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舌切りスズメ その一

パロディ昔話第十八弾。『舌切りスズメ』になります。


オーソドックスなのを書いていましたが、いまいち筆が乗らず、なろう風(個人の感想)にしてみたらサクッと書けました。


「こんなのなろうじゃない!」と思われるかも知れませんが、素人の浅ましさと、広い心でお楽しみください。

「ばあさん、おめをうちから追放する」

「なっ……!? なして……!?」


 おじいさんの言葉に、おばあさんは目を見開きました。


「なして、じゃと……? おめがスズメのチュン子にした仕打ち、忘れたとは言わせねぇべ」

「あ、あれは洗濯用の糊さ食ったあの意地汚ぇ鳥が悪うて……!」

「ワシが用意したチュン子の飯さ隠したせいじゃろが!?」

「うぅ……」


 全ての真実は、チュン子を探し、たどり着いたスズメのお宿で暴かれていました。


「だ、だどもそのお陰で、宝の詰まったツヅラをもらって、お金持ちに……!」

「黙れっ! ワシはチュン子と……、おめと三人で暮らしていけたら、何も、何もいらねかったのに……!」


 おじいさんの怒りと悲しみの前に、おばあさんのズルい知恵も、よく回る口も、何の役にも立ちません。


「んたば、せめて、スズメのお宿の場所を教えておくれ! チュン子に謝りたいんじゃ!」

「もう遅ぇ! 舌さ切った事が謝ったぐれぇで許されるもんか!」


 それでも必死に懇願するおばあさんに、おじいさんは渋々お宿の場所を教えました。


「心さ込めて謝れ! それでも許される事はねぇと思えよ!」


 おばあさんは大急ぎでお宿に向かいました。




「あぁ驚ぇた……。まっさかあの穏やかなじいさまが、あんな怒るだなんてよぉ……」


 おばあさんは足を緩め、息をつきました。

 するとじわじわと悪い顔が浮かび上がってきました。


「けーっけっけっけ。しょせんはスズメ、トリ頭。頭を下げれば許すじゃろう。そうすればじいさまと悠々自適……」


 ふと、おじいさんの言葉が頭によぎります。


「……そげにスズメが好きなら、一緒に住むくれぇは許してやってもえぇし……」


 そうこうしているうちに、おばあさんはお宿に着きました。

 顔を悲壮なものに取り繕って、おばあさんは門を叩きます。


「チュン子に詫びに参りましたじゃ! じいさまに追放されたこの哀れな婆に、どうか謝らせておくれ!」


 門が開き、おばあさんは中に通されました。

 案内された部屋で、上座に座るチュン子に、おばあさんは土下座をしました。


「ほんにすまん事をした! この通りじゃ! 許してくれ!」


 チュン子は無言で二つのツヅラを出しました。

 おじいさんが持たされたツヅラには宝物がいっぱいでしたので、おばあさんは許されたと思い、顔を上げました。


「ありがとう! ありがとう! どうじゃ、一緒に戻って、じいさんと一緒に暮らすというのは……」


 チュン子は答えず、ツヅラを開けるように促します。


「じゃ、じゃあ遠慮なく……」


 と、言いつつ、ズル賢いおばあさんは、反省していないと思われないように、小さなツヅラを選びました。

 ……しかし。


「ひっひえ〜!? ば、化け物!?」


 ツヅラの中身は開けた者の心で変わるものでした。

 欲、嫉妬、残酷さ、口の悪さなどが恐ろしい化け物になってあばあさんに襲いかかります。


「た、たすけ……!」


 チュン子はそっと目を伏せました。

 もし一片でも優しい気持ちがあったなら……。


「ぎゃあああぁぁぁ!」


 化け物はおばあさんを呑み込みました。


(……あぁ、馬鹿な事をしたべなぁ……。じいさまの言う通り、じいさまとチュン子と、三人で仲良くのんびり暮らせればよかったのになぁ……)


 するとツヅラが光り出しました。

 おばあさんはその光に包まれ、身体も心も光の中に溶けていきました……。




「はっ!?」


 おばあさんが目を開けるといつもの家でした。

 ツヅラをもらう前の、粗末な小さな家。


「なーんだ、昼寝でもぶってただか?」


 優しいおじいさんの声に、おばあさんは涙が出そうになります。


(あれは夢だべか? それともこれが死ぬ前に見るっちゅう走馬灯だべか……?)


「山でケガしたスズメ見つけたんじゃ。手当してやろうと思って連れて来たんじゃ」

「ちゅ、チュン子……!?」


 そこにいたのは紛れもなくチュン子でした。


「チュン子? えぇ名前だな。チュン子、ばあさんが名前をつけてくれただよ」


 おばあさんにはおじいさんの言葉が耳に入りませんでした。


(ワシは、時をさかのぼっただか……!?)


 信じられない事でしたが、絶望していたおばあさんはその希望にすがりつきました。


(今度こそ優しくなるだ……! そして、あのおっそろしい未来を変えるだ!)




「こーらチュン子! おめ、また糊さ食いよって!」

「ちゅんちゅん!」

「なして飯隠してねぇのに、食っちゃなんねぇ方を食うだこのバカタレ!」

「ちゅんちゅん!」


 おばあさんは怒鳴りながら追いかけます。

 しかしその顔はどこか優しさがありました。


「ったく、次やったら承知しねぇからな!」

「ちゅんちゅん!」


 チュン子はおばあさんの肩に留まります。


「まぁったく、こんのバカタレが……」


 おばあさんはその頭を指でなでました。

 宝のツヅラをおじいさんが持ってきた時よりも、おばあさんの顔は幸せそうでしたとさ。


 めでたしめでたし。

 ちゅんちゅん。

読了ありがとうございます。


ねんがんの なろうテンプレートを てにいれたぞ!

な、なにをするきさまらー!


はいすみません。ふざけました。

ちなみにオーソドックスな方は、ツヅラの化け物を従えて、見世物小屋で天下取る話でした。

……子ども相手にはオーソドックスなんです!


方針転換の際、BBAざまぁ展開はオリジナルと被るので、追放とループと改心でハッピーエンドにしてみました。

……全員救われエンドとざまぁエンド、どちらのツヅラが正しいのか……。


次回はイソップ童話『ウサギとカメ』、ギャグ全開で参ります。お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] いい感じの修正です。
[良い点] 確かになろうのテンプレートの、時間を逆行した主人公が改心していい方向に向かうように過ごしてざまぁを回避する、ですね!! 悪役令嬢に多いですが、この場合は悪役高齢嬢でしょうか(笑) 宝は手…
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