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ライオンとネズミ その一

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第百三十九弾です。

今回は『ライオンとネズミ』で書かせていただきました。

原作ではライオンが捕まえたネズミを取るに足らないと解放したところ、罠にかかった時にネズミが網を齧って助けるというお話。

今回は原作の流れを追いつつ、なろう風の味付けにしてみました。


どうぞお楽しみください。

 昔々あるところに、ライオンがいました。

 ライオンはとても強く、百獣の王と呼ばれるに相応しい風格を備えていました。

 ある日の事です。


「……む……?」


 昼寝をしていたライオンは、何かが身体に触れている感触に目を覚ましました。


「わぁ! すごい景色! こんなの見た事ないや!」


 背中で響く、弾んだ甲高い声。

 小さい誰かが、背中ではしゃいでいるようでした。


(……誰だ一体……)


 ライオンは跳ね馬のように身を起こすと、


「わっ!」


 素早く仰向けになり、落ちて来た小さなものを掴みました。


「……何だネズミか」

「わ、ら、ライオン……!? 大きい……!」


 驚いた顔のネズミを見て、ライオンは悪戯心を起こしました。


「私の背中に乗るとは良い度胸だな」

「え、あの、すみません! あまりに大きくて、丘か何かだと思って……!」


 慌てるネズミに、ライオンはわざと怖い顔を作りました。


「私は昼寝を邪魔されて機嫌が悪い。一呑みにしてやろうか?」

「……!」

「……なんてな」

「……?」


 ライオンはネズミを地面にそっと下ろしました。


「ライオンさん……?」

「冗談だ。お前のようなちびなど、食っても腹の足しにならぬ」

「あ、ありがとうございます! このご恩は忘れません! ライオンさんが困った時にはきっと助けに来ますから!」

「お前が私の助けに? 馬鹿を言え。まぁ気持ちだけはもらっておく」


 ネズミが何度も頭を下げて立ち去るのを見送ると、ライオンは再び昼寝の続きを始めるのでした。




 しばらくしたある日の事です。

 ライオンが機嫌良く散歩をしていたその時。


「うおっ!? 何だ!?」


 突然地面から網が現れ、ライオンの身体を吊り上げました。

 人間が仕掛けた罠のようです。


「し、しまった! くそっ! こんなもの……!」


 ライオンは慌ててもがきますが、網は頑丈な上に獲物の動きを封じる構造になっているので、ライオンの力でもびくともしません。


「こ、このままではサーカスに売られて火の輪を潜らされる! いや、剥製や毛皮にされる可能性も……!? せめて動物園……!」


 青ざめるライオンの元に、小さな影が駆け寄ります。


「ライオンさーん!」

「!? ネズミ!? お前どうしてここに!?」

「前にお約束したじゃないですか! ライオンさんが困った時にはきっと助けに来ますって!」

「……何と……!」


 その義理堅さに泣きそうになるライオン。

 しかしすぐに表情を曇らせます。


「……しかしこの網は頑丈だ。お前のような小さい身体ではどうしようもあるまい……。人間に見つかる前に早く」

「ウインド・カッター!」

「何ぃ!?」


 ネズミの指先から風の刃がはしり、網だけをスパスパと切り裂きました。


「エアロ・クッション!」

「……おぉ……?」


 網から解放されたライオンの身体を、空気のクッションが受け止めます。


「……ネズミ、お前、一体……?」

「あ、ボク異世界から転生して来たんです。その時に風属性の魔法スキルをもらいまして」

「……転生……? スキル……?」

「はい! でもまさかネズミになってるとは思わなくて、サイズ感がバグってたんです。それでライオンさんを丘と間違えちゃって……」

「……はぁ……」


 ライオンはネズミの言っている事が、ほとんどわかりません。

 しかし一つだけわかっている事があります。


(あの時こいつに下手な事していたら、こうなっていたのは私だった……!)


 ライオンは切り裂かれた網を見て、そう確信しました。


「これからも困った事があったら助けに来ますからねー!」

「……よろしくお願いいたします……」


 にこにこ笑うネズミに、ライオンは敬語で答えました。

 こうしてライオンは、たとえ相手が小さい生き物でも侮らず、丁寧に接する素晴らしい王様になりましたとさ。

 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


見た目で判断すると痛い目に遭う。

なろうの常識ですね。

ライオンはこれで大丈夫。


次回はキリ番。

『復讐屋 十三』再び。

よろしくお願いいたします。

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[一言] チートネズミ!?
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