桃太郎 その五
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百三話です。
今回は『桃太郎』で書かせていただきました。
お供で遊んでみました。
どうぞお楽しみください。
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日おじいさんはいつものように山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯していると、上流から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。
「おぉ、これはなんと大きな桃じゃ。じいさまと一緒に食べるべ」
おばあさんは桃を家に持って帰りました。
「ばあさま、今帰ったぞ」
「おぉ、じいさま。川で大きな桃を拾ったんじゃ。二人で食べるべ」
「それはえぇ。早速切ってみるべ」
おじいさんが桃を切ると、中から元気な赤ちゃんが出てきました。
おじいさんとおばあさんは驚きましたが、赤ん坊に『桃太郎』と名付けて大事に育てる事にしました。
桃太郎はすくすくと大きくなりました。
ある日の事。
桃太郎は近くの村々が、鬼ヶ島から来た鬼に襲われ、宝を奪われたという話を聞きました。
村の人達はいつこの村が襲われるかと怯えておりました。
そこで桃太郎が立ち上がります。
「おじいさん、おばあさん、私は鬼退治に行ってきます」
おじいさんとおばあさんは桃太郎の身を案じましたが、その意志の固さに快く送り出す事にしました。
おじいさんは立派な着物と刀を、おばあさんはきび団子を桃太郎に持たせました。
「行ってきます!」
桃太郎は鬼ヶ島に向かって旅を始めました。
すると道端に寝そべる犬がいました。
「人の子よ。どこに行く」
「鬼ヶ島に鬼退治に行きます」
すると犬は真っ白な毛並みをぶるんと振ると、起き上がります。
その身体は大きく、桃太郎の他に三人くらい乗せても軽々と走れそうでした。
「我も鬼の所業は目に余ると思っておった。この大口真神、お主に力を貸そうぞ」
「あの、じゃあ、これどうぞ」
「きび団子か。……うむ、悪くない」
こうして犬が仲間になりました。
次に道端で座禅を組む猿に出会いました。
「む? 大口真神ではないか。人の子とどこに行くのじゃ」
「こやつが鬼ヶ島に鬼退治に行くと言うのでな。日本武尊との約定もある故、助太刀をしようと思うてな」
「そうか。ならば我も手を貸そう。我が名は神猿。鬼を滅し平和を取り戻そうではないか」
「じゃあ、えっと、これどうぞ」
「ほう、きび団子か。我はこれに目がなくての」
こうして猿も仲間になりました。
また少し行くと雉が空から降り立ちました。
「おや、大口真神に神猿ではないか。人の子と連れ立ってどこに行く」
「おお、白雉。鬼ヶ島に鬼退治じゃ」
「どうじゃ、瑞鳥のお主も一緒に行かぬか」
「ふむ、面白そうじゃ」
雉は白い翼をばさりと広げました。
「よろしく頼むぞ」
「あ、じゃあ、これどうぞ」
「きび団子か。これだけでもついて行く価値はあるの」
こうして雉も仲間になりました。
桃太郎達は鬼ヶ島へと渡ります。
「白雉さん、ありがとうございます。あっという間に着いてしまいました」
「何の何の。大した事ではない」
その目の前には鬼の城の門がそびえ立っていました。
「さてではこの扉を開けねばの」
「それは我に任せよ」
犬の言葉に猿が身軽に壁を登ると、門の閂を外しました。
「あ! 何をしている貴様……、あ?」
「な、何だこの神々しさは……!」
「どれ、少し数を減らしておくかの」
少しして扉が開きました。
桃太郎達は鬼の城の中へと進みます。
「あの、神猿さん、この倒れてる鬼達は……?」
「軽く撫でてやったらこの様じゃ。鬼も昔に比べて随分ひ弱になったものじゃ」
すると奥から鬼がわらわらと出てきました。
「ここは我が出ようかの。耳を塞いでおれ」
そう言った前に出た犬が、島中に響くような咆哮を放ちます。
「な、何だこの声は……!」
「魂まで、持って、行かれそうだ……!」
「白い狼……! まさか『おいぬさま』……!?」
「か、勝てるわけが……、がはっ」
鬼の大半が気を失い、残った鬼も戦意を失いました。
「さて、大将はどこにおる?」
「……ここに」
犬の声に応えるように、鬼の大将が顔を出しました。
「うむ。では聞こう。人の世に仇なすのを止めるか、我らと戦うか、どちらを望む?」
「……貴方様方と争うなど滅相もございません。今までに奪った物をお返しし、今後は人間の村に手出しはいたしません……」
「うむ。それで良いかの人の子よ」
「あ、はい」
こうして桃太郎は鬼から宝物を取り戻し、村に戻って幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
神話級の大物を集めてみました。
これには鬼も青い顔で苦笑い。
次回は『雪女』で書きたいと思います。
よろしくお願いいたします。