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眠り姫 その一

日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第百十九弾です。

今回は『眠り姫』で書かせていただきました。

一人呼ばれなかった魔女のせいで大騒ぎになる話。

そこを少しいじってみました。


どうぞお楽しみください。

 昔々ある国に、お姫様が生まれました。

 王様は喜んで、お祝いのパーティーを開く事にしました。

 そして国を支える十三人の魔女達に招待状を出して、お姫様に魔法の祝福をお願いする事にしました。

 しかし困った事に、お城には特別なお客様用に用意した金の食器が、十二セットしかありませんでした。

 そこで王様は十二人だけ招待する事にしたのですが……。


「何を考えているんですか貴方は!」

「え、いや、でも食器は十二しかないし……」


 お姫様を産んだばかりのお妃様の剣幕に、王様はたじたじになりました。


「食器なんて何とでもできます! でも国のハレの日に呼ばれなかったという事実は、プライドをひどく傷付けるんですよ!」

「あ、あぁ、うん、そうだな……」

「これまで国のために使ってくれた魔法が、この子に怒りを持って向けられる事を考えなかったんですか!?」

「あ、その、す、すまん! 器が違う事で、対等である十三人の輪に亀裂が入ってはいかないと、それしか考えていなくて……!」

「……それにはこうしましょう」


 お妃様は、王様に作戦を話しました。


「なっ……! それでうまく行くのか……?」

「えぇ、きっと」


 そうして招待状が十三人の魔女に配られました。

 その中で一番怒りっぽい魔女のところに招待状が届いたところ、


「何て失礼なの!? 名前を間違えるなんて!」


 魔女は怒ってそう叫びました。

 招待状の宛名が、ちょっと違っていたのです。


「文句言ってやらないと!」


 魔女は招待状を掴んで、お城まで飛んできました。

 それを王様はドキドキしながら迎えます。


「お、おぉ、魔女様。招待状は届きましたか?」

「その招待状に文句があるから来たのよ! 人の名前を間違えるなんて、失礼にも程があるでしょ!?」


 魔女が突き出した招待状を見て、王様はさも今間違いに気付いたかのように、慌てた様子で謝りました。


「も、申し訳ありません! これは大変失礼を……! 娘が生まれた嬉しさに浮かれていたのでしょう……! 本当に申し訳ありません!」

「全くよ! ……まぁ嬉しくて浮かれていたと言うのはわからなくもないけど……」

「このお詫びに、パーティーの際には特別な席と食器をご用意させていただきますので、どうか娘に祝福を贈ってください……!」


 平謝りの上に特別扱いという事で、魔女は機嫌を直しました。


「ま、そういう事なら出席してあげなくもないわ。次からは気をつける事ね」

「ありがとうございます!」


 こうしてお妃様の作戦通り、一人だけ食器が違ってもおかしくない状況を作ったのでした。

 そしてその魔女はお祝いのパーティーで、


「……あら、この子妙な運命を背負ってるわね。百十五年後に理想の王子様と出会う……? それなら時空をちょっといじって……」


 と言うと、魔法をかけました。


「あ、あの、魔女様、どんな魔法を……?」


 王様の言葉に、魔女はにっこり微笑みました。


「十五年魔力を貯めて、この子が立派なレディになったら、お城ごと百年後に飛ぶようにしたわ」

「えっ」

「これでこの子は理想の王子様と結婚できて幸せになるわ。悪くないでしょ?」

「あっはい」


 こうしてお姫様は十五年後、お城ごと未来に旅立ち、運命の王子様と出会って幸せになりましたとさ。

 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


王子様だけを過去に飛ばすのとどっちがいいかなと思ったのですが、原作準拠にしてみました。

糸車「命拾いしたぜ……」


次回はキリ番なので、またタイトルを隠して書きたいと思います。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お妃さまの機転が素晴らしいです! 王様が少し頼りないですが、お妃さまがしっかりしているので安心ですね。 魔女さんも、子供が産まれて喜んで浮かれていたらそういうミスもあるかも、と許してく…
[良い点] 13人の魔女で1人だけ食器が違う状況を魔女の機嫌を損ねる事無く乗り切った国王も見事ですが、この後に起こり得るトラブルを些細な兆候から的確に読み取った御妃様も立派ですね。 これだけ優秀な国王…
[一言] これなら、魔女も悪役にならない!
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