ピノキオ その二
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百十五弾です。
前回に引き続き、今回も『ピノキオ』で書かせていただきました。
一から身体を作れるならと、美少女化させてみました。
果たしてその結末は……?
どうぞお楽しみください。
昔々、ある町に、ゼペットというおもちゃ職人のおじいさんがいました。
ゼペットさんはある日、知り合いから不思議なものがあると呼び出されました。
それは喋る丸太だというのです。
「おいおい、いくら何でも丸太が喋るわけが……」
『丸太が喋っちゃ悪いか! このトンチキじじい!』
「こりゃ驚いた……!」
その不思議な丸太を、ゼペットさんは家に持ち帰りました。
その間も丸太は色々な悪態をつきます。
ゼペットさんはその口の悪さにうんざりしました。
しかし意思のある丸太を割ったり燃やしたりしてしまうのも気が引けました。
「そうだ。丸太が悪口を言うと思うから嫌になるのかもしれない。可愛い子どもの姿にすれば、気にならなくなるだろう」
ゼペットさんは丸太を人間の子どもの姿に彫る事にしました。
その事を丸太に話すと、丸太はこう答えました。
『おいじじい! 人間の形にするなら美少女にしろよ!』
「え? 何でじゃ? お前さんの口調的に男の子の方が似合うと思うんだが……」
『はっ! 世の中美少女に甘いんだよ! ちょろい連中をからかったり貢がせたりしてやるのさ!』
「まぁお前さんが望むならそれでもいいが……」
ゼペットさんは首を捻りながらも、丹精込めて丸太から人形を彫りました。
こうして丸太は、青い目に金色の髪を持ち、可愛らしいドレスに身を包んだ美少女の姿になりました。
「よーし! この姿ならちやほやされるぜ! 待ってろよ村の馬鹿ども!」
「あまり無茶をするなよピノキオ」
「けっ! 骨の髄まで搾り取ってやるぜ!」
ピノキオと名付けられた金髪美少女は、そう言って飛び出して行きました。
「おぉ! 金髪美少女!」
「黙れキモオタが! 話しかけたいなら金を持ってきな!」
「何だその腰の入っていない罵倒は! 本物の罵倒というものを叩き込んでやる! 俺の呼び方は今からブタ野郎だ!」
「ちくしょう訓練されたキモオタだ!」
「ふっ、君との出会いは運命だね」
「へぇ、その運命にお前いくら出せるんだ?」
「ふふっ、この神々に封印された右目の力を使って、君に永遠の幸せを約束しよう」
「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!」
「きゃあ! 可愛い女の子! 私の家でお茶しない?」
「女なら服とかアクセサリーとか持ってるだろう! 一番高いやつをくれよ!」
「いいわよ。私のものはぜーんぶあなたと共有するから……。服もアクセも下着さえも、ふふふ……」
「変態だー!」
「何て素敵なスタイルだ!」
「はっ! 身体見たきゃ全財産をよこしな!」
「その球体関節を外しても動くのか試させてくれるのなら、全財産でも惜しくない!」
「サイコさん! サイコさん気味だなこの人!」
「金髪だ!! 金髪だろう!? なあ 金髪だろうおまえ」
「見りゃわかるだろ! 触りたきゃ金を」
「ブロンドの髪をモフモフしたいお! モフモフ! モフモフ! 髪髪モフモフ! カリカリモフモフ……、きゅんきゅんきゅい!!」
「逃げるんだよォー! どけーッ ヤジ馬どもーッ!!」
ピノキオは命からがらゼペットさんの家へと帰りました。
「おや、どうしたピノキオ」
「お願いします! この姿を普通の人間の男の子にしてください! いい子になりますから! お願いします!」
「えぇ? 美少女はちやほやされていいんじゃなかったのかい?」
「もう美少女はこりごりだー!」
こうしてピノキオは心を入れ替え、いい子になりました。
その改心ぶりを認められて、女神様に人間にしてもらえましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
美少女に厳しい世界。
隣の芝生は青いものですね。
次回は『たつのこたろう』で書こうと思います。
よろしくお願いいたします。