みにくいアヒルの子 その一
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第弾です。
今回は『みにくいアヒルの子』で書かせていただきました。
つまり前作の元ネタもこれです。
『醜い』ではなく『見難い』と捉えたわけで……。
と、ともあれ今回は原作準拠(当社比)にしております(震え声)。
どうぞお楽しみください。
昔々あるところに、アヒルのお母さんがいました。
お母さんは新しく生まれた卵を大事に温めていました。
そしてある日。
「ぴい! ぴい!」
「まぁ! 可愛い子達!」
卵から出てきた黄色い雛達に、お母さんは大喜び。
しかしその中に灰色の雛が一羽いました。
「まぁ! 何てみにくい子なのかしら!」
「ぴぃ……」
「まったく、どうしてこんなみにくい子が生まれてきたのかしら……!」
それでも自分の温めた卵から生まれた雛なので、お母さんは灰色の雛にグラと名付け、世話もちゃんとしました。
しかしそんなお母さんの態度は、他の雛にも伝わりました。
毛色の違うグラは、格好のいじめの的になってしまいました。
「やーいやーい、きたないはいいろー!」
「おまえ、ほんとはうちのこじゃないんだろー!」
「ち、ちがうよ……! わたし、おかあさんのこどもだよ……!」
「はねのいろがぜんぜんちがうじゃんかー!」
「はいいろのこー! みにくいこー!」
「うぅ……!」
きょうだいからそう言われて、グラはどんどん卑屈になっていきました。
すると他の鳥の雛達も、グラをいじめるようになってしまいました。
「おまえみたいなきたないいろのとりは、みたことがないなー!」
「やーいはいいろー! はいいろどりー!」
「……ごめんなさい、ごめんなさい……。はいいろにうまれてごめんなさい……」
その時です。
「ほぉー? こんないろできたないなら、オレさまはもっときたないのか?」
「か、カラスのソートさんだ……!」
「いちねんとしうえのせんぱいに『おまえのクロはね、きったねー』ってからかわれて『じゃああんたら、あかくしてやりますよ』ってボコボコにした……!?」
「やべえよやべえよ……!」
怯える雛達に、ソートは宣言しました。
「こいつはオレさまのこぶんにする! オレさまとタイマンはりたいヤツは、コイツにケンカうるといいぜ!」
「……い、いやー、そんなー……」
「し、しつれいしましたー……」
雛達は引きつった笑いを浮かべて、去っていきました。
「……あ、ありがとう……」
助けてくれたと思ったグラは、ソートにお礼を言いました。
すると、
「このバカ!」
「ぴえっ!?」
ソートの羽チョップが、グラの頭を直撃しました。
「い、いったーい! なにするの!」
「あんなヤツらに、いいたいようにいわれてんな! 『うるせえバーカ!』 くらいいってやれ!」
「そ、そんなのいえないよ! あいてはいっぱいだし……!」
「オレさまはそうしてきたぞ! このいちぞくにつたわる『しっこくのはね』をバカにするヤツは、ぜんぶブッとばしてきたからな!」
「ふわ……!」
「おまえのはいいろのはねだって、おひさまのひかりでキラキラしたら、ぎんいろでキレイじゃねぇか!」
「!」
「あとはおまえがガンバって『はいいろのはねスゲー!』っていわせりゃいいんだよ!」
親からも否定されてきた羽の色。
それを綺麗と言われて、グラの心に熱いものが宿りました。
「……そうだよね! わたしがガンバって『はいいろのはねってスゲー!』っていわせる!」
「そのいきだ! はねのいろなんかカンケイねー! おまえはおまえで、スゲーとりになればいいんだよ!」
「うん!」
その日以来、グラは見る見る元気になり、周りから何を言われても動じない、堂々とした姿を見せるようになりました。
そして数年後。
「ソート!」
「……!? お前グラ、か……!?」
「うん!」
「……え……、羽、どうした……?」
成長したグラの姿に、立派なカラスとなったソートが驚きます。
グラの羽は、朝日にきらめく雪のような、美しい白に染まっていたからです。
「私ね、実は白鳥の子だったみたい!」
「え!? そうなのか!?」
「うん! 卵の時にお母さん……、アヒルの巣に紛れ込んじゃったんだって!」
「そ、そうか……。ふぅん……」
グラが鳥の王様とも言われる白鳥の一族と知り、何となく距離を感じるソート。
その身体にグラが抱きつきます。
「なっ……! お前……! 何を……!」
「何で引いてるのー? 『はねのいろなんかカンケイねー!』って言ってくれたのはソートでしょー?」
「え、ま、まぁ、そんな事も言ったが……」
抵抗が緩んだ隙に、グラは更に強く抱きつきました。
「私はソートがいたから今日まで生きてこれたの!」
「そ、そんな大層なもんじゃ……」
「だから私、ソートのお嫁さんになりたい!」
「んなっ!?」
慌てて逃れようとするソートを、グラは強く抱きしめて離しません。
「私達の雛はどんな色になるのかなー」
「待て! 時に落ち着け!」
「一緒に大人の階段、の・ぼ・ろ?」
「わ、わあああぁぁぁ!」
後にグラはソートと結婚し、幸せな家庭を築きましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
ちなみに前作にもヒントはばら撒いていました。
ダクリンは『アヒルの子』を意味するducklingから取りましたし、その義父ドメギは『アヒル』を意味するdomestic geeseから取りましたし、スワノ王家は『白鳥』を表すswanから取りましたし。
『僕は悪くない』
……シテ……。許シテ……。
それにしても今回はドアマットヒロイン系にして、幼馴染のカルガモと俺様系カラス、王子様系白鳥の三羽から同時に求愛される乙女ゲー展開にするはずだったのに、何故こうなってしまうのか……。
ソートを男前にしすぎたからね。仕方ないね。
ちなみに今回は原作のアンデルセンの母国デンマークの言葉から名前を作りました。
グラは灰色、ソートは黒でした。
まんまだけど原作リスペクトだから、いいよね……?
若干本来の発音と違うけど、いいよね……?
……ごめんなさい。
次回は『裸の王様』で書こうと思います。
よろしくお願いいたします。