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一寸法師 その三

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第百四十一弾です。

今回は『一寸法師』で書かせていただきました。

小さい姿がトレードマークと言える一寸法師ですが、今回は別の角度からアプローチして見ました。


どうぞお楽しみください。

 昔々あるところに、一寸法師という男の子がいました。

 一寸法師はその名の通り、背の高さが一寸(約三センチ)程しかありませんでした。

 しかし身体は小さくとも夢は大きく、


「いつか多くの人の役に立つ人になりたい!」


 そんな願いを持っていました。


「そのためにはまず自分の事は自分でできなくては! 男子たるもの、自らの身は自ら守る!」


 そう決意した一寸法師は、お母さんの縫い物の箱から針を一本もらい、剣のように振り回すようになりました。

 そうして身体を鍛えたある日の事。


「父さん、母さん。僕、立派な人間になるためにみやこに行きたい!」

「そんな……! お前、そんな小さな身体で……!」

「よせ母さん……! 男ってのはそういうものだ……!」

「ありがとう、父さん……!」


 こうして一寸法師は都へと旅立ちました。

 お椀の船に箸のかい

 川を下って一寸法師は都へと辿り着きました。


「さて、都に来たは良いが、これからどうしようかな……」


 一寸法師があてもなく歩いていくと、その上に影が落ちてきました。


「な、何だ? うわっ!? 臭っ!」


 それは牛車ぎっしゃを牽く牛でした。

 人懐っこい牛は、小さな一寸法師を気に入り、大きな舌で舐め回します。


「やめろ! この! 切って牛タンに……! わわっ!」

「おい、どうした立ち止まって……。ほら、動け! 動けったら!」

「あらあら、どうしたのかしら?」


 牛車が止まった事に慌てる御者。

 それを不思議に思ったお姫様が、牛車から降りてきました。


「まぁ、小さいお方。あらあら、べとべと……。これ、おやめなさい」


 お姫様の言葉に、牛は舐めるのをやめました。


「うぅ、酷い目に遭った……」

「うちの牛がご迷惑をおかけして申し訳ありません。どうぞ我が家までお越しください。お身体も服も清めさせていただきますわ」

「か、かたじけない……」


 これをきっかけに、一寸法師はお姫様のお屋敷でお世話になる事になりました。

 しかし一寸法師は、ただお世話になるだけでは申し訳ないと思っていました。

 そこでお姫様にある時相談しました。


「姫様」

「何ですの一寸法師?」

「これまで大変お世話になりました。しかし」

「お待ちてください! ここを去るおつもりですか!? そんなの嫌です! ずっとここにいてください!」

「ぐえ! 違……! 潰れる潰れる!」


 一寸法師を逃すまいと両手で強く握るお姫様。

 その強さに上がった悲鳴で、我に返ります。


「あ、申し訳ありません。私ったら……」

「い、いえ、僕の言い方も悪かったので……」


 一呼吸置いて、一寸法師は話し始めました。


「その、いつまでもお世話になりっ放しというのは良くないと思い、何かお仕事ができたら良いなと……」

「あら、そういう事でしたのですね。安心いたしました」

「今度からは最後まで話を聞いてくださいね……」

「それで一寸法師はどんなお仕事をしたいのかしら?」

「僕としてはこれを活かした仕事がしたいのですが……」


 そう言うと、腰の針の剣を抜いてお姫様の前に置く一寸法師。


「あら! 縫い物がしたいのね!」

「えっ違」

「それならお仕事はいっぱいあるわ! 私も一緒に習おうかしら!?」

「いやだから」

「お父様ー! 縫い物の先生をお呼びしてー!」

「だからー!」


 結局一寸法師はお姫様の勢いに押されて、縫い物を習う事になりました。

 最初こそ渋々でしたが、その内に裁縫の楽しさにどハマりした一寸法師。


「布と糸だけでこんなにも多彩な世界を表現できるなんて……! 姫様、学ぶ機会をいただき、ありがとうございます!」

「楽しそうで良かったです」


 一寸法師はその後も腕を磨き、都の流行の最先端を牽引するまでになりました。

 そしてある時、都で暴れる鬼を布と糸だけで制圧し、その名を轟かせる事になるのですが、それはまた別のお話……。

読了ありがとうございます。


『針の剣』

そこだけを膨らませて一話にする……。

……楽な仕事じゃないよ!


ジ◯ンポケ斉藤さんはめげずに頑張ってほしい。


次回は『オオカミと七ひきの子ヤギ』で書きたいと思います。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 裁縫という本来想定されていた用途で活躍出来て、針としても幸せでしょうね。 [一言] そう言えば、民話の一寸法師は針の刀を突き攻撃にばかり使っていましたね。 素材が針なので斬りつけるのは難し…
[良い点] 針をそう使うのに、意表を突かれました(笑)。 [気になる点] 布と針で、鬼を退治? 凄すぎて、想像もつきません!
[一言] 針、そこを極めた!?
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