花咲かじいさん その一
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百二十二弾です。
今回は『花咲かじいさん』で書かせていただきました。
原作ではポチが大判小判を掘り当てたせいで、正直者のじいさんはポチを殺されるわ、形見の木で作った臼は灰にされるわで、かなり不幸な感じなので、その辺取っ払ってみました。
どうぞお楽しみください。
昔々あるところに、正直者で心優しいおじいさんが住んでいました。
おじいさんはある日、真っ白い子犬を拾いました。
おじいさんはその子犬にポチと名付けて、まるで我が子のように大事に育てました。
ある日の事、裏の畑を耕していたおじいさんに、ポチがワンワンと吠えました。
「ここ掘れワンワン。ここ掘れワンワン」
「ぽ、ポチが喋った!?」
驚くおじいさんでしたが、言われた通りに掘ってみると、そこから大判小判が詰まった瓶が出てきました。
「こりゃどういう事じゃ……!」
さらに驚いたおじいさんでしたが、ポチの恩返しと考えて、家へと持って帰りました。
しかし優しいおじいさんは、その大判小判を独り占めするつもりはありませんでした。
村の人が何か困っているのを見かけては、町で一部を小銭に変えた大判小判を使って助けるようにしていました。
村の皆はおじいさんに感謝しましたが、隣に住む意地悪なおじいさんだけは別でした。
「あの貧乏な家に、あんな風に人を助ける金があるはずがねぇ……。何かあるだ……!」
意地悪なおじいさんは、優しいおじいさんの家を覗いて、瓶に入った大判小判をおじいさんが取り出すのを見ました。
「何だその金は!」
「あ、お、お隣の……!」
「そんな大金、どこで手に入れた! 教えねぇと村中に『盗んだ金を隠し持ってる』と言いふらすだぞ!」
「ち、違うだ、これは……!」
問い詰められたおじいさんは、ポチに言われた所を掘ったら出てきた事を話しました。
「そ、そんな事が……! ならその犬、おらにも貸せ!」
「し、しかし……」
「独り占めする気だか!? そんながめつい奴とは思わなんだぞ!」
「うぅ……」
おじいさんは悩みました。
ポチは大事な家族です。
お金の事しか考えていなさそうな意地悪なおじいさんに貸すなんて、全く気が進みません。
(大判小判が出たのだって偶然かもしれねぇ……。もし出なかったらポチがどんな目に遭わされるか……)
そこで優しいおじいさんは、
「……だったらこれを持って行くといいだ……」
ポチの代わりに瓶を差し出しました。
まさか大判小判の方をもらえると思っていなかった意地悪なおじいさんは面食らいました。
「え、こ、こっちをもらえるのか!?」
「あぁ、だからポチは勘弁しとくれ……」
「あ、そ、それならえぇ! もらっとくぞ!」
意地悪なおじいさんはうきうきと家に帰りました。
「くぅーん……」
優しいおじいさんは、申し訳なさそうな顔をするポチの頭を撫でました。
「お前の恩返しを無にして悪かった。だがお前さえいてくれればおらは幸せだから……」
「ワン!」
ポチは嬉しそうに吠えました。
さてその後、町で豪遊していた意地悪なおじいさんは、その無茶苦茶なお金の使い方が不審に思われてお役人に捕まりました。
「このような大金をどこで手に入れた! 隠し立てするとためにならんぞ!」
「あ、あの、犬が裏の畑でここ掘れワンワンと鳴いて……」
「犬が喋るか愚か者! お上を謀ろうとは不届きな奴! かくなる上は鞭打ち、石抱き、水責めを駆使して必ずや口を割らせてやろう!」
「ひえぇ! ち、違うんでごぜぇます! 隣のじいさんが持っていたのを譲ってもらって……!」
「かような大金をおいそれと譲るものか! 盗んだか! 脅したか! 何をした貴様!」
「ひ、ひいぃ……!」
お役人の剣幕に意地悪なおじいさんは全てを白状し、残ったお金は優しいお爺さんの元に戻りました。
しかし優しいおじいさんは、またポチを巻き込む騒動になっては困ると、お金を村に寄付して堤防を支える木を植える事にしました。
その木は毎年春になると綺麗な花を咲かせたので、それを植えたおじいさんを『花咲かじいさん』と呼んで、いつまでも語り継ぎましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
今回だけはねー ポチが死なないから
いいんじゃあないか………………
次回は『長ぐつをはいた猫』で書きたいと思います。
よろしくお願いいたします。