蛇足 その一
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百五十三弾です。
今回は『蛇足』で書かせていただきました。
元々は中国の古事成語で、蛇を一番早く描いた人が酒を飲める、と言う賭けで、書き上げた人が「俺は足も描けるぜ!」と描き足したら「足のある蛇なんているものか」と酒を逃した、というお話。
そこから「余計な事」という意味になりましたが、私が書くとどうなるか……。
どうぞお楽しみください。
昔々ある国で、若者達が仕事を終えて集まっていました。
「いやー、今日の仕事もきつかったなぁ」
「まぁこの酒もらえたからよしとしようや」
「でもこれっぽっち、全員で分けたらすぐなくなっちまうぜ?」
「そうだなぁ。酔うどころじゃないよなぁ」
彼らは職場でもらったお酒でわいわいと盛り上がっていたのです。
しかしその量は少なく、一人分がせいぜいといったところ。
若者達は話し合い、
「じゃあ地面に蛇の絵を描いて、一番早く書き上げた奴が酒を一人で飲む! いいな!」
『意義なし!』
蛇の絵描き勝負を始めました。
それぞれが木の枝で地面に蛇を描き始めます。
すると一人の若者が一番最初に書き上げました。
「はっはっは。皆遅いな!」
「何!?」
「もう書き上げたのか!?」
「……ってこれは何だ? ……萎びたかいわれ大根か?」
「蛇だよ蛇! ほらここが頭で、口をかばーっと開いて……!」
しかしその主張に、皆首を横に振りました。
「これは蛇じゃない」
「百歩譲ってもかいわれ大根だ」
「こんなんだったら、線引いたって蛇って言えるぞ」
「うぅ……!」
コテンパンに言い負かされた若者は、やけを起こしました。
「くっそ! こうなったら、足を描いて、背中に羽を付けて、角もつけて、口からは火を吐く! その鱗は剣を弾き、超賢い、俺の考えた最強の蛇!」
その時天から声が響きました。
『採用〜!』
「えっ、天啓!?」
こうしてこの地にドラゴンと呼ばれる超生物が誕生し、長く人間を脅かす事になりました。
それ以来、余計な事をして物事を台無しにする事を『蛇足』と言うようになったそうな。
読了ありがとうございます。
どこぞのデザイン部では黒歴史にされていましたが、ファンタジー世界のクライアントは器が広いようで……。
次回は『絵姿女房』で書こうと思います。
よろしくお願いいたします。