シンデレラ その五
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百六十二弾です。
今回も『シンデレラ』で書かせていただきました。
昔話ではない何かと混ざっております。
どうぞお楽しみください。
昔々あるところに、エラと呼ばれる美しい少女がおりました。
エラはとても美しく、また心優しい娘で、両親から愛され幸せに過ごしておりました。
しかしある時お母さんが病気で亡くなり、お父さんが新しいお母さんと再婚しました。
しかしお父さんも病気で亡くなってしまうと、新しいお母さんとその娘達は、エラに家の仕事を押し付けるようになりました。
「さぁエラ! 掃除をしっかりするんだよ!」
「お洗濯もよろしくー」
「お料理と洗い物もねー」
「……はい」
そして暖炉の側で寝かされるようになったエラはいつしか『灰かぶりのエラ』と呼ばれるようになりました。
そんなある日の事。
「お城の舞踏会!?」
「王子様と出会えるチャンス!」
「おめかししなくっちゃ!」
「……」
三人がお化粧をして舞踏会に行く中、シンデレラは家で一人お留守番となりました。
そんな一人ぼっちのシンデレラの元に、
「……おい、早く開けろ……」
「……待ってくれ……。この鍵はなかなか手強い……」
泥棒がやってきました。
(大変……! このままじゃお家の大事な物が盗まれちゃう!)
そこでシンデレラは、まずドアにかんぬきをかけると、取っ手を暖炉の薪で炙りました。
そうとは知らない泥棒は、
「よし! 開いたぜ!」
「よっしゃ!」
と力一杯取っ手を握ったから堪りません。
「うぁっちゃあああぁぁぁ!」
「え、何!?」
「ドアが! 取っ手が! 熱い!」
「そんな馬鹿な……。今は冬だぜっちゃあああぁぁぁ!」
二人の手は真っ赤になりました。
「畜生! こっからは入れねぇ! 窓から行くぞ!」
「あいよ!」
泥棒達の声を聞いて、シンデレラは窓の鍵を一つだけ開けると、その下に台車を置きました。
そんな事とは知らない泥棒が、
「お、開いてんじゃーん」
「不用心ですよーっと」
喜び勇んで入ってきました。
すると足元の台車を踏み、思いっきり転びました。
「うげっ!?」
「な、何で窓際に台車があるんだ……?」
泥棒達を転ばせた台車は勢い良くリビングの奥に滑って行きます。
その行く先には強力なゴムが貼ってありました。
そこに突っ込んだ台車は、反動で泥棒達に向かって戻ります。
「おごっ……!」
「くぅぅぅほぉぉぉ……!」
足の間に台車の直撃を受けた泥棒達は、そのまましばらく動けません。
その間にシンデレラは二階へと上がります。
「……誰だか知らないけど舐めた真似をしてくれたわね……!」
「……タダじゃおかないわよ……!」
若干おかま口調になった泥棒達が、二階に上がろうとします。
しかしそこには既にシンデレラが油を塗っていました。
「う、おお……!」
「こ、これしきの事っわっ!?」
つるつる滑りながら階段を登る泥棒達。
そこにペンキのバケツが降ってきました。
「な、何も見えなうわっ!?」
「目が、目がぁぁぁうぉっ!?」
二人はバランスを崩してそのまま階段の下まで落ちました。
その隙に、シンデレラは二階の奥へと消えました。
その姿を見た泥棒達はにたりと笑います。
「こんな罠を仕掛ける奴、どんな強者かと思ったら……!」
「あんな華奢で可愛い女だったとは……!」
二人は油に手こずりながらも二階に上がりました。
二階の廊下には部屋がいくつかあるものの、下に降りる階段はありません。
「さーて、これで逃げ場はないなー?」
「だが罠には気をつけろよ」
二人は慎重に廊下を進みます。
すると、薄く開いた扉の奥から、何やら音が聞こえました。
「そこかぁ!」
「観念しろお嬢ちゃ……、ん……?」
扉を開けた泥棒は固まりました。
そこには大きな蜘蛛達が、部屋の中を這い回っていたからです。
「うわあああぁぁぁ!」
「に、逃げろおおおぉぉぉ!」
慌てた泥棒達は、階段の油を忘れて駆け降りようとし、派手に滑り落ちました。
梯子で下に降りていたシンデレラが、その先にある地下倉庫の扉を開けていたので、泥棒達はそのまま吸い込まれるように地下室に落ちました。
「うわー! 暗いよ狭いよ怖いよー!」
「出してくれえええぇぇぇ!」
シンデレラは鍵をしっかりかけると、お姉さんの飼っている蜘蛛達を優しく籠に戻し、散らかった家の片付けを始めました。
その後衛兵に引き渡された泥棒達は、実は王宮へも盗みに入っていた事がわかりました。
泥棒達の隠れ家から王子様の大事にしていた黄金のカラスのグッズが取り戻され、王子様は大喜び。
泥棒達を捕まえてくれたシンデレラにお礼を言った事から二人の交際は始まり、後に結婚して幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
こういうのはクリスマスにやっとけってそれ一番言われてるから。
次回は『金の斧 銀の斧』で書きたいと思います。
よろしくお願いいたします。