裸の王様 その二
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百三十二弾です。
今回は『裸の王様』で書かせていただきました。
『馬鹿には見えない服』とは言いますが、「着心地とかでわかるんじゃ……」と思い、王様がわかっている体の話を書いてみました。
どうぞお楽しみください。
昔々あるところに小さな国がありました。
その国の王様は気さくで、国民から慕われておりました。
そんなある日の事です。
旅の商人という男がやって来ました。
王様の前に通された商人は、箱の中から何かを取り出す仕草をしました。
「本日お持ちしたのはこちらの商品です。何と『馬鹿には見えない服』でございます」
「ほぉ……」
王様はにやりと笑うと、
「その服を買おう。いくらだ」
そう言いました。
商人は驚きます。
(普通は何も見えない事に動揺するのに、何故ためらわないのだ……? 俺のパントマイムの腕がそこまで上がっていたのか……?)
しかし商人は、元々王様をだますつもりでやって来ました。
内心で大成功と喜んでいると、
「ではこれからお披露目をする。ついて参れ」
「へ!?」
お金をだまし取ったらすぐ逃げるつもりでいた商人は、再度驚きました。
「そのような素晴らしい服を持って来た者を、国民にも紹介したい。顧客が増えるかも知れんのだ。ついて来るであろうな?」
「……は、はい……」
そう言われては断る事もできません。
(ま、まぁいい。大きい声で『王様がお召しの服は、馬鹿には見えない特別な服です!』と言えば、馬鹿と思われたくない心理が働き、服が見えないとは言わないはず……)
すると王様はおもむろに服を脱ぎ下着一枚になると、御付きの者に持って来させた筆でお腹に顔を書き始めました。
「ぶっ!? お、王様!? な、何を……!?」
「何、これでお主の持って来た服を着れば、見えているかいないか一目瞭然であろう?」
「え……!」
「さぁ早く着せてくれ」
「……畏まり、ました……」
商人は真っ青になりながら、服を着せる仕草をする事しかできませんでした。
王様と商人、そして何人かの御付きの者が街に出ました。
「お、王様は『馬鹿には見えない服』を着ておられ」
「あはははははは! お、王様! 何ですかお腹のその顔!」
「絶妙に線ががたがたで、何とも言えないおかしさが……、ぶふっ!」
「ひーっ! ひーっ! お、お腹苦しい……!」
「おやおや、見えない者ばかりであるな?」
「そ、そうですね……」
「ほれ、もっと宣伝せい」
そう言われて、商人はやけになって声を張り上げます。
「お、王様がお召しなのは『馬鹿には見えない服』でして」
「王様面白すぎ! パーンツ!」
「ふはは。安心せい。服は着ておるぞ」
「王様ワイルドすぎィ!」
「ふはは。この袖、千切ってやろうか?」
「ちゃー! ちゃー!」
「ふはは。こんな子どもには見えなくて当然だな。サングラスでもしておけば良かったか」
「……!」
とうとう商人の心が折れました。
「すみません! 王様をだましてお金を得ようと、嘘をつきました! 本当は『馬鹿には見えない服』なんて……」
「良い」
「え……?」
「お主がだまそうとした事で、儂は国民を笑わせる機会を得た。故に罰は与えん。反省しておるのなら今後は真っ当な商売に精を出せよ」
「……はい!」
こうして商人は真面目に働くようになりました。
気さくな王様のおかげで、この国は派手に栄えはしないものの、笑顔の絶えない国として有名になりましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
……妙だな。
最初は笑った奴にケツバット的なコメディーだったのに、良い話風にまとまるなんて……。
まぁそんな日もありますよ(震え声)。
次回は『ハーメルンの笛吹き』で書きたいと思います。
よろしくお願いいたします。