クワバラクワバラ
図書館に隣接する公園で缶コーヒーを飲んでいる。
晴れ渡って太陽の日射しが暖かいとはいえ、空風が吹いている平日の公園に人の姿は少ない。
図書館の出入り口に通じる階段に座り缶のドリンクを飲みながら駄弁っているカップルと、
図書館の駐輪場に自転車を置き図書館の出入り口に向けて歩む兄ちゃんくらい。
兄ちゃんが階段に座っているカップルに何か言い、言い争いになった。
多分だが。
「邪魔だ、退け!」
「何だと?」
って感じかね。
あ! 激昂したカップルの片割れが立ち上がり立ち上がった勢いで兄ちゃんの襟元を掴み顔面に頭突きした。
頭突きのあと腹パン1発。
兄ちゃんは一瞬意識を飛ばしたようで背中から数段、階段から転がり落ちる。
地面に両膝をつき顔と腹を押さえる兄ちゃんに追い打ちの蹴りが。
膝まづきダンゴムシのように 丸まった兄ちゃんの横腹に蹴りが次々と打ち込まれる。
ドカ! ドカ! と此処まで蹴りの音が聞こえるような強力な蹴りが10数発見舞われていた。
カップルの連れが止めようと腕を掴むが振り払われ、また兄ちゃんの横腹にドカ! と蹴りが打ち込まれる。
連れに羽交い締めにされようやく落ち着いたようだ。
羽交い締めした連れに何事か喋り羽交い締めが解かれた。
解かれたあと止めの蹴りが兄ちゃんの顔面に見舞われ、ペッと唾が吐き掛けられる。
さすがは、彼岸花のお蝶って二つ名が付けられていて此処等の不良共を束ねている女だけあるわ。
ヤベ、此方に鋭い眼光が向けられた。
缶コーヒーを飲み干しベンチから立ち上がって彼岸花のお蝶にペコペコと頭を下げながら公園を後にする。
公園から出たところで振り向くと彼岸花のお蝶らの後ろ姿が見えた。
地面に横たわる兄ちゃんに目をやり、救急車だけでも呼んでやるかとスマホを取りだし電話を掛ける。
え、何で彼岸花のお蝶って二つ名があるのかって?
聞いた話では言われは2つあるらしい。
綺麗な花、薔薇にはトゲがあるってよく言われるだろ、でもそのトゲは外から見えているんだ。
それに対し彼岸花は綺麗だけど毒がある、でもそれは外から見えないってのが1つ目。
もう1つは、彼岸花ってよく墓場の側で見かけるだろ。
裏の社会ではあの女は今まで何人も殺しているんじゃないかと噂されているんだ。
この街に遊びに来て彼女に声を掛けたチンピラや、深夜まで遊んでいた彼女に説教的な罵声を浴びせた酔っ払いとかが行方不明になっているからな。
それで彼女の側には死体があるって事でつけられたらしい。
お蝶ってのは本名の揚羽からついた名だ。
なんにせよあんな女には近寄らないのが無難だよ。
クワバラクワバラ。