三枚のお札 その一
パロディ昔話第二十四弾。忘れていたネタ『三枚のお札』です。
この話は、お札の効果でいかようにも話を持っていけるのでとても好みなのですが、たまに子どもが元ネタを知らなかったりすると妙な空気になります。
そして元ネタを話すと、語ろうと思っていた矛盾にツッコまれるという……。
そんな微妙に切ない思い出のあるこの話、お楽しみいただけましたらありがたいです。
昔々、ある山のお寺に、和尚さんと小僧さんが住んでおりました。
小僧さんはやんちゃ盛りのいたずら盛り。
なかなかお寺の修行を頑張りません。
「こりゃ。お前はなぜそう修行に身が入らんのじゃ」
「和尚様〜。おいら、この季節は修行どころじゃないんですよ〜。隣の山に栗がいっぱいなっているかと思うと、気になって気になって……」
小僧さんの言葉に、和尚さんは顎を撫でます。
「お前の怠け癖は今に始まった事ではないと思うがの。ま、ワシも栗は好きじゃ。取ってきて良いぞ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「ただし、あの山には夜になると山姥が出る。日が暮れる前に帰るのじゃぞ?」
「はーい! 栗だ栗だ〜!」
「……大丈夫かのう……。念のため、このありがたいお札を持って行きなさい」
「はーい!」
小僧さんは喜び勇んで隣の山へと行きました。
しかし小僧さんは栗拾いに夢中になり、気がつけば日が暮れてしまいました。
「困ったなぁ。あ、こんな時こそ和尚様からもらったお札の出番だ!」
小僧さんはお札を取り出して言いました。
「この暗い夜道を照らしておくれー!」
一枚目の札がLED照明のように、光りだしました。
「お寺への道を示しておくれー!」
二枚目の札が小僧さんの前に浮き、矢印のような形になりました。
「お寺までおいらを運んでおくれー!」
三枚目のお札がセ◯ウェイのように小僧さんを乗せて、地面から少し浮きながら進みだしました。
「和尚さん、いいもの貸してくれたなぁ」
小僧さんは無事に寺に戻り、和尚さんから帰りが遅い事をちょっと叱られたりもしましたが、取ってきた栗を栗ご飯にして食べて大満足でした。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
山姥「やり直しを要求する」
ですよね。
では次回も『三枚のお札』にしたいと思います。
よろしくお願いいたします。