オブスキュラー・ハンター
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百三十弾です。
今回はタイトルを伏せて書かせていただきました。
「原作? 知らない子ですね」ばりの勢いで、題材のタイトルの語感だけで書いていますので、元ネタがわからなくてもお気になさらずに。
どうぞお楽しみください。
「く、くそ! どこから来るんだ!」
「わからねぇ……! いつの間にか残っているのは俺達だけだ……!」
「まるで見えない敵を相手にしてるみたいだ……!」
静まり返った夜の森の中。
三人の男達は仲間に背を預け、心細そうに武器を構える。
かさっ。
「!? 誰だ!」
「何だ! 敵か!?」
「どこだ! どこにいる!」
葉が立てた音に、殺気立つ男達。
しかし暗い森の中には何の姿も見えない。
「……いや、何もいない……。すまん、何かいたような気がして……」
「は、……はははっ! 馬鹿野郎、驚かすなよ!」
「……」
「お前も何か言ってやれ! ……何黙ってるんだ? おい!」
恐怖を紛らわそうと肩を軽く叩くと、男の一人が崩れ落ちた。
「なっ……!? 何だいった、ぃ……」
「!? お、おい! 二人とも!? 何があったんだ!? ……くそ! くそ! くそぉ!」
一人残された男が、やたらめったらに武器を振り回す。
しかし、
「はぐっ……」
静かで重い一撃に、逃れる術もなく意識を手放すのだった。
「見事だダクリン」
「恐れ入りまする」
覆面を付けた少年ダクリンが、里長の前に跪いた。
「これより我が一族最強を示す『見えざる狩人』を名乗るが良い。これで我が里を脅かす者はおらぬだろう」
「里に拾って頂いたこの身がお役に立てましたなら幸いにございまする」
「しかし何故全員生かして捕らえたのだ? 奴らは里を害さんとやって来た者達。一人二人残して後は殺せば良いものを」
里長の目に鋭い光が宿る。
それを逸らさず受け止めると、ダクリンは静かに答えた。
「義父の教えにございまする」
「……ふむ。ドメギが何を言った?」
「『敵を殺せば楽だがそれまで。生かしておけば情報を取るも交渉に使うも思いのまま』と」
「……確かにな。しかし」
「我が手にかかれば、殺すも捕らえるも手間に差はござりませぬ」
「……そうか。そうじゃな。ご苦労であった。下がって良いぞ」
「失礼いたしまする」
ダクリンは一礼をして里長の前を辞した。
「父様ー!」
「おぉダク! 里長は何と?」
「『見えざる狩人』を名乗って良いと言われました!」
「そうか! これでお前の里での地位は安泰だろう! これで一安心だ!」
ドメギに頭を撫でられて、ダクリンは顔を綻ばせる。
「やはりダクは優秀だな! 俺の教えた技など覚えるどころか軽々とその上を行く!」
「父様の教え方が凄いからです! 孤児であった僕に、色々な事を優しく丁寧に教えてくれたからです!」
「いや! 生まれ持った『真昼でも見難い』の力と、それを活かすために頑張り続けたダクの努力の成果だ! 俺は鼻が高いぞ!」
「えへへ、嬉しい……!」
まるで褒められて喜ぶ犬のように、くるくる回って嬉しさを全身で表すダクリン。
しかし少しすると、青菜に塩をかけたかのようにしゅんと小さくなる。
「……父様……」
「どうしたダク?」
「里長様から、敵は殺した方が楽って言われたんです……」
「確かにな……。だが殺さないで捕まえる利も大きい。それはわかるな?」
「……うん。でもあいつらは僕や父様、里の皆を傷付けようとしに来たんですよね……? 僕、父様を守るためなら……!」
置き火のように静かに燃えるダクリンの焔。
その頭に再び優しい手が宿る。
「いや、どんな敵でも、ダクがいれば俺の身が脅かされる事はない。たとえ敵でも、殺さずに捕らえてくれ。お前ならそれができる」
「! はい! どんな敵でも僕、絶対に捕まえますから!」
張り切ってはしゃぐダクリンに、目を細めるドメギ。
しかしその奥には強い光が宿る。
(スワノ王家の血を継ぐも、母の身分の低さ故に王宮に留まる事を許されなかった子……。しかし王宮が不穏な今、血に染めずにおけば好機も訪れる……!)
強い決意を秘めつつ、ドメギの目は優しいままだった。
「父様! この里は僕が守ります!」
「あぁ、頼りにしているよ」
この後、ダクリンが己の素性を知り、大きな騒動を巻き起こす事になるだが、それはまた別のお話……。
読了ありがとうございます。
続きません(力説)。
実はダクリンが女の子で、成長するにつれ血の繋がらない父親ドメギに仄かな想いを抱くようになり、スワノ王家に迎えられ権力を手にした後、夫として迎えに来るとか考えていません(迫真)。
次回は答え合わせとして、この話を原作準拠で書こうと思います。
俺は原作準拠にする。
多分原作準拠だと思う。
原作準拠じゃないかな。
ま、覚悟はしておけ。
次回もよろしくお願いいたします。