表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/171

白雪姫 その二

パロディ昔話第十三弾。今回は白雪姫セカンドシーズンです。

初回は鏡と魔女だけでほとんど白雪姫が出てこなかったので、今回は活躍させてみました。


なろう風白雪姫、お楽しみください。

「白雪姫、あなたを城から追放するわ」

「えっ!?」


 私は訳が分からなかった。

 王女である私が、追放!?


「な、なぜ私が追放されるのですか!?」

「先妻の娘というだけで理由は十分でしょう?」

「そんな……!」


 お母様が亡くなって辛かった。

 新しいお母様は少し怖かったけど、仲良くしようと頑張った。

 それなのに……。


「それに何かと大臣達の仕事に口出しをしていたのが目障りだったのよ」

「わ、私は国のためを思って……!」

「お黙りっ!」

「ひっ……!」


 新しいお母様の言葉は強くて怖い!

 まるで黒い風が吹き付けてくるよう……!


『キョーキョーキョー。追放で済ませた魔女様に感謝するですよ』

「鏡! 私の事はお妃様と呼びなさい」

『キョーキョーキョー。これは失礼しましたです。いや、女王様とお呼びした方が良いかなです』

「ふふん、それも悪くないわね」

『キョーキョーキョー』


 何、あれ……!?

 鏡が喋ってる!?

 魔女、そんな、恐ろしい……!


「そこの兵士! さっさと白雪姫を、いやその小娘を森に連れて行きなさい!」

「……はっ」

「待って! 最後にお父様に会わせて……!」

「さっさと連れてお行き!」

「お父様あああぁぁぁ!」


 抵抗も虚しく、私は城を追い出された……。




「大丈夫です姫」

「……え?」


 森に向かう道の途中、何もかもを失って言われるままに歩く私の肩を、兵士さんが優しく撫でた。


「これはお父上もご存知の上の策略。私は協力者です」

「あ、あなたは!」


 外した兜から溢れる金髪の髪!

 涼しげな蒼い瞳!

 史上最高の美男子と噂される、隣国の王子様!?


「今まで大変でしたね。王が病気がちなのを良い事に、好き勝手に振る舞おうとする大臣達。姫はそれを書類の確認や実地調査を行って食い止めていた……」


 温かい言葉に涙が出そうになる。

 私の頑張りを認めてくれる人がいたんだ……!


「王はその腐敗を一掃するべく、あの魔女を敢えて城に入れました」

「腐敗を一掃……!? どういう事です!?」

「姫は追放という名目で森の中の小人達の元へ、国王には療養という事で我が国に。歯止めを失った大臣達と魔女はどうするか……」


 想像して背筋が寒くなる!

 今まで必死に守って来た国民の暮らしが、崩れ去ってしまう!


「そんな! やめてください! 彼らの暴走は私の至らなさのせいです! 国民にそのツケを背負わせるなんて……!」

「貴女だけのせいではない!」


 思ってもいなかった強い声に、溢れそうだった涙が止まる。


「……失礼。しかし貴女の尽力に知りもせず、税を下げろ待遇を良くしろと叫ぶ国民に、責任が無いとは言わせません」

「う……」


 胸が痛む。

 街の整備、流通の強化、天災への備え、そのために必要最低限の税金を国民にお願いしている。

 でも国民からは「税金なんて払う意味があるの?」と言われる。

 大臣達からは「もっと公共事業に金を落とさないと。良い業者を知っていますが、少々予算が足りませんな……?」と増税を迫られる。

 行き詰まっていたのは、確かだ……。


「……心痛を和らげるつもりでお話ししたのですが、逆に苦しめてしまいましたね。すみません」

「いえ、そんな事は……」

「策はこちらで動かします。姫はこれまで頑張った休暇とでも考えて、小人達の元でのんびりお過ごしください」

「あ、ありがとうございます」


 そう言われても、二年くらい働き詰めだったから、休暇ってどう過ごしたら……。


「それとこれを」

「え?」


 渡されたのは小瓶。そして中には白い粒が沢山。

 薬……?


「解毒薬です」

「……まさか!」

「えぇ。国民の不満が高まれば、姫の復帰を求める声も上がるでしょう。その時魔女や大臣達が、国民を黙らせるために暗殺を目論む可能性があるので」

「……その時に外傷があってはいけないから、毒を使うだろう、という事、ですね……」

「ご明察」


 恐ろしい……!

 そんな事が想像できてしまう自分も含めて……!


「小人達以外から飲食物を提供された際にはこれを飲んでから口にしてください。毒を中和する過程で強制的に眠ってしまいますが、相手はそれを死んだと思い込む事でしょう」

「……分かりました」


 悔しい……!

 もどかしい……!

 私の力が足りないせいで……!


「貴女は十分頑張った」

「!?」


 頭を、撫でられてる……!?


「これは貴女の頑張りを皆が知る良い機会なんです」


 やめてやめて!

 私を褒めないで! 許さないで!

 自分への怒りが、無力感が、溶けてしまう……!


「さ、着きましたよ姫」


 涙に揺れる視界に、小さな家が映った。


「それでは良い追放生活を」

「ありがとう、ございます……!」




「なーによこの請求書! ちょっと贅沢しただけなのに!」

『キョー……。大臣達が魔、お妃様に倣って贅沢をしたですよ。国庫も底をついたのです……』

「あの小娘、どんだけやり手だったのよ! この税金でほぼ完璧に公的支援を整えた上に、僅かずつでも貯蓄していたなんて!」

『キョー……。徹底した緊縮財政のなせる技なのです。大臣達が煙たがるのも無理無いなのです』

「福祉の予算を削って交際費に回して……、あー! それでも足りない! 税金を上げるしか手はないわね……。これ位上げれば……」

『キョー!? そ、その額の増税は物凄い反発を招くですよ!?』

「いいからこれで予算がどうなるか再計算なさい!」

『キョー……。ボクは魔法の鏡で、占いとか遠隔視とかが本職なのです。毎日毎日計算ばかりで嫌になるですよ……。姫はよく二年もこれを、ですよ……』

「そうだ! あいつを呼び戻しましょう!」

『キョー!? それは駄目なのです! 今の国の状態で姫が城に戻ったら、追い出されるのはボク達なのですよ!?』

「捕らえて地下牢で経理だけをさせるのよ! 国民のためだとか言えば、あいつはやらざるを得ないわ!」

『キョー……。そんなにうまくいくですか……?』




「何よあの小娘! 何が『今のスローライフに満足なので、今更ブラックな仕事に戻れなんて言われてももう遅いです』だなんて!』

『キョー……。予想できた答えなのです……』

「税金を上げたら毎日のようにデモや陳情が続くし……」

『キョー……。退陣要求と姫の復帰が日に日に勢いを増してるですよ……』

「……こうなったらあの小娘、やるしかないわね」

『キョー!? 王族を理由もなく手にかけたら、国家反逆罪なのですよ!?』

「このままじゃジリ貧よ! 一発逆転を狙うのよ! あ! 姫が死んだとなれば大きな墓を作る名目で税金を上げられるじゃない! よーし早速……」

『ま、魔女様!? ……キョー。行ってしまったのです。もう駄目かも分からんね、なのです……』




 こうしてまんまと策にはまった魔女は、毒リンゴでの暗殺未遂で捕まり、芋づる式に大臣達の悪行も暴かれました。

 腐敗は一掃され、国民から復帰を歓迎された白雪姫によって、国の混乱は最小限で収まりました。

 隣国の王子様を夫に迎える事も決まり、外交も強化した白雪姫の内政チートが幕を開けようとしています。


「いやー! 出してー! 私は大臣達に騙されただけよー!」

『キョー……。前半結構な贅沢三昧をしてたので、その言い訳は通じないなのですよ……』

「そうだ! 鏡よ鏡、ここから一発逆転できる手はなぁに?」

『冗談は顔だけにするですよ』

「キィー!」


 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


追放系って書いてみると難しいですね。

白雪姫の幸せスローライフを書いて、魔女の修羅場との対比が描ければ良かったんですけど、追放の理由とざまぁパートだけでごりごり字数を食うので……。


また何かの折に挑戦できたらと思います。


次回は大半の人が最後まで知らない『金太郎』、いってみましょうか。

また次作もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] よくある、追放モノのようですが、大変おもしろいです!←絶賛
[一言] 読みました。面白かったです! 白雪姫のスローライフパートも読みたかったですが、たしかに長くなってしまうでしょうか。 隣国の王子様、史上最高の美男子ってすごい呼び名ですね(笑) なんだこのイ…
[気になる点] 白雪姫の幸せスローライフ with 7人の小人 [一言] 鏡が、計算仕事に役立つとは……。 でも、予算書は、鏡文字で読みにくそう……。 白雪姫も、財政の立て直しで大変だよね。 そうい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ