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白雪姫 その四

日を跨いでしまいましたが日曜の元気なご挨拶。

パロディ昔話第百十八弾です。

今回は『白雪姫』で書かせていただきました。


どうぞお楽しみください。

 昔々あるところに、白雪姫というとてもきれいなお姫様がいました。

 白雪姫は王様とお妃様の優しさに包まれて、幸せに暮らしていました。

 しかしある時、お母さんであるお妃様が病気で亡くなってしまいました。

 お父さんである王様は新しいお妃様を迎える事になりました。

 ですがその新しいお妃様は魔女だったのです。

 お妃様となった魔女は、毎日のように魔法の鏡に尋ねます。


「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだぁれ?」


 そこで鏡はこう答えました。


『美しさの基準は人それぞれですからねぇ。この世で一番というのは決められませんよ』

「えっ!? ど、どういう事よ!?」

『この国では身体が細い方が美しいと言われます』

「そ、そうよね……」

『しかし身体が大きいほど美しく見られる国もあります。そうなると「この世で一番」というのはどういった基準で決めるべきものでしょうかね』

「う……。じゃ、じゃあこの国で一番美しいのはだぁれ!?」


 しかしその問いにも鏡は溜息混じりで答えます。


『その場合、調査方法はどうしますか?』

「へっ!?」

『対象は男女? それとも男性のみ? 対象の年齢はいくつからいくつまで? 回答方法は自由記述? 選択方式? 選択方式なら候補の選定の仕方は?』

「え、えっと……。て、適当にやりなさいよ!」

『そう仰いますけどね。それによって結果は全然変わっちゃうんですよ』

「そ、そうなの?」

『たとえば対象。男性のみに限定すると、若い女性に票が集まる傾向にあります。しかし女性を対象に加えると、年齢を重ねた美しい女性にも票が集まります』

「な、何故?」

『男性は美しい女性と聞かれた場合、恋人的な意味合いで考えます。そうすると本能的に、子どもが産める若さが評価基準に入るんです』

「男の人っていつもそう!」

『ですが女性の場合、自分の理想を投影する場合が多く、歳を重ねても美しい、という点が評価されるのでしょう』

「成程……」


 鏡の言葉に、お妃様は頷きました。


『年齢もそうです。基本的に同世代を選ぶ傾向がありますので、年齢層を広く取ればその分票はばらけますね』

「確かにそうね……。あと自由記述と選択方式っていうのは?」

『投票する人に好きに書いてもらうか、ある程度候補を決めてその中で選んでもらう方式です』

「それだとどう違うの?」

『自由記述だと、もう何でもありになります。自分の奥さんが一番美しいと思えば、それを書くでしょう。そうなれば非常に低い票で争う事になります』

「選択方式だと?」

『決められた中で選びますから、票は集中します。しかし今度は候補の選び方が鍵になります。変な話、お妃様とおばあさん二人でやれば、お妃様の圧勝になります』

「確かにそうね……。じゃあどうしたら……」


 頭を抱えるお妃様に、鏡は優しく言葉をかけます。


『ですが王様があなたをお妃にと選んだのです。その事実だけでお妃様の魅力は十分に証明されていると思いますよ』

「……そうかしら……」

『えぇ。ですから不安に思わず、心より王様に愛を向けてください』

「そうね! そうするわ!」


 うきうきした様子で、部屋を出るお妃様。

 その足音が聞こえなくなったのを確認して、鏡は大きく息を吐きました。


(上手くいって良かったぁ〜! これで正直に『白雪姫です』なんて言ったら大騒ぎだろうからなぁ……。お妃様にはこのまま王様と仲良くしていってほしい……)


 こうして白雪姫はお妃様に何もされる事なく、幸せに暮らしましたとさ。

 めでたしめでたし。

読了ありがとうございます。


統計学は難しいからね。仕方ないね。


次回は『眠り姫』で書かせていただこうと思います。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 鏡さん、グッジョブ! 難しいことを言って煙に巻きつつ、最後はお妃さまの心に刺さることを言って危機を無事に回避しましたね。 不特定多数から美しいと言われるよりも、愛する人から美しいって言って…
[良い点] 鏡の模範解答が功を奏して、後の騒動の切っ掛けを潰す事が出来ましたね。 自分が世界一の美女ではないと怒った王妃が鏡を破壊するバージョンもありましたので、鏡は結果的に自分の命も救った事になりそ…
[一言] うーん… ある意味、白雪姫は災難を逃れた代わりに、「彼氏」をゲットできなかったことになるのでは?
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