金の斧 銀の斧 その六
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百五十五弾です。
今回は『金の斧 銀の斧』で書かせていただきました。
やはりこのネタは書きやすい……。
なじむ パロディに! なじむぞ フハハハハハ
どうぞお楽しみください。
昔々あるところに、正直者の木こりがいました。
ある時泉の側で木を切っていると、
「あ!」
手に持った斧はすっぽ抜けて、泉へと落ちてしまいました。
「僕の大事な斧が……! オーマイゴッド!」
そこは「オーノー!」じゃないのかというツッコミは置いておいて、木こりは泉を呆然と眺めておりました。
すると泉が光輝き、
「木こりよ……」
「め、女神様!?」
斧を持った女神が現れました。
「あなたが落としたのはこの金の斧ですか? それとも銀の斧ですか?」
正直な木こりは正直に答えました。
「いえ、僕が落としたのは、普通の鉄の斧です」
それを聞くと、女神はにっこりと微笑みました。
「あなたは正直者ですね。それではこの金の斧と銀の斧も差し上げましょう」
「え、あ、ありがとうございます!」
こうして木こりは鉄の斧を返してもらった上に、金の斧と銀の斧も手に入れたのでした。
これを聞いた隣に住むずる賢い男は、にやりと笑いました。
(成程、これはいい事を聞いたぞ! 斧を落とすだけで金と銀の斧をもらえるなら大儲けだ!)
男は早速斧を持って、森の泉に行きました。
一応わざとと思われないように、泉を背にしながら木に斧を打ち込みます。
そして頃合いを見て、
「あっ」
斧を泉へと放り込みました。
(よし! これで正直に鉄の斧を落としたと言えば、斧は全て俺の物だ!)
すると泉が光輝き、斧を手にした女神が現れました。
「あなたが落としたのは、この金の斧ですか? それとも銀の斧ですか?」
「いえ、私が落としたのは」
「それともこの巨木をまるでHBの鉛筆をベキッ!とへし折る事と同じように切断する上に、お話までできる『血塗られた斧』ですか?」
「えっ」
男は固まりました。
木こりの話には出てこなかった物騒な斧が、赤黒く光っています。
若干表面が蠢いているようにも見えました。
(え、ちょ、何それ!? 超怖い! これ正直に『鉄の斧です』って言ったら、あの斧まで貰わないといけないの!? ……いや、受け取って誰かに押し付ければ)
その時、血塗られた斧の表面に顔のようなものが浮き上がり、
「……キイイイィィィ」
細く不気味な声を上げました。
「金の斧です! すいません嘘つきました帰ります!」
男はそう叫ぶと、一目散に逃げ帰りました。
残された女神は、血塗られた斧を優しく撫でます。
「残念。木こりさんのところじゃなければ、ブラちゃんを斧じゃなくお話相手として置いてくれると思ったのに……」
「キィ! キィキィ!」
「あら、そうなの? じゃあまだしばらく一緒にいましょうね」
こうして血塗られた斧は、女神とお話をしながら仲良く暮らしました。
そしてずる賢い男は、楽して儲ける事を諦め、真面目に働くようになりましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
ちなみに血塗られた斧はちょっとシャイだけど打ち解けると色々話したがる人懐っこい斧です。
仲良くなると「キイイイィィィ」が『言葉』ではなく『心』で理解できるようになります。
性別はありませんが、性格は女子寄りです。
……誰得でしょうこの設定……。
この話は書き始めると二つ三つネタが浮かぶのが不思議です。
でもあまり同じネタばかりだとなぁ、と書かないでおくと忘れるという……。
メモっとけ? それな。
というわけで次回も『金の斧 銀の斧』で書きたいと思います。
よろしくお願いいたします。