はたらかない転生
みなさま初めまして。
ほぼ思いつきです。
「おや、ようやく気が付きましたか」
「ここは……」
ラッシュアワーの駅で、誰かの体に触れたと思ったら。
プラットフォームの端へ転がり出てしまい、そのまま落ちた。
次の瞬間、タイフォンが響いて……
白い服を着た人の脇で、わたしは寝かされているようだった。
見下ろしている人が告げる。
「ここはまあ、あなたの知識から言えば、黄泉の国、といったところでしょうか」
「死んだ、ということですか」
「そうです」
よみがえる、いろいろな思い。明日の仕事。家族。夕飯。はらへった。
「で、ですね。あなたは我々が意図しないタイミングで死んだ」
「そもそもあなた方とは何ですか」
理解できない話をし出した。
「あなたの知識から言うならば、神、あるいは天使といったところですね」
「天使……」
「話を続けます。あなたには再生していただきます。まだこんなところで死んではいけない」
「再生?」
まだ話についていけない。
「再生。ふたたびいきる。あなたの『時間』がまだあるので、新しく生きていただきます」
「えぇ……もういいです」
人生に疲れた。そんな感想しか出てこない人生に何の意味が。
「異論は許しません。ただし、あなたの死に不審な点があるので、再生にあたりプレゼントを1つ差し上げます。よかったですね」
「プレゼント」
何かいいことがある、ということかな。
最近「なろう」小説を読みすぎてる。転生したらスライムだったり俺Tueeeだったりするといいな。
「そう。働かなくてすみます」
「なんですと」
そんなことを断言できるプレゼント。
「ということで、あなたには早速再生していただきます。異論は許しません。3. 2. 1.」
「ちょ」
「転落する1秒前に再生」
「うわあああ」
わたしはプラットフォームから落ちて、目前にタイフォンの叫びをあげる車両を見た。
頭が車両に当たる。車輪が手を、足をちぎる。重い重い鉄の塊が、わたしをちぎる。
痛い。痛い……
「おや、また来ましたね。では再生」
「うそ……」
「のおおおお」
プラットフォームから落ちて、列車が近づいてくる。止められない。全身で車両にぶつかり、衝撃で神経が断裂する。痛い。痛い……
「あれ、また来ましたか。再生」
「いやあああ」
「ぐわあああ」
耳をつんざくタイフォンが聞こえる。体をちぎる音が聞こえる。神経が切れる音が聞こえる。脳みそがちぎれる音が聞こえる……
「おお、また来ましたか」
「ちょっと待ってください、たしか『働かなくていい』というプレゼントがあると」
「ええ、そうですよ。たしかに死ぬまで働かなくて済みます。で、あとあなたの残り時間は……」