ギャングのボス暗殺計画
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百七十弾です。
今回はキリ番ですので、タイトルを伏せて書かせていただきました。
タイトルは物騒ですが、果たして……?
どうぞお楽しみください。
「……ここまで来れば……!」
ワシは森の中で足を止めた。
周りに人の気配はない。
そして荷車に乗せた袋詰めのボスも、目覚めた様子はない。
「ゲス野郎め……!」
ボスへの怒りを力に変えて、ワシはこの先にある泉へと向かう。
ワシらはギャング。
力で支配して金を得る。
人に誇れるような仕事じゃないのはわかっておる。
じゃがこいつは!
ワシらのシマの年端もいかない子どもにクスリを売る事を許可し!
子どももその家族も不幸のどん底に叩き落とした!
何度ワシらが、
『真っ当に稼いでる奴等のアガリで飯を食ってるのに、そいつらを壊しちゃどうにもなりません。どうかシマの中でクスリを売るのはおやめくだされ』
そう忠告しても、
『貧乏人が何人壊れようが、『帝王』はこのわたしだッ!! 依然変わりなくッ!』
とぬかす有様じゃ……!
とうとう我慢の限界が来た……!
しかしボスはまるで未来を見越しているかのように勘が鋭く、暗殺を企てた奴らはことごとく捕まった。
そこで二時間経ってから効く睡眠薬を用意して飲ませた。
『……あ、れ……? 何で、こんなに、眠、いん、だ……? なぜすわるんだ…………? これは! ………… もしかして あの…『飲み物』の……』
ここまではうまく行った……!
後は睡眠薬が切れる前にこの泉に沈めれば……!
「おりゃ!」
荷車を傾け、袋に詰めたままのボスを泉に落とした……!
これで全てが……!
「!?」
な、何じゃ!?
泉が光って……!
お、女!?
何故泉の中から……!?
「貴方が落としたのは……」
ま、まずい!
こいつが何者かはわからんが、ワシがボスを沈めたのを見られた!
……だが無関係の女を我が身可愛さに始末したら、それこそボスと同じ穴のムジナじゃ……!
何とか忘れてもらうよう頼んで……!
「この『黄金の精神』を持つ若者ですか?」
「ぼくは『ギャング・スター』になります!」
「……は?」
誰じゃこいつ……?
うちの若いのか?
いや、こんなチョココロネみたいな前髪をしてる若いの見た事はない……。
と言うか何で泉の中から!?
「それともこの『銀の戦車』のような男ですか?」
「待っていたぞッ!! この男を必死に正そうとする! 君のような者が現れるのをッ!!」
「……はい?」
眼帯に義足に、車椅子……?
怪我人、なのか……?
それにしてもあのコックの帽子みたいな髪型は何なんじゃ……?
「それともこの吐き気を催すような『邪悪』を心に宿した男ですか?」
「よくも!! こんな──ッ! …とるにたらない… 貧乏人のために……!! この便器に吐き出されたタンカスどもが!! このわたしに対して……!!」
「げぇっ ボス!?」
後数時間は眠り続けているはずだったのに……!
……こうなっては、もはや命はないじゃろう……。
せめて最後は正直になって、天の裁きを少しでも軽くするとしようかの……。
「……あぁ、その男を泉に落としたのはワシじゃ……。どんな罰も」
「では全員差し上げましょう」
「えっ」
女はそう言うと、ワシの前に三人の男を置いて、泉へと消えていった……。
え、何これ……?
「生き残るのは…………この世の『真実』だけだ…… 真実から出た『誠の行動は』………… ………決して滅びはしない……… あんたははたして滅びずにいられるのかな? ボス……」
「富や名声より愛だぜッ!」
「オレのそばに近寄るなああ─────────ッ」
「……えぇ……?」
こうして泉から連れて帰った金の若者と銀の柱っぽい男、そしてボス。
ボスは二人から何かにつけて詰められ、クスリの販売を止め、地元から愛されるギャングを目指すようになった。
そしてワシはその後たびたびあの泉を訪ねては、お礼の品を置いて帰るようにしておる。
「この泉のおかげで十分に充実した、実り豊かな人生を楽しませてもらっておる。ありがとう」
あれ以来泉の女は姿を表しはしないが、きっと伝わっている事じゃろう……。
読了ありがとうございます。
この金銀に挟まれたら、ちょっと未来を見通せるくらいじゃどうしようもないですね。
次回は『マッチ売りの少女』で書こうと思います。
よろしくお願いいたします。