アルスト商会と会議
俺達はあの後、会議室に案内されてお偉いさんが来るまで待っている状況になった。
荷台に乗っていたミスリルは先にアルスト商会の鑑定士に調べて貰って、本物と証明されたのでそこはよかった。
「主君、これからが勝負になりますね」
「そうだな。でもこちらの情報はあんまり出さない方がいいと思うが、向こうが権力を使ってきたらこちらはどうする?」
「それはワタシが出ます。それまでは主君が話されて大丈夫です」
「まぁ、ローゼが出たら大丈夫だと思うけど、みんな戦闘準備だけはしておいた方がいいよね」
エルがそう言った後、入り口のドアが開いた。
そして、偉そうな男女達が中に入ってきた。
「ほう。此奴らがワシらにミスリルを献上してきた下民か」
一番最初に入ってきた太ったオッサンがそう言って
「いいわね。まさかこんなイケメンと美女が揃っているとは思いもよらなかったですわ」
なんか、化粧の濃い女もこちらを見て来たので俺は身震いしてしまう。
なので、この場から離れたくなったが、交渉があるのでグッと我慢した。
少しして、アルスト商会のお偉いさん方も席に座って飲み物が置かれたので話し合いが始まった。
「お前らが、我がアルスト商会にミスリルを献上しにきた者で間違いないか?」
いきなりその話し方で来るのは自分達が上だと思っているからか? それとも何かその自信の裏付けがあるのか?
まぁ、それならこちらは下から出るか。
「一応献上では無くて交渉の材料として持ってきたものです」
さて、この話を聞いてどう出る。
「交渉? ワシらがお前らに交渉する事はない!」
やはりそうきたか、でも、ここまでは大体予想通りなので、ここからどうやって餌に食いつかせるかだな。
俺はリーダーぽいオッサンの方を真剣に見ながら
「本当に話を聞かなくてもいいのですか? これから貴方達が得する可能性が高い話をしようとしたのに残念ですね」
少しいやらしい言い方をしてそう話すと
「ほう、ワシらが得する話か? 下民、お前達にそんな事はあるはず無いと思うが、万が一の可能性を考えて聞いてやろう」
よし、ヒット。後は釣り上げるだけだ!
「自分は他の街で商人をしている者ですが、ある時に大量にミスリルが手に入ったので売るかどうかで悩んでいたのですが、まえにアルスト商会のある噂を聞いたのです」
「ある噂? それはイースト・デューク公爵領で開かれるアルスト商会の会長選挙の事か? それともワシらがミスリルを欲しがっている事か?」
「どちらもですね。選挙の方はイースト・デューク公爵領に知り合いがいますし、ミスリルの方はこの街の方々が噂しておりました」
出来る限りわかりやすく説明してみたがどうなる?
「なる程、お前が実際に結構な量のミスリルを用意出来るという事は、かなりの腕利きみたいだな。
だが、献上するだけなら貴重なワシらの時間を使って話し合いの場を作らなくてもいいだろ」
「いえいえ、あのミスリルは交渉材料なのです。
それにもし、あの量のミスリルの十倍の量を用意出来ると言ったらどうされますか?」
「ハッ? お前は何言っているんだ。あの量のミスリルを準備するのはいくらかかると思っているんだ!
それにその十倍、笑わせるな!」
「なら、自分達の今の装備を見てもらってもいいですか?」
俺達は前に作って貰ったミスリル装備をアルスト商会のお偉いさんに見せると、商会のメンバーの一人が
「トーズさん、彼らの金属部分の装備はミスリルで作られていますよ!」
「なんだと! ミスリルの装備は騎士でも隊長格の人達の鎧の貴重な物だぞ! 腕利きとはいえ、装備にまでミスリルを回せる商人や商会なんて聞いた事ないぞ」
「目の前にいますよ、これで証明出来ましたよね。
なる程、やはりミスリル十倍の件の話を聞かなくてもいいのですね」
これで、無理なら他の手を考えないといけないな。
でも、向こうはこちらをガン見しているので、そうなる確率はかなり低そうだな。
大体計画通りである。
「ふむ、話だけ聞いてやろう」
ハァ、やっとここまできたか。
最初と土台に乗せるのはやはり大変だな、
俺は静かにロートスにある自分の店の事をしていたいのだが……。
そう考えつつ、メインの話を始める。
「実は自分はそこそこ上位の貴族様とのつながりがあるのです。それで、今回のアルスト商会の会長選挙に興味を持ったので、自分からある商品を出そうと思っているのです」
「商品だと! それはまさか、さっき言っていた十倍の量のミスリルか!?」
「そのまさかですよ。ただ、今貴方達に渡すと問題になりそうなので先程言った通り、会長選挙に当選した人にそのミスリルを贈呈しようかなと考えているのです」
さぁ、どうする? 断るなら他の方法も考えてあるし、断らないならそのままでいける。
アルスト商会のメンバーの人達はリーダーの人の方を見ながら頷いている。
そして、少ししたあと
「一つ聞く、なんでワシらにそのミスリルを渡さないんだ?」
「逆に聞きます。ここで味気なく渡すよりも、選挙の商品として渡す方が何倍も面白くないですか? なので、貴方達ハルパ派の人達が選挙に勝てばいいのですよ」
「なる程、それならハルパ様にこの事を伝えたら良さそうだな」
「あともう一つ、こちらからの条件を飲んでくれたらあるサービスをしますよ」
「サービスだと!?」
なんか、面白くはなってきたけど長く話すのはしんどいな。
「サービスですよ。今自分が欲しがっているのはこの街の人員と鉱山です。もし、貴方達アルスト商会のメンバーがこの街から撤退するならさっきの倍のミスリルをお渡しします」
「なんだと!?」
アルスト商会のリーダーが机を拳で叩き立ち上がった。
「落ち着いてください。この街ではミスリルを取れるのは分かっていますが、自分が手に入れたミスリルよりも高純度な物はそうそう取れないと思いますよ」
まぁ、俺達が持っているミスリルもこの街の鉱山で採掘? した物なのは秘密だが。
そして、リーダーが一旦座り直したあと、俺は話を続ける。
「なる程、確実に一定の量が手に入ってこの街を出て行く方か、取れるかわからないがこの田舎街に居続けるのかを選択しろという事か」
「そうですね。ちなみに期限は明日の朝、ミスリルを用意するのでそれまでに決めてくださいね。勿論武力で解決に来られた場合はこちらも容赦はしないですよ」
俺はリーダーの方を睨んで立ち上がった。
「さて、会議は終わりですね。明日を楽しみにしてますよ」
俺がそう言った後、レイナ達も立ち上がって会議室から出て、外にある荷台を回収してアルスト商会の支部から離れた。
アルスト商会の支部からスートルの国軍支部向かう途中、食べ放題店に通りかかった。
なので中に入りいつも通りレイナ達が店を潰すレベルで食べた後、俺達は国軍支部に到着してライム達に事の端末を話す。
「あの、ハルヤさん。これで大丈夫なのですか? もし断られたらみんな帰ってこないですよ!」
「そこは他にも方法は考えてあるから大丈夫だ。それにあの表情なら乗ってくる可能性が高いと思ったからそう言っただけだ」
「しかし、主君は面白い事をしてくれましたね。でも、ミスリルをそんなに渡してかなり損をしてないですか?」
「そこは正直痛いけど、これが一番穏便に話が進むと思ったからな。これで、殴り込みとかかけたら面倒になるなら他の方法の方が楽だ」
「ダンナ、俺様はそっちの方が良かったが」
「ルージュ、お前には仕事があるから我慢してくれるか?」
俺はこれからの事をみんなに説明し始めた。




