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ひきょうなコウモリ その一

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第百二十五弾です。

今回は『ひきょうなコウモリ』で書かせていただきました。

獣と鳥の争いの中で、どちらにもいい顔をした結果、争いの後に居場所を失ったコウモリ。

そこにパロディ要素を足すと……?


どうぞお楽しみください。

 昔々、まだ人間がいなかった頃。

 地上は動物達の楽園でした。

 しかしある日、獣達と鳥達が争いを始めました。

 きっかけは獣の王様ライオンの頭の上に、鳥のフンが落ちた事でした。


「これは鳥からの許し難き侮辱であり、宣戦布告である! 奴等に我らの怒りを知らしめるのだ!」


 これまでにもフンを頭に落とされた経験のある獣達は、ライオンの言葉に従って鳥達に石を投げたり木の枝で叩いたりしました。

 そんな事とは知らない鳥達は、突然の攻撃に戸惑い、怒り、反撃に転じました。

 これによって獣達と鳥達は争う事になったのです。

 困ったのはコウモリ達でした。

 一族で集まって協議を行います。


「獣達からも鳥達からも援軍の要請が出ておる。どちらにくみするべきと思うか、皆の意見を聞かせてもらいたい」


 おさの言葉に、年配のコウモリが翼を上げました。


「我らは古来より獣の王に庇護されて参りました。付くべきは獣側ではないかと愚考致しまする」

「ふむ。確かに獅子殿にはこれまでの恩義がある。あだ疎かには出来まいな」


 おさは深々と頷きます。

 すると今度は若いコウモリが翼を上げました。


「しかし此度のいくさの仕掛けは獣側からとの事。しかも理由はフンを獅子殿が頭にかけられた事と聞きます。果たしてこれに大義はあるのでしょうか」

「確かにな。我ら空を飛ぶものにとってフンを出して身体を軽くするは必要な事。詫びを求めるのではなくいきなりいくさとは、獅子殿らしからぬ行い」

「しかも鳥達は、獣である我々を『空飛ぶもの』として迎え入れようとしております。彼らの譲歩を無碍には出来ませぬ」

「……であるな」


 おさは腕を組んで、うーむと唸りました。

 

「……おさ如何いかが致しますか」

おさ

おさ

「……うむ、ではこうしよう」


 顔を上げ、にやりと笑ったおさの言葉に、一族は震撼しました。




 数日後。


「よくぞ来てくれたなコウモリよ! 空飛ぶ貴君らが味方にあれば、彼奴等きゃつらなど蹴散らしてくれよう!」

「必ずやご期待にお応えしましょうぞ」


 年配のコウモリの言葉に、ライオンは満足げに頷いた後、首を傾げました。


「しかし数が少ないように見受けられる。一族を上げての参戦と聞いていたのだが……」

「申し訳なき事に御座います。若い愚かな連中が、『空も飛べないものに与したくない』などと出奔しまして……」

「何!?」


 怒り王座を立つライオンを、年配のコウモリは落ち着いて宥めます。


「ご心配召されませぬよう我等が王よ。奴等など所詮若造。我ら古参のつわものにかかれば一捻りであります」

「む……、ならば良かろう。貴君等の力を楽しみにしておるぞ!」

「そこで我らが十全な戦働いくさばたらきをする為に、一つお願いの儀がございまして……」

「うむ、申してみよ」

「実は我等、飛ぶ為に少しでも重さを減らすべく、我知らずフンを落とす事があり、その許しを得たいと思いまして……」




 その頃鳥達の側にも、コウモリ達がやって来ていました。


「これはこれはコウモリ殿! よくぞお越し下さった! ささ此方こちらに!」

「ご歓待、感謝致しまする」


 若いコウモリは、ワシの案内に従って鳥の王クジャクの元に通されます。

 クジャクは鷹揚に頷きました。


「よくぞ来られたコウモリ殿。鳥の王とは言え、飛んで逃れる事の出来ぬ身。警護を付ける無礼を許して頂きたい」

「いえ、無理からぬ事。頭の固い老骨が獣に付いてしまった以上、我等を警戒されるのも無理からぬ事」

「だが獣らから貴殿等を引き抜けたのは大きな成果。このいくさ、我等の勝利ぞ!」


 クジャクの言葉に意気上がる鳥陣営。

 そこで若いコウモリがにっこり笑って言いました。


「しかし獣の風習とは斯くも理解し難きものですなぁ! 頭にフンを付けられる事が侮辱だなどと! 我等空飛ぶものに、フンは生理的なものだと言うのに!」




 数日後。


「この度は鳥達の習性も知らず、無軌道な行いに至り、申し開きの言葉も無い!」

「我等こそ知らぬ事とはいえ、取り返しの付かぬ無礼を働いた! 許される事では無いが謝罪させて頂きたい!」


 コウモリの手引きで両陣営の王がお互いに謝る事で、争いは終わりました。

 その最大の功労者でコウモリですが、


「我等はどちらにも与した卑怯者。褒められるいわれは御座らぬ」


 と両陣営からの誘いを断り、洞窟に住み、夕方に活動するようになりました。

 しかしそれも、昼間に飛ぶ鳥と、夜に活動する獣との間を取り持つ為ではないかと、皆にささやかれたのでした。

 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


『ひきょう』が平仮名だからね。仕方ないね。

お父さんが好きです。夏に暴れた弟も好きです。

でも明治まで家名を残した兄がもっと好きです!


これで誰モチーフか分かったら僕と握手!


次回は『ツルとキツネのごちそう』で書こうと思います。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
長さん、お見事な采配でしたね。 何気ない振りをして今回の諍いの原因がお互いの不理解から来ていることを諭して、争いを収めてしまうなんて。 その後もでしゃばることなく謙虚でいて、格好良かったです。 一族…
[良い点] 空の生き物と獣の両方の特性を持っているからこそ、蝙蝠は両者の間を取り持つ立ち位置になったのですか。 もしも淡水魚と海水魚の間で対立が起きたら、川と海とを行き来する鮭が間を取り持ちそうですね…
[一言] え!? 逆手にとった「和平交渉」!?
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