工房地域
俺達はゴズス工房に到着するとある光景が目に映った。
「嘘だろ……。こんな事があるか?」
「そんな、僕がいなくなった数日間でこんな事になっているなんて……」
「これはいくらなんでも酷すぎるわ」
目の前に映った光景、それはゴズス工房が木っ端微塵に破壊された後だ。
「主君、この状況はワタシも言葉が出てこないです。それに近くの工房も取り壊されているので、アルスト商会は権力を使ったみたいですね」
「そうだな。それにゴズスさん達が何処に行ったのかが分からないから探さないとな」
しかし、やはり何で工房地域を選んだのかが気になるな。
そう考えつつ、周りを見ていると
「ライム、ライムじゃないか!!」
何処からか野太い声が聞こえてきたのでその声の方向を見ると、ザ・山賊風の見た目をした大男がこちらに走ってきた。
「また襲撃か? でも武器を持っていないのは、私達相手でも素手でもいけると思っているのか?」
「レイナさん。ポルカさんはチンピラではないですよ。確かに見た目は山賊に見えますが、お父さんの仕事仲間ですよ。そうですよね、ポルカさん」
ライムからポルカと呼ばれた山賊?は俺達の近くにきて呼吸を整えた後
「そうだ、俺はゴズスの近くで自分の工房を開いていたポルカだ。だが今は工房を潰されて、さらに従業員や家族をアルスト商会に連れて行かれてしまったんだ……」
「それ、大変な事じゃないですか!? でも、それならポルカさんはここにいるのですか?」
ライムがふとその質問をすると
「それは、おれがたまたま仕入れて他の街に行っていたから大丈夫だったんだ。それで昨日帰ってきたのだが工房は潰されていて、入り口には家族と従業員を返して欲しければアルスト商会の仮場所に来いと書いた看板が立っていたんだ」
「でもそれは罠ですよね。多分、自分が思うに狙いはこの土地よりも金属を加工できる職人が狙いだと思うんです」
「ハルヤ君もそこに目をつけたんだね。ボクもその線が濃厚かなと考えていたんだけど、他にも何かあると思ってしまうんだよね」
そうだよな。もし職人を狙うだけなら他にも簡単に狙う方法があるから、ここまで手荒い事をしている意味がわからないのが辛いな。
そう思っていると
「だぁー、考えるのが面倒になってきた。ダンナ、俺様達がその商会を力ずくで潰したらダメなのか? そっちの方が早いと思うぜ、後少し気になった事があるから行って来るな」
「ルージュ、それをすると多分色々改ざんされてこっちが悪くなる可能性がある。そうなったら俺達はお尋ね者になる。後、行くのはいいけど気をつけてな」
そして、ルージュが何処かに行った後も話し合いは続く。
「でもハルヤ、アルスト商会の不正が見つかったらどうするの?」
「それなら突撃して叩き潰す!」
「主君、最近かなりストレスが溜まっているのは分かってますが暴走してないですか!?」
「ローゼ、今までの事を考えてみてくれ。俺がどんだけ苦労してきたか……」
その言葉にみんなが黙ってしまう。
でも、その事を知らないポルカさんは
「そんなに苦労しているんだな。でも頼む、おれ達を助けてくれ」
と言って頭を下げて来る。
「ハルヤさん。僕もお父さん達がさらわれている可能性が高いのでお願いします。報酬は後で何とか頑張ってお支払いしますので」
ライムもポルカの横に行って頭を下げて来る。
なので俺はある事を大声で言う。
「断る!」
その言葉で場の空気が凍った……。
「おい、ハルヤ! 流石にここまで言われて断るのは酷く無いか!?」
「わたしもそう思うわ。ハルヤ、少しは同情した方がいいと思うわ」
「ソル、君もかなり酷い事を言っているような気がするけどボクもこの頼み事を受けた方がいいと思うよ。この状況を見ていると、アルスト商会を野放しにすると大変な事になりそうだからね」
コイツら自分が何言っているか分かってなさそうだな。
まぁ、これから説明するからいいけどな。
「あのな、別に救出しないとは言っていないだろ。俺が断ったのは俺達だけでこの事を解決しようとする事だ」
「でもハルヤ、私達以外にこのスートルで戦える奴はいるのか?」
「それも説明するから待ってくれ。ローゼ、悪いが捕捉を頼んでいいか?」
「もちろんです、主君」
ローゼの許可も取れたし説明するか。
でもその前にルージュが帰ってきて全身黒い服を着たボロボロの女性を抱えてこちらにきた。
「ルージュお帰り。その肩に担いでいる女性はなんだ?」
「ただいまダンナ。コイツは俺様達を観察してアルスト商会の奴らに報告していた女だぜ」
「そうなのか? 俺には何も聞こえなかったけど」
そう話すがルージュは女性を地面に下ろしてローゼにある事を頼んだ。
「なぁローゼ。コイツ気絶しているから水をぶっかけて起こしてくれないか?」
「わかりました」
そう言って水属性魔法第一階を発動して水の球を出現させて女性の顔に軽くぶつける。
「ゴフッ、なんなのよ」
「おっ、お目覚めか。お前、さっきアルスト商会に連絡していた事はわかっている。死にたく無ければキリキリ情報を吐く事をオススメするぜ」
ルージュが悪役感満載で両手剣を女性に向けると
「ヒィッ、ちょっと待ってくださいお願いします」
とガクガク震えているので
「ルージュ、すみませんが剣を下ろしてもらってもいいですか? この女性は少し見覚えがあります」
とローゼがルージュを止める。
「わかった」
ルージュが両手剣を鞘に戻して少し離れた後、ローゼが背中にある槍を引き抜いて女性に向けた。
「リーズ・トルクナ、何故貴様がここにいるんだ?」
とかなり低い声で問いただすと、リーズと呼ばれた人物はポツポツと喋り始める。
「そ、それは私の実家である子爵家がアルスト商会から多額の借金をしていて、その返済のためにスートルにきて諜報活動をしていたのです」
「確かに、リーズは隠密系の能力はかなり高くて諜報やスパイ系が得意なのは知っているけど、もっといい働き口があると思ったのはワタシだけかしら?」
「でもローゼ、アルスト商会に借金をしているからそこで働かないといけない状況だからここにいるんじゃないか? それよりもアルスト商会の事を聞くのが先じゃないか?」
流石にここにかなりの時間いるのでそろそろ何か行動に移したいな。
「主君の言う事も一理ありますね。確かにここで話すと他の構成員に聞かれる可能性がありますね」
「でもハルヤ君。ボク達は何処に移動すればいいのかな? さっきの事もあるから迂闊な行動は出来ないよ」
「一番は金はかかるがこの街トップクラスの宿に行く事だな。そこならかなりの警備が敷かれているからそう簡単には聞かれないと思うぞ。他には冒険者ギルドの相談室を借りてルージュに結界を張って貰うのもいいな」
「それなら現場も見れたから一回離れた方が良さそうですね」
そう話して離れようとした時
「悪いがそうはいかないぞ」
と声が聞こえてきたので、そちらに振り向くと二十人くらいの武装した男女が武器を構えてこちら近づいてきた。
「おいおい、なんか面倒な奴らが出てきたな」
「そうだね。しかも今回はさっきのチンピラと違って魔力がそこそこ高い人もいるよ。多分ボク達を本気で潰しにきた可能性が高いね」
「よくわかったな。オレ達はアルスト商会に雇われている腕利きの戦闘員だ。さっきお前らが戦ったチンピラとは訳が違うぞ」
とリーダーぽいスキンヘッドがそう言ってきたが
「だから何だ? 俺様からしたら雑魚の集まりでしかないと思うぜ」
ルージュ、お前煽るの好きだな……。
そう思っていると
「そうか、ならそれが遺言でいいな。お前らやってしまえ、コイツらを倒したら報償金が出るとオーナーから聞いているからその金で飲むぞ!」
「「「おぉ!!!」」」
その掛け声が引き金になってアルスト商会の戦闘員との戦いが始まった。




