公爵令嬢ランジア、再び
読者様の方からイラストをいただいたので、今日は1話更新します。
スートルから、ドラゴン化したルージュに乗ってロートスに帰る途中
「主君、今回も面倒な事に巻き込まれましたね……」
ローゼがそう言ってこちらを見てきたので
「ローゼ、それを言わないでくれ。それよりも公爵家の依頼までまだ数日の時間があるから、その時にやりたい事があるのだがいいか?」
『ダンナのやりたい事ってなんだ?』
ルージュが竜形態で話してきたので
「あのな、俺の本業を忘れてないか?」
『「本業?」』
いや、何でそこでその返事が返ってくる?
「あのな、俺の本業は雑貨屋を経営している店員なのを、忘れているだろ!」
『確かにそんな設定あったな。俺様は完璧に忘れていたぞ』
「ワタシもルージュと同じく忘れていました」
……。俺は雑貨屋の店員に向いてないのか?
ここ数年なんだかんだ経営してきたけど、今年にこれだけ問題に巻き込まれて休業しているのは、マズイな……。
「では、ワタシとルージュが公爵家の依頼を受けるまで定員をしても大丈夫ですか? それなら主君の趣味に手伝えると思うので」
「それは助かるよ。でも趣味じゃなくて本業だからな、そこを忘れないでくれよ」
『ダンナ、俺様の予想を言ってもいいか?』
ルージュの言い方が真面目な雰囲気になったので
「別にいいけど」
と話すと
『恐らくだけど、ダンナはこれから、さらに面倒な事に巻き込まれると思うぞ』
「ルージュ、それは言わないでくれ。俺もそう思ってしまうから」
もう面倒ごとは沢山だと想いながらロートスに到着するのだった。
ロートスの街の近くに降りて、ルージュが人間形態に戻って街の中に入った後、俺の家兼店に帰る
そして、椅子に座りながら
「やっぱりホコリとか溜まっているな。それに商品もあまり無いからどうしようか?」
今から商業ギルドに行って、カタログを貰って来て発注するのには、時間がかかるから悩むな。
俺はそうやって悩んでいると
「主君は使用人や店員を雇わないのですか?」
とローゼがこちらを見ながらこちらにそう聞いてくる。
「ローゼ、この店は個人経営だから店員はともかく使用人は雇える金が無いぞ。それにルージュ達の食費も考えないといけないから正直大変だからな」
「ダンナ、それなら俺様達がそうやって働けばいいのか?」
ルージュがそう言って俺に抱きついて来る。
「ルージュは、店員というよりも歴戦の傭兵みたいな感じだから、細かい事は合わないと思うぞ」
「そうだな。俺様はチマチマした事は正直キライだな」
ルージュが俺の耳を甘噛みしながらそう答えてくる。
「あの、それなら奴隷を買うのはどうでしょうか? それならそこまで費用はかからないと思いますよ」
ルージュとは逆の椅子に座って俺に抱きついて来るローゼに呆れていると
「奴隷か、それならいいと思うけど色々制約はあったよな」
「ワタシも細かい事は覚えてはいないですが、あったと思いますよ」
「いや、今は辞めておくよ。制約とかがややこしそうだからな」
俺はそう言ってこの話を終わりにする。
それから公爵家の依頼まで、雑貨屋を開けてゆっくりとした時間が流れた。
そして、依頼の日になった。
「なぁ、ローゼ。俺達いつもの装備の姿で大丈夫なのか? 普通は正装で行くものだと思うのだが……」
「大丈夫ですよ。それよりも準備は大丈夫なのですか?」
「それは大丈夫だ。食料とかも買い込んでおいたからな」
「それは良かったぜ。ダンナの作る料理は美味しいから楽しみにしているぞ」
「こっちもルージュの戦闘力に期待してるよ」
俺の左にはルージュ、右にはローゼがいるので少し歩きにくく感じるな。
でも、何回も助けてくれたから、そこまで気にはならなかなったけどな。
そう考えつつ、貴族の館に到着する。
「主君、ルージュ、遂に着きましたよ」
ローゼが先頭に立って門番さんと何か話している。
俺とルージュは少し離れて待っていると、ローゼが手招きして来たのでそちらに向かう。
「主君、ルージュ。入館の許可を取れたので中に入りますよ」
そう言って俺達は貴族の館に入るとそこには
「待っていたぞハルヤ一行。妾は久しぶりに会うのを楽しみにしておったぞ」
とランジア様が台に乗って話しかけて来る。
「あの、何故ランジア様は台に乗っておられるのですか?」
「それは高い所が好きだからだ!」
うん、それなら飛行船の上でも良さそうだな。
そう考えていると
「ランジア様、公爵令嬢としてお客様を相手にするマナーでは無いと思いますが。教育長からあれだけお仕置きされたのにまだ懲りて無いのですか?」
「そ、それはその〜」
専属メイドのアイリスさんの絶対零度の視線を受けたランジア様は
「少しくらいカッコつけてもいいと思うのだけどダメなのか?」
「カッコつけるのはいいですが、時と場合を考えてください。今回は見逃しますが、次はお仕置きと教育長に話を通しますからね」
「は、はい」
うん、完璧に躾られているな。
そう思っていると、アイリスさんがこちらに近づいて来て
「お嬢様が大変失礼しました」
と頭を下げて来たので
「大体予想出来ていたので大丈夫ですよ。それよりも今回の依頼、ロートスのダンジョン二十層の初見ボス討伐で合っていますか?」
「そうです。ですが、ここで話すよりも中で話しましょう」
アイリスさんがそう言って、俺達を会議室に案内して行く。
「あの、妾はどうすればいいんだ?」
「ランジア様はその台を片付けておいてくださいね」
と言って置いて行く。
そして、俺達と台を片付けたランジア様達との話し合いが始まった。
「それでは、これよりロートスのダンジョン二十層の初見ボス討伐戦の話し合いを始めます。進行役はアイリスがやります。皆さまよろしくお願いします」
そう言って一礼した後、ボードに今回の事を書き始めた。
「今回の攻略参加者はランジア様、グローリー様、アネモネ様、ハルヤ様、ローゼリア様、ルージュ様、そして私ことアイリスの七人です」
そう言って一礼する。
「アイリス、挨拶はいいから今回の依頼の細かい事をハルヤ達に教えなくてもいいの?」
「そうですね。ランジア様にしてはまともな事を言いましたね」
「アイリスの毒舌が妾の心に刺さる……」
そう言って沈んでいるが、それはさておき
「まずは、ハルヤ様とルージュ様は確か十層まで攻略されていたのですよね」
「そうですね。自分はただの付き添いですが二十層まで行きました」
「それなら、そこまでの道のりで何か変わった事はありましたか?」
「いえ、ルージュ達があっさり魔物を倒していたので特に何も感じなかったですよ」
俺はアイリスさんを見ながらそう答える。
「そうですか。ハルヤ様達は少人数でも攻略出来るのですね」
「あの、自分はただの商人で雑貨屋を経営している店員ですよ」
俺はそう話すと
「主君、高度な回復魔法を使える、ただの雑貨屋店員はいないと思いますよ」
「ハルヤは雑貨屋の店員だったのか、てっきり妾は超腕利きの回復魔法使いと思っていたぞ」
「すみませんが、私もランジア様と同じ事を考えていました」
俺の商人としての腕は無いのかな……。
そう考えて、亡くなった爺さんにそう伝えたくなった。
そうやって凹んでいると
「ハルヤ様には申し訳ない事をしましたね」
「いえ、大丈夫ですよ。最近問題ごとに巻き込まれる事が多々あったので、雑貨屋を開けている事が少なかったのもありますから」
なんか話がずれて来たので
「すみませんが、自分の事よりも今回の依頼の細かい件の説明お願いします」
「わかりました。それでは」
アイリスさんがなんとか立て直して、メインの話し合いが始まる。




