ソルとの買い物
用事を済ませて冒険者ギルドに帰って来ると、ソルとメルさんがイスに座ってお茶を飲んでいた。
「他のギルド職員や冒険者に聞いていたけど、ハルヤくんはかなりの能力を持っているのね」
「そうよ。ハルヤは昔から回復魔法を使って私達の怪我を治してくれたわ」
その事を聞いて、横にいたエルが会話に入り込んだ。
「その話、ボクも聞いていいかな」
すると、二人はこちらに振り向く。
「ハルヤお帰り。後、エルさんで良いのよね。初めまして、わたしはソル、ハルヤとレイナの幼馴染よ」
ソルはイスから立ち、軽くエルに向かって頭を下げる。
そして、エルも
「ボクも挨拶した方がいいね。改めてボクの名前はエル、レイナから聞いていると思うけどこれからハルヤ君の用心棒だよ」
待て待て、俺はまだ認めてないぞ。
後、基本的には平和な所にいるから、いらないと思うが……。
「その話はレイナをお仕置きして、ある程度聞き出したわ。でもわたしは認めてないわよ。用心棒ならわたしがなればいいわ」
あのな、俺は要らないと言っているのだけど、なんでコイツらは人の話をほとんど聞かないんだろ……。
俺は頭を抱えていると、メルさんが話に入り込んで来る。
「それなら、ハルヤくんに決めてもらったらいいんじゃないかな?」
その事を聞いて、エルとソルはこちらに振り向いて来る。
まぁそれならいいか、あと今回は俺に決定権があるんだな。
なら答えは決まっている、こいつらに現実を突きつけてやろう。
「もちろん答えは決まっている。俺は用心棒を雇わないからこの話は終わりだ!」
よし、言ってやったぞ。
俺は心の中でそう思っていると、三人何故か固ってしまう。
その後、何とか復帰したので、俺に驚きながら話してくる。
「いやいや、なんでそうなるの!? 君は今の自分の立場をわかっているの?」
「もちろんわかっています。この街のどこにでもある雑貨屋の店員で商人です」
俺はそうやって胸をはって言うと、その事に今度は三人が頭を抱える。
俺はその状況をみて、そんな変なこと言ったかな? と考えているとメルさんが口を開いた。
「そのレベルの回復魔法が使えるのに、雑貨屋の店員で商人をしていることがおかしいと思うのは、私だけかしら?」
その言葉にソルとエルが頷いたので、突っ込みを入れたくなったが、ここでやるとしんどいので、普通に言う事にする。
「おかしくないですよ。実際にここにいますからね」
というより面倒ごとや利用されたくないから、ゆっくり暮らしたいから余計な事はしたくない。
そう考えているとエルが喋ってくる。
「ボクからの目線で言うけど、王都やその他の大都市でもあれだけの冒険者の傷を簡単に治して、さらに百人以上もいるのに、魔力欠乏症が起きる気配が全くない回復魔法魔法使いを見るのは初めてだよ」
「いやいや、そんなわけないだろ。それはお前が知らないだけでそこそこの人数がいるだろ」
「確かにボクが知らないだけかもしれないけど、大きな都市とかだとかなり有名になって、どこかに雇われるか貴族とかの部下になっていると思うよ」
「それだと、どう考えても自由に暮らせないじゃないか!? 」
どっかに雇われてこき使われたくないから、辺境の街に住んでいて良かったと思う。
後、この系の話は長くなるのは経験済みなので、他の話に変えることにする。
「悪いが、この話をすると長くなるから他の話をしてもいいか?」
すると、三人はまだ何か言いたそうになっていたが、渋々受け入れたみたいだ。
「そういえば、レイナはどうしたんだい?」
エルがそう聞くとソルが答える。
「レイナはあの後、お尻叩き千二百回+α分のお仕置きを受けて今は治療室でダウンしているわ」
かなり低めの声で言ってきた。
その事に付け加えて、メルさんがその事でこちらに話してくる。
「あの部屋は防音設備がされているのに、それでも私の方までお尻を叩く音と悲鳴&謝罪が聞こえてきたから相当よ」
とかなり引いていた。
いつものことだが、すごいことが起きていたんだなと思いつつ、俺はいつのまにか置かれていたお茶をを飲む。
「レイナのお尻、大丈夫かな?」
エルが心配しているが俺は
「まぁ、アイツは頑丈だから大丈夫だろうし。それにいつものことだから特に気にしてない」
と伝える。
「少しは心配してあげたらいいと思うけど、ハルヤくんはしないのね」
「別にこいつら小さい頃から、いつもお尻を叩かれていて泣いている所を見てきたので慣れています」
そう言ってソルを見たが、目をそらされた。
後、ソルが目をそらした方にエルが座っていたので、さっきと装備が違っている事に気付いたみたいだ。
でも、俺は気づいて欲しくはなかったけどな。
そう思いつつやはりソルは聞いてきた。
「そういえばエルさん。貴女、朝見た時と装備が変わっているわね。何処かで着替えたのかしら。いや、わたしが手が話せ放せない時に新品を買いに行っていたわね、そうでしょう」
後半が若干早口になっていて、さらに目も鋭くなってエルを見ている。
その目で見られたエルは、少しビビりながらもしっかりした声で話す。
「そうだよ。ソルさんがレイナをお仕置きしている時に、暇だったから大型の装備店に行ってきて、ハルヤ君が買ってくれたんだよ」
「おい待て、それを言ったら絶対こっちに話が飛び火するじゃねーか!?」
流石にそれはヤバイ、すると予想通りソルの方からかなりの威圧感が発生している事を感じる。
その状況をみて、俺はこの場から一刻も早く自分の店に帰りたいと思ったが、時すでに遅く俺の方をガン見してきた。
「つまりは、貴方達は二人で楽しく買い物をしてきたのね。さぞかし楽しかったわよね」
ヤバイヤバイ、どうしよう。
俺はエルを見ると顔を真っ青にして、同じタイミングで俺の方を見てきたのでお手上げ状態みたいだな。
ちなみにメルさんは、いつのまにかギルド職員として働いていてこちらに手を合わせてくる。
うん、完璧に見捨てられたなこれは……。
俺はなんとか脱出方法を考えていると、ソルが口を開く。
「わたしも、ハルヤと二人で買い物行ってもいいわよね」
その問いに俺は頷くしかなかったけど、一つ大事な事を話す。
「わかった。空いている時なら一緒に買い物行ってもいいぞ。ちなみにお金はレイナが全額負担してくれたらな」
とりあえずレイナを巻き込む。
「わかったわ。今から無理矢理叩き起こして聞いてくるわね」
そう言いソルは、レイナが居る治療室に向かい歩いて行く。
「とりあえず、装備代とかでお金がかなり減ったから、ソルの件はレイナが払ってくれるなら安心だ」
「レイナは完璧なとばっちりだね。でもあの状況をなんとかするにはいい方法だね」
ごめんなレイナ、俺が思いついたのはこの手しかなかったんだよ。
酷いと思うが我慢してくれ。
少しして、ソルが帰ってきて
「無理だったわ。よくよく考えたら、レイナはお金の使い方が荒いからあんまり貯金してない事を思い出したわ」
そういえばそうだった!? 肝心な時にこれとか俺、運が悪すぎるだろ。
流石に今月のこれ以上は厳しいから仕方なく、本音をぶっちゃける。
「悪いが、俺はさっきお金を大量に消費してしまったらから奢れないぞ」
「別にいいわよ。最近わたし達のせいでまともに雑貨屋の店員を出来ていないわよね」
「いいのか? 」
そう聞くとソルは笑顔で頷いたので、それを見た俺とエルはホッと息をつく。
「でも、今から行ってもいいかしら?」
いやいや、今からかよ流石に俺も一回店に帰らないと流石にまずいんだか……。
そう考えているとソルが
「エルさんだけ行って、わたしだけ行かないのは不公平だと思うわ」
と言い抗議してきたので少し考えて、今回はこちらに問題があったからと思い大丈夫と言っておいた。
「なら行きましょう。エルさんはすみませんがあのバカ(レイナ)の様子を見ておいてもらってもいいですか?」
その問いにエルはコクコク頷いた後、イスから立って敬礼した。
俺は、ソルにイスから立たされ、外に連れ出された。
その間にある事を思う、それはこの買い物が平和に行くかなと。
でも、ソルは上機嫌に俺と手を繋いでそのまま歩いている。
何とか平和に行きますようにと、心の中で願う事にした。