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独り言の囁き  作者: うゆ。
3/3

生きろ、なんて無責任じゃないか

 2月4日23時42分。

 すごく悲しいことがあった。

 間違いなく元気は少なからず貰っていたとある人が亡くなっていた。朝SNSのニュース欄で大きくその名前が出ていた。名前の後には数秒頭が空っぽになる言葉が添えられていて。

 一般人である僕が、有名なあの人と関わりはもちろんない。

 亡くなった背景や死因は大方表に出てきた。しかし誹謗中傷は大きくは出なかった。多くの人が前を向くことを選んだ。

 僕は関りがなく、ただの一第三者でしかない。それでも悲しかった。けれど、関係のあった方々(友人やご家族)の言葉をツイッターやYouTubeで見たり聞いたりすると悲しさがさらにこみ上げてくる。落ち着いたと思って心の中を言葉にまとめようとするけれど、結局何も言えない。大事な時に言葉が出てこない自分に情けない。そんな様子だった。

 誰も悪くはなかった。だからこそ、やるせないし悲しいんだ。生きていてほしかった。なんだっていい。

 生きてさえくれていれば。無責任にそう思う。何かしてあげられるわけでもないくせに自分の欲をまた押し付けてしまっている。でも本当に、この思いに偽りはない。生きてほしかった。死にたくなることはあるけど、生きたいと思えることがこの先あるかもしれないじゃないか。

 だけどそんな後先分からないことを考えている余裕なんてないんだ。今だ、過去だ。必要なのはいつだって未来じゃない。

 亡くなっていた。過去に結果は出ていた。僕が普通に生活している中でもうあの人はこの世にはいなかった、いなくなってしまった。

 関係のあった方々も僕と同じように亡くなったことを知ったのは数日後だったそうだ。

 自分の知らないところで自分の好きだった人が亡くなっていた。事実だけど現実味は少しも感じない。けどその事実の文章や、顔を見ない日数が増えていくにつれ僕らの息を止めてくる。

 関係のあった方々はもう前を向いている。凄いなと思う。悲しんでいられない、と。亡くなったあの人はそんなことは望んでいない、と。

 僕なら耐えられないと思う。数日の間、関係のあった方々も互いに協力して、後を追う人を出さないようにこらえたと言う。僕なら、と考える。

 僕なら僕なら僕なら。

 好きな人が。愛した人が。仲のいい人が。亡くなっていたと聞かされた僕は前を向いて立ち直れるだろうか。

 

 自殺はいけない、と言う。公の場で、教科書の中でも正しいことと神妙な顔をして。

 それを見るたびに僕は思う。

 簡単に言ってくれるな。みんな死にたくてもそれでもなんとか必死に生きている。死にたくなる時もあるさ。

 死にたくなるなんて異常だ。普通じゃない。だからそうなるまでの過程を知らないのに生きろと言う彼らは酷いことを言う。知っているならなおさらだ。

 残された者の事なんて考えなくてもいい。自分が救われることだけを考えるべきだ。その手段が最後の最後で自殺ならどうしようもない。誰かが全て救ってくれるわけじゃあないんだ。

 でも生きているだけで、誰かに生きるための理由を少しでも作れるのなら、自分が生きる理由にはなると思う。

 自殺がいけない。生きろ。なんて無責任だ。そんなに誰も誰かのために何かはやっていない、救っていない。なのにただ一言そうやって死が悪だというのは僕は嫌い。

 生きてほしいと願うしかない。全力で誰かのために泣いたり笑ったりしてあげられるのならきっと僕の周りは生きていてくれると思う。

 死って本当に怖い。何もかもを奪っていく。生きているモノを狂わせることもある。

 僕は僕が死んだときに誰かに悲しんでもらいたいと思う。悲しみを感じる人には申し訳ないけど、その悲しみの数が僕がこの世に居たという存在意義だと思うから。

 やっぱり自殺は良くないかも。否定や無責任に止めることはできないけど、もしも僕の周りに自殺を考えている人がいれば、僕は拒まれようが止める。無責任でも何でも。

 君のいない世界なんて完璧じゃないから。楽しくないから。

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