アルスト商会の戦闘員との戦い
アルスト商会の戦闘員との攻撃が開始されると同時に全員武器を構えて迎撃を始めた。
ただ、戦力外の俺とライムとポルカさんを除いて……。
「あの、ハルヤさんと言ったか、あの子達は大丈夫なのか? あんな人数の相手に五人で立ち向かうのは無謀だと思うが、おれ達も微力ながら戦った方が良くないか?」
「それはやめておいた方がいいですよ。自分達が戦闘に加わっても帰って邪魔になるだけなので、ここでルージュが張った結界の中でゆっくりとお茶を飲んでいる方が安心してくれると思いますよ」
「ハルヤさんは商人なので、戦う事があまり好きではないからここにいるんですよね」
ライムが当たり前の事を言ってきたのでそれに頷いておく。
「そうなのか……。でもこの状況は凄い違和感があるな。後、普通にアルスト商会の腕利きが倒されるって事はかなり強いんじゃないか?」
「それはノーコメントで。それよりもそろそろ終わりそうですね」
俺は紅茶を飲みながらイスに座って外の光景を見ていると、ローゼがスキンヘッドの武器を破壊して喉元に槍を向けていた。
「こんなに強いとは聞いてないぞ! オレはBランク冒険者と互角に戦えるんだぞ、それなのにこんな小娘に負けてたまるか!!」
あの、お前の相手しているのは辺境伯令嬢だぞ。
そう思っていると
「ワタシは辺境伯令嬢で主君の騎士ですよ。そう簡単に負ける訳ないじゃないですか」
その言葉にアルスト商会の戦闘員とポルカさんが唖然としている。
「あの、ハルヤさん。あの青髪の騎士鎧を着た方は辺境伯令嬢なんですか!?」
「そうですよ」
「いやいや、教えてくださいよ! もしかしたらおれ達の言葉違いの問題で不敬罪で首をはねられても文句言えないですよ!?」
まぁ、普通ならそうなるよな。
ただ、ローゼは
「主君やその関係者を不敬罪で処刑する気はさらさら無いので大丈夫ですよ。それにワタシは主君の騎士なので一緒の扱いでいいので、そこは気にしないでください。」
スキンヘッドに槍を向けながらそう喋ってきたので
「おれには家族がいるのでここで死にたく無いので良かったです」
とポルカさんはホッとしている。
でも、辺境伯令嬢と知ったスキンヘッドは
「そ、そんな訳ないだろ。お前はう「これを見てもそう言えるか?」えっ……」
ローゼは懐からソーラント辺境伯の血縁者しか渡されない証を見せると、相手の顔は真っ青になった。
「貴方達は貴族のワタシに喧嘩を仕掛けたのですよ。これは不敬罪どころでは無いですよね。もちろんこの処分は厳しい物になりますが覚悟はいいですね」
襲ってきた奴らの顔が真っ青を超えて蒼白になっているが
「さっきソーラント辺境伯領の者に連絡を取ったので騎士達がこちらに来るので自首すれば命だけは助けて貰えるかもしれないですよ。後、アルスト商会の情報を吐けば減刑もありえるので吐く事もオススメします」
ちなみに、縄で縛られているリーズが
「あの、私はどうなるのですか? 出来れば家族だけは助けてください! お願いします」
「貴女はそれを言える立場では無い事は分かっていますよね。少なくとも家もタダでは済まないですよ」
「そ、そんな……」
とかなり落ち込んでいる。
俺からは何も言えないので黙っているとレイナ達が襲ってきた戦闘員を縄で拘束して、ローゼが残ったスキンヘッドを縛ってルージュが結界をといた。
「さて、まずリーズの尋問を始めようか。言っておくけどここで嘘をついても意味がないからね。まずはアルスト商会の現状だね」
ぶっちゃけ、エルの雰囲気が怖いので俺は引き続き黙っていると
「それは、実は少し前にアルスト商会の会長が引退を宣言して、次の会長候補の三人がいるのですがその内の二人が過激派でかなり酷い事をしているのです。後一人は穏便派なのですが二人よりも影響力がないんです」
とかなり沈んだ声で話してきたので
「例えばどんな事をしていたのかしら? わたし達が知っている限りでは、スートルの事しか知らないわよね」
ソルがそう言い俺達が頷いた後、それを見たリーズが話を続ける。
「例えば、いい土地があれば力ずくて奪い取ったり、人を無理矢理集めてかなり過酷な労働をさせている事などですね」
「それはかなり酷いですね。……という事は僕のお父さんとお母さんも無理矢理働かされているのですか!?」
「はい、しかもブラックな環境なので心身が限界だと思います」
俺はそれを聞いて前のロートスの商業ギルドや国軍の事を思い出す。
「なんか、ブラックな所が多いよな。でもうちの雑貨屋はそんな事は無いのでたまに手伝いお願いします」
「ハルヤ、ここで宣伝してもあまり意味が無いと思うぞ」
いやいや、これを言っておかないとうちの店もブラックに見えるかも知れないから言っただけなんだが……。
それはさておき、続きを聞く事にする。
「主君の雑貨屋の事は一回置いておいといて、そんな環境なら逃げ出して国軍とかに避難すると思いますが違うのですね」
「はい、職人の方達は軟禁状態でひたすら作業をしていて、他の家族の方も内職などで働かされて人質として生活しています」
「ハルヤさん、なんとかならないですか?」
ライムとポルカさんがこちらを見てきて不安そうにしているので
「自分が考えていた事を話して大丈夫ですか?」
「ハルヤ君、何かいい方法が思いついたんだね」
エルが俺の方に向きながらそう言ってきたので
「ただ、上手くいくか分からないです。それに、この作戦は色んな人に協力を仰がないといけないから難しいと思うが、それでもいいですか?」
俺のその言葉にレイナ達が頷いたので内容を伝える。
「まず、鉱山にミスリルを取りに行く組と、アルスト商会のスートル支部の事を調査する組ですね」
「ダンナ、調査の方は分かるけど、なんでミスリルを取りに行くんだ? 一気に商会を潰した方が早いと思うのは俺様だけか?」
「ハルヤさん。出来れば早くみんなを助けたいのですが……。ミスリルを取りに行ったり調査するには時間がかかると思います」
「ライム、急いで助けても後々問題が残る事が多いぞ。それに今回ミスリルを取りに行くのはある事に使おうと考えているからですね。後、もう一つはローゼに頼みたい事があるけど大丈夫か?」
「内容によりますね」
ローゼは悩みながらそう話してくる。
「難しいかも知れないけど、ソーラント辺境伯の騎士様にアルスト商会のスートル支部の調査依頼出来るか?」
「出来ない事は無いですが、依頼という事は何か報酬があるという事ですね!」
目を輝かせてそう言ってきたので
「報酬はローゼが欲しい物を用意出来たらいいが、貴族様だから殆どの物が用意出来るから何がいいか「主君との二人きりの時間をお願いします!」アッハイ」
それで大丈夫なのかと聞くと、俺の肩を掴んで目をさらに輝かせてきたので、それを見たソルが
「ハルヤ、今回は仕方ないと思うけど二人きりの時間はズルいわ。それならわたし達にも何かご褒美があってもいいわよね」
待て待て、なんでお前らも目を輝かせているんだ!?
「あのー、私はいつまでこうやって縛られているのですか……。知っている情報は話しますので少しは待遇良くしてもらえませんか?」
縛られているリーズさんがそう言ってきたのをスルーして
「とりあえずローゼ、なんとかなるか?」
「それは実家に連絡しないとわかりませんね。ですがここまで好き勝手やっているので許可が出る可能性は高いですね。後、前の事があったのでスートル支部の国軍にはソーラント辺境伯の国軍兵士もいるので戦力は大丈夫だと思いますよ」
「それなら頼んで大丈夫か?」
「はい、もちろんです!」
これで何とかありそうだな。
俺はこの後の計画の説明しながらチーム分けを考える事にする。




