桃太郎 その一
以前『お鍋のさがしもの』の後書きで書いたインチキ昔話に興味を持って頂けたので、文字にしてみました。
真面目に読もうと思ってはいけない(戒め)。
最初の話は桃太郎。どうか寛大な心でお読みください。
昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、上流から大きな大きな桃とスイカとメロンとイチゴとグレープフルーツがどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
おばあさんは根性で、大きな桃とスイカとメロンとイチゴとグレープフルーツを持って帰りました。
おじいさんが帰って来たところで、フルーツパーティーを始めようとしたところ、果物の中から元気な男の子が次々と生まれました。
おじいさんとおばあさんは、生まれた順に、
桃太郎
スイカ二郎
メロン三郎
イチゴ四郎
グレープフルーツ五郎
と名付けました。
五人はすくすくと育っていきました。
ある時、近くの村が、悪い鬼に荒らされ、宝物を奪われたという話を聞きました。
五人は鬼の住むという鬼ヶ島に、鬼退治に向かう事を決めました。
おじいさんとおばあさんは、五人の決意を聞き、立派な服と、見事な刀と、きび団子を用意してあげました。
通常の五倍の支出に、おじいさんは複雑な顔をしました。
通常の五倍の手間に、おばあさんは隣近所にきび団子作りを手伝ってもらいました。
五人は意気揚々と旅立ちました。
鬼ヶ島に向かっていると、犬がいました。
犬は言いました。
「桃太郎さん、スイカ二郎さん、メロン三郎さん、イチゴ四郎さん、グレープフルーツ五郎さん、お腰につけたきび団子、一つ私にくださいな」
通常の五倍のセリフに、犬は息が切れました。
桃太郎、スイカ二郎、メロン三郎、イチゴ四郎、グレープフルーツ五郎は言いました。
「あげましょう」
「あげましょう」
「これから鬼の征伐に」
「ついてくるなら」
「あげましょう」
犬は言いました。
「行きましょう。行きましょう。お供になってどこまでも、家来になって行きましょう」
犬が仲間になりました。
さらに鬼ヶ島に向かっていると、サルがいました。
サルは言いました。
「桃太郎さん、スイカ二郎さん、メロン三郎さん、イチゴ四郎さん、グレープフルーツ五郎さん、お腰につけたきび団子、一つ私にくださいな」
通常の五倍のセリフに、猿は息が切れました。
桃太郎、スイカ二郎、メロン三郎、イチゴ四郎、グレープフルーツ五郎は言いました。
「あげましょう」
「あげましょう」
「これから鬼の征伐に」
「ついてくるなら」
「あげましょう」
サルは言いました。
「行きましょう。行きましょう。お供になってどこまでも、家来になって行きましょう」
サルが仲間になりました。
さらに 鬼ヶ島に向かっていると、キジがいました。
キジは言いました。
「桃太郎さん、スイカ二郎さん、メロン三郎さん、イチゴ四郎さん、グレープフルーツ五郎さん、お腰につけたきび団子、一つ私にくださいな」
通常の五倍のセリフに、キジは息が切れました。
桃太郎、スイカ二郎、メロン三郎、イチゴ四郎、グレープフルーツ五郎は言いました。
「あげましょう」
「あげましょう」
「これから鬼の征伐に」
「ついてくるなら」
「あげましょう」
キジは言いました。
「行きましょう。行きましょう。お供になってどこまでも、家来になって行きましょう」
キジが仲間になりました。
一行は船に乗って鬼ヶ島に到着しました。
「やい鬼達! 奪った宝物を返せ!」
「何だお前達は!」
「生産量日本一は山梨! 桃太郎!」
「生産量日本一は熊本! スイカ二郎!」
「生産量日本一は茨城! メロン三郎!」
「生産量日本一は栃木! イチゴ四郎!」
「生産量日本一は静岡! グレープフルーツ五郎!」
「栃木のイチゴ以外は意外! 桃は岡山だと思っていたのに!」
鬼は丁寧にメモを取りました。
「だが宝は返さんぞ!」
「ならば勝負だ! 行くぞ!」
「おう!」
「任せろ!」
「覚悟しろ!」
「やっちゃおうね!」
鬼達との戦いが始まりました。
しかし通常の五倍の戦力です。
鬼に敵うはずがありませんでした。
「お許しください! 宝は返します!」
「よし!これにこりたらもう悪いことはするなよ!」
「はい!」
「もしやったら頭をスイカ割りにするからね!」
「ひぃ!」
「メロンみたいな傷を顔につけちゃうぞ!」
「ふぐぅ……!」
「お尻をイチゴと同じ色になるまで叩くからね!」
「へあ!?」
「大丈夫。悪いことしなければ僕らもいじめたりしないよ」
「ほっ……」
五人とお供の三匹は村に帰り、取られた宝物をみんなに返しました。
その後五人とお供の三匹は世界の平和を守るために、力を合わせて悪と戦うのでした。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
えぇ、はい。こんな感じです、はい。
子ども達は寿限無みたいに五人の名前を連呼するところがお気に入りでした。
毎回適当に話していたので「バナナ四郎は!?」と問い詰められる事もしばしば……。その記憶力、連絡帳を持って帰るお約束に少し分けてくれないかなぁ……。
それにしても初めての二次創作投稿! ガイドラインで大丈夫とは書いてありましたが、初めてつけたチェックだけに怖い……。
何かおかしな点がありましたら、運営様の雷が落ちる前にお知らせくださいましたら幸いです。
……世の中のギリギリネタをやる芸人さんは、この恐怖と戦っているんだろうなぁ……。