赤ずきん その二
パロディ昔話、第十二弾です。
赤ずきんセカンドシーズン。
……前話の後書きに『優しい世界にするから』とキッパリ言ったばかりなのに…‥ スマンありゃウソだった
でも まあその流れだと大して面白くなかったから良しとするって事でさ…… こらえてくれ
オオカミ「!?」
とは言え流石に物理的に酷い目には遭わせません。
物理的には。
それではお楽しみください。
昔々あるところに、赤ずきんという女の子がいました。
赤ずきんはいつも赤いずきんを被っていたので、そう呼ばれていたのでした。
赤ずきんは森に住むおばあさんにお見舞いするために、小道を一人歩いていました。
そこに樹の上からオオカミが現れました。
「やぁ、赤いずきんのお嬢ちゃ……ん……?」
オオカミは目を見はりました。
半袖のブラウスから伸びる古樹の幹の様な腕!
形ある物全てを塵芥に変えんとする掌!
柔らかさなど甘えと言わんばかりの鋼の胸筋!
卵が立つどころかそのまま圧し潰せそうな腹筋!
ニンニクを究極まで育てたらこうなりそうな大腿筋!
その全てが「破壊する事」に特化した肉体でした。
オオカミは樹の上からずきんだけを見ていたので、迂闊にもその肉体が放つオーラに気が付かなかったのです。
「な、何だ、お、お前は……!」
「私は赤ずきん。武の極みに至ろうとする者」
「武の、極み……?」
オオカミは身震いしました。
野生動物の悲しさ。優れた嗅覚がずきんから漂う鉄の匂いに気付いてしまったのです。
「怯えたか。このずきんに吸わせるは強者との戦いの証のみ。疾く去れ」
「は、はぎゃあああぁぁぁ!」
恥も外聞もありません。
オオカミは森の奥へと脱兎の如く走り去りました。
「師匠」
「赤ずきんかい。よく来たね」
「本日は修行の成果を見せに参りました」
「ほう」
おばあさんはベッドから降りました。
その身体には高齢とは思えない、はちきれんばかりのエネルギーがみなぎっていました。
「我が渾身の一撃をお見舞いしてくれよう!」
「受けよう! 我が孫にして最高の弟子赤ずきんよ!」
森に轟音が響き渡りました。
動物達は「またか」という顔をして、使い古した耳栓を耳に詰めました。
その頃オオカミは。
「街じゃギャングに勝てないから、森で弱い動物達を脅かして頭張ろうと思ってたのに! あんな化け物のいる森だなんて知ってたら引っ越して来なかった! 早く、早く逃げないと!」
オオカミは大急ぎで荷物をまとめて街へ帰り、真面目に働くようになりました。
この三ヶ月後、その働きぶりに好意をを抱いたメスのオオカミとの甘い恋物語が始まるのですが、それはまた別のお話……。
読了ありがとうございます。
……元は白いずきんだったそうですよ(震え声)。
この後、街のギャングに美しいメスオオカミは目をつけられてしまいました!
彼女をギャングのアジトから救い出し、逃げ回るオオカミ!
しかしギャング達に追い詰められたその時です!
壁をぶち抜いて黒い影が現れました!
「師匠。このような雑魚、相手にしても強くなれるとは思えないのですが」
「赤ずきんや。お前は武の極みに至った後を考えておらん。刃を研ぐは切るため。何を切るかを見極めよ」
「浅薄でございました」
オオカミは腰を抜かしかけました。
「あ、あんた、そ、そのずきんは……!」
「む。森で会ったオオカミか。……ほう。あの時より戦う男の顔になったな。その娘のおかげであろう」
「えっ、や、まぁ、その……」
「強くあれ。守られるだけの男になるな」
「は、はい!」
こうして街からマフィアは消え、平和が訪れました……。
オオカミは街の長となり、彼女と子ども、そして街の動物達を末永く守り抜いたとの事です。
めでたしめでたし。
そんなサブストーリーを脳内補完すれば、オオカミもハッピーエンドだよ! 良かったね!
それではまた次回、白雪姫セカンドシーズンでお会いしましょう。