アルスト商会に向かう
次の日、全員が起きて身支度などを整えた後、国軍支部に歩いて向かう。
「ダンナ、昨日レイナとローゼに何を話していたんだ?」
「それは、今回の作戦の事を説明していた。ルージュ達にも後で言うから気にしないでくれるか?」
「でも、二人のあの表情を見るにそれだけではないよな」
確かにな……。
ルージュの指摘の通り、二人とも頬が赤くて何故かこちらをチラチラ見てくるが、俺には理由がさっぱり分からないので
「あのさ、レイナとローゼ。俺の方をチラチラ見てくるけど何かあったのか?」
「「何でもないぞ(です)」」
うん、何かありそうだけど、どうやって聞こうか?
そうやって考えていると国軍支部に到着したので一旦この話は置いておく事にする。
そして門番の兵士さんと挨拶した後、昨日の部屋に入ってイスに座って少しすると、ライムとポルカさんとリーズが入ってきた。
「皆さんおはようございます。あの昨日、僕とポルカさんとがいない間に何を話していたのですか?」
確かに昨日の話していた説明はいるなと思って俺達は二人に話した。
その後、俺は昨日の夜にレイナとローゼに話していた事を喋る事にする。
「それで、昨日レイナとローゼには話した、ある作戦があるのだけど説明しても大丈夫か?」
その言葉に皆んなが頷いたので作戦の説明を始める。
「まず、情報の方はリーズからある程度聞いてその裏付けをローゼに頼んだから何とかなるからいいとして、何故今回ミスリルがいるかの事を話すな」
「ハルヤ、早めに説明を頼むわ。それに、ハルヤ達は公爵令嬢様の依頼があるからそこまで時間がかけられないわよね」
そうなんだよな。後、一週間ちょっとしか無いから色々厳しいな。
でもまぁ、何とかなるだろと思ったので続きを話す事にする。
「公爵令嬢様の事は一旦置いておいて、ミスリルが必要なのはアルスト商会の奴らを物理的に追い出すためなんだ」
「ダンナ、俺様にはミスリルをアルスト商会が欲しかっているのはわかっているが、それで奴らがこの街から撤退するのか? それにミスリルの騎士像は後十九体分しかないよな」
確かにルージュの疑問はもっともだろうな。でもその答えが返ってくるのは予想通りだ。
「もちろん撤退する所か、普通はさらにミスリルを欲しがるよな。だが、ここである行動をとるんだ」
「ある事、それは何よ?」
「最初に前に鉱山で取れたミスリルの騎士像の一体分を渡すんだ。その後、十体分を台車に乗せてアルスト商会の奴らに見せてある事を話す。それは「会長選挙で当選した所にはこのミスリルを贈呈する」とね。つまりはこちらは選挙の開催に協力する団体だな」
「でも、それだと私と同じく借金をせおった貴族やこの街の職人達が解放されないですよね」
「大丈夫だ。そこは、考えてあるから」
そう言った後、リーズの方を見る。
「リーズ、主君の言葉はまだ終わってないので最後まで聞いてください」
「ローゼリア様、わかりました。それでハルヤさん続きをお願いします」
「それで、昨日の夜にローゼにその事で介入出来そうかと聞いてみたら、ソーラント辺境伯領での問題の追求とイースト・デューク様にも相談すると言っていたから参加の方などは何とかなりそうだ」
「それと、借金を抱えた貴族達を働かせているのはともかく、この街の工房を破壊して無理矢理働かされている職人の方はすぐにでも解放したいですね」
やっぱりかなり面倒だけど、この街の職人がいないと大変な事になるからそこはなんとかしたいな。
「ただ、ミスリルを商品にする代わりある条件を出すんだ。それが、職人の解放とスートルからの撤退だな」
「でもハルヤ、昨日聞いた過激派の二人のどちらかが当選したら大変な事にならないかしら?」
「そこは大丈夫だと思うぞ。まずは一人目のハルパさんはこの通り被害が出ていて証拠もあるから捕まえる事が出来る筈だ。二人目のムースさんも部下を潰していたりするから真実の評判さえ知られてしまったら終わりだと思う」
「なる程、それで穏便派の候補者であるカームさんを勝たせようとしているのですね」
「後、普通に考えて過激派の二人を勝たせる意味がないと思うからな。後、部外者の俺達は裏方に徹するから今回はあんまり目立たないようにしないとな」
「そうよね。下手に目立って面倒ごとを押し付けられたくはないわね」
それはそうだろ。面倒ごとを押し付けられて喜ぶ人はあまりいないと思うぞ。
「まぁ、そこは置いておいてそろそろ行動に移すのが良さそうだな。商業ギルドは今は使えないから冒険者ギルドから大きめの荷台を借りたいな」
「そうですね。ワタシ達にはあまり時間が無いですからね。リーズとライムさんとポルカさんは国軍支部で待っていて貰ってもいいですか?」
「わかりました。私が行ったら裏切り者として処理されますからね」
リーズがそう言ってライムとポルカさんが頷いた後
「よし! これからアルスト商会のスートル支部に向かうか。後、戦闘になったら頼むな」
「主君、そこは大丈夫ですよ」
「ハルヤ、なんか雰囲気が潰れたような気がするぞ」
「まぁ、いいんじゃね。別にこの辺に俺様達が負けそうな相手がいるとは思えないからな」
うん、まずルージュに勝てたらこの国の英雄になりそうだな。
「それでは、この会議は一旦終了します」
ローゼがそう言った後、俺達は国軍支部から出てアルスト商会のスートル支部に向かって歩き出した。
「しかし、主君。それだけミスリルをスートルに持ってきていた事をワタシは知らなかったです。もしかしてこのような事を予想していたのですか?」
「いや、そうじゃなくて、、雑貨屋のドアをエグジス工房のマルグさんにミスリルを使って作成してもらおうかなと思って、持ってきていただけだ」
「ハルヤのお店のドアは誰かさんが破壊する事が多いから妥当な判断よね」
俺とソルはドア破壊常習犯のレイナを見ながらそう話す。
「主君のお店のドアは何回も破壊されているのですか?」
「そうだ。でも、この話をすると長くなるからまた今度話すよ」
「わかりました」
ローゼは素直な子なのでよかった。
「でも、ダンナ。俺様と会ってからあんまり雑貨屋を開けていないよな」
「ルージュ、それは言わないでくれ。開こうとしてもそのたびに面倒ごとに巻き込まれるからあんまり開けないんだよ。そろそろ正式に従業員を雇おうかな」
俺はゆっくり雑貨屋を経営していきたいのに何でこんな事になるんだ!
そう考えつつ、冒険者ギルドから荷台を借りてミスリルを乗せてカバーをかけた後、ルージュにそれを引いてもらう。
それから歩く事十数分後、アルスト商会スートル支部とデカデカ書いてある看板がある大きな建物の前に到着した。
「何で権力者? はこんなふうに目立ちたがるのだろうか?」
「主君、それは自分達の力を他の人達に知らしめる為だと思います。それよりも門番がこちらに近づいてきましたよ」
さて、こっからだな俺達が働くのは!
「お前達、このアルスト商会スートル支部に何か用があるのか?」
「用があるからここにきたんだよ! まずはこれを見てみろ」
俺は荷台のカバーを外して中身を門番に見せる。
「お前ら何……。ちょっと待て、それってもしかしてミスリルか!?」
「そうだ。でも会ったばかりの俺達の言葉を信じられないのは分かるから鑑定士を呼んできたらいいぞ。後、こちらの用件はこの支部のお偉いさんと話したいだけだ」
門番の二人は顔を見合わせた後、急いでその事を報告しに行った。
それから俺達の要望通りお偉いさんとの緊急で話せる事になった。




