金の斧 銀の斧 その八
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百六十三弾です。
今回は『金の斧 銀の斧』で書かせていただきました。
正直者が得をする話の流れは一緒です。
どうぞお楽しみください。
昔々あるところに、一人の木こりがおりました。
木こりは毎日のように森で木を切っては、町で売って生計を立てていました。
そんなある日の事。
大きな泉の側で木を切っていたところ、
「あっ!」
手を滑らせて、斧を泉に落としてしまいました。
「しまった! 僕の斧が……!」
慌てて泉を覗き込みましたが、斧はその影も見えません。
「ど、どうしよう……」
その時です。
泉が光輝き、その光が人の姿を取りました。
すると、
「ばっかもーん!」
「!?」
眼鏡をかけ、髪の毛の薄くなった年配の男性が現れました。
男性は顔を真っ赤にして、今にも頭から湯気が出そうな怒り方をしていました。
「誰だ! うちに斧を投げ込んだのは! お陰で大事にしていた盆栽がめちゃくちゃだ!」
「あ、あわわ……!」
「お前か! 斧を投げたのは!」
「え、そ、その……」
木こりは男性の怒り具合に、逃げ出したい気持ちでいっぱいになりました。
しかし斧がなければ仕事ができません。
木こりは覚悟を決めました。
「……ご、ごめんなさい! 僕が木を切っていた時に、手が滑って、その、泉の中に……」
「なら盆栽を弁償しろ!」
「わ、わかりました……! ではこれから働いてお金を稼いでお返ししますので、えっと、斧を返してもらえませんか……?」
「……」
木こりが震えながらそう言うと、男性は斧を持ったまま泉に沈んでいきました。
「あの、ちょっ……!」
返してもらえないのかとがっかりしたその時、泉から再び男性が現れました。
その手には金色の斧と銀色の斧とが握られていました。
「……これを金に変えて、盆栽を買って来い。そうしたら許してやる」
「え、で、でもそれじゃ弁償に……」
「何、お前さんが正直に謝った。それで儂は満足じゃ。後は新しい盆栽を手に入れられたら、この件はそれでおしまいじゃよ」
「あ、ありがとうございます!」
こうして木こりは金の斧と銀の斧を売ったお金で盆栽を買い、泉へと届けました。
その後木こりは休みの日に泉へ来ては、男性と話したり将棋をしたりして楽しく過ごすようになりましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
まぁ家に斧投げ込まれたら、普通はキレますわな。
原作の女神様、心広過ぎィ!
次回は「たつのこたろう」で書こうとと思います。
よろしくお願いいたします。