日一投稿を途切れさせないためのフライングゲット。
オリジナルのネコの機転と度胸が大好きです。
今回はそれを別方向で生かしてみました、
お楽しみいただけましたら幸いです。
昔々あるところに、小麦を挽いて小麦粉にする、粉屋がおりました。
粉屋はある時病気にかかり、三人の息子に自分の財産を分けることになりました。
一番目の息子には、粉を挽くための風車を譲りました。
二番目の息子には、粉を運ぶロバを譲りました。
三番目の末息子には、たった一匹のネコだけでした。
「猫一匹もらったって、どうしようもないよ」
落ち込む末息子に、ネコは言いました。
「おっとご主人! その判断は早計にゃ。ボクに長ぐつと袋を作ってほしいにゃ。そうしたらきっとご主人様を幸せにしてみせるにゃ」
「本当かい!?」
早速末息子は長ぐつと袋を作って渡しました。
するとネコは、長ぐつを履き、袋を持って街へと出かけていきました。
「さぁさ世にも珍しいネコの歌と踊りだにゃ!」
ネコは長ぐつを踏み鳴らし、往来で歌いながら踊りました。
その可愛さと見事さに、皆が袋の中にお金を入れてくれました。
「よし、次にゃ」
そのお金で沢山の餌を買ったネコは、街の猫の中でも可愛らしい猫を厳選してスカウトし、歌と踊りを教えました。
総勢五十匹の猫のパフォーマンスは壮観で、『NYN50』は世界的に有名なユニットになりました。
また、肉球握手会、センター争奪ち◯ーる総選挙など、イベントも盛り沢山で、チケット、CD、関連グッズは飛ぶように売れました。
そしてある日のコンサートで、
「ボクは長ぐつを脱いで、普通の猫に戻るにゃん」
突然の引退宣言。
コンサート会場は悲鳴であふれました。
「ボクの事は嫌いになっても、『NYN50』の事は嫌いにならないでほしいにゃん」
会場は「大好きだー!」の合唱に包まれました。
こうしてアイドルを引退したネコは、プロデューサーとしてその辣腕を発揮し、巨万の富を築き上げ、末息子と共に幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
肉球握手会! これは当たる!
センター争奪ち◯ーる総選挙は、未開封のち◯ーるの量で決める形式なので、食欲に負けると票が減る鬼畜システム。
「あ! 籠にゃんに百ち◯ーる入れたのに九十五になってる! もう、仕方ないなぁ。……もう百追加じゃあい!」
……えげつねぇな。
引退後のネコは時々電話とメールで指示を出し、後は末息子の膝でごろごろするだけの毎日です。
えぇい羨ましい!
ネコ! そこ代われ!
末息子も羨ましい! そこ代われ!
そして膝の上の私を撫で続ける私という哲学的な構図ができあがった訳です……。
嫉妬は悲しみを生むのですね……。
次話はそういえばやってなかった『かぐや姫』でいきたいと思います。
よろしくお願いいたします。