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人魚姫 その四

日曜の仕事が増えたために期日に投稿できなくなりつつある日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第百五十八弾です。

今回は『人魚姫』で書かせていただきました。

相変わらず悲しい結末にはなりませんのでご安心を。


どうぞお楽しみください。

 昔々ある海の底に、魚達の王様がいました。

 王様には人魚姫という一人娘がおりました。

 人魚姫は他の海の仲間達とは違い、海の上の世界に興味津々。

 よく海から顔を出しては、近くの島や通りかかる船を眺めていました。

 そんなある日の事。


「あら、あの船、こんな嵐に遭っちゃって……」


 嵐の日に顔を出した人魚姫は、波に揺れる船を眺めていました。

 するとそこから人が海に落ちるのを見つけました。


「あっ! 大変! 人間は水の中に長く落ちると死んでしまうのだわ!」


 人魚姫は大急ぎで船に近付き、海に落ちた人を助けました。

 顔を見た人魚姫は驚きました。


「……何て美しい顔……!」


 一瞬うっとりした人魚姫でしたが、すぐに我に返って岸に向かって泳ぎ始めました。

 じきに嵐を抜けた人魚姫は、その男の人を砂浜に寝かせました。


「……う、ぼ、僕は、助かったのか……?」

「あ、気が付いた? もう安心よ」

「あ、ありがとう……」


 うっすら目を開けた男の人は、すぐに気絶してしまいました。

 息はしているのを確認した人魚姫は、それ以上できる事もないので、後ろ髪を引かれる思いで海に戻りました。

 しかしその後も人魚姫は、その男の人の事が気になって仕方ありません。

 男の人を助けた岸に行くと、男の人も人魚姫を探している様子で、何度も見かけました。

 しかし人魚と人間では生きる環境が違いすぎます。

 悩んだ末に人魚姫は、海の魔女に相談をしました。


「へぇ、地上の男にねぇ……」

「お願い! もう一度会いたいの! このひれが人間みたいな足になって地上で生きられる方法はある!?」

「そりゃあるけど、それで良いのかい?」

「え?」


 魔女は力強く拳を握り締めます。


「今は男女同権の時代だよ!? お前が地上に行くのも、相手の男が海に来るのも、同じように考えないと!」

「!」

「その男に会ったら聞いてご覧? もし海で生きたいと言ってくれたら、人が海で生きられるようになる薬を作ってあげるよ」

「はい!」


 人魚姫は岸へと向かいました。

 幸い岸には男の人が、人魚姫を探しておりました。


「あ! あなたは僕を助けてくれた……! に、人魚だったのですか……!」

「は、はい……。それで海の底の魔女さんに相談したら、私が地上で暮らすか、あなたが海で暮らすか、決めたら薬を作ってくれるって……」

「そうなんですか! では僕が海の中で暮らせるようにしてください!」

「え、い、良いんですか!?」


 男の人の言葉に人魚姫は驚きました。

 その様子に、男の人は頭を掻きます。


「実は僕、船乗りの息子なんですが、泳げない上に船から落ちて、呆れた父から勘当されてしまったんです……」

「え……」

「だから人魚になって船乗りを助けられたら良いなって思って……」

「そうでしたか……!」

「それに、その……、あ、あなたと一緒にいたいから……」

「まぁ……!」


 こうして人魚となった男の人と人魚姫は海で暮らし、後に船乗りを助ける海の守護神と呼ばれるようになったとの事でした。

 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


人魚姫が地上に行かなくても良い。

自由とはそういう事だ。

異論は認める。


次回は『マッチ売りの少女』で書きたいと思います。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人間側が向こう側に歩み寄るのも、異類婚姻譚(冷静に考えますと、この「異類」という呼び方も何とも人間本位な考え方と言えそうですが…)の一つの在り方としてあっても良いですよね。 人魚が人間の世…
[良い点] こういう発想もありですね。王子様も人魚姫も幸せになれてよかったです。 [気になる点] まさか、この国の名はアーカムもしくはインスマスというのでは……
[一言] まさかの逆!?
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