アルスト商会
ライムの話を聞いていると、スートルもまた面倒な事になっているなと思ってしまう。
「つまり、金貸し屋シルードみたいな所があるみたいと言う事か」
「はい。それに、商会はお金稼ぎには貪欲なので、スートルの鉱山ダンジョンから出てくるミスリルに目をつけたのだと思います」
「はい。問題の商会、名前はアルスト商会といいますが、そこの構成員の方達が鉱山ダンジョンのミスリルが目的だとよく言っていました」
「なる程な。でもダンナ、今回もまた面倒事に巻き込まれたな」
ルージュが笑いながらこちらをみてきたので俺はため息を吐いて
「そうだな。でも今回はローゼがいても難しいような気がする」
「主君の言う通りです。アルスト商会はイースト・デューク公爵領でもトップクラスに大きい商会なのと後ろ盾が伯爵家なのでワタシ達でも手を出すのが難しいですね」
「確かに、貴族の階級はローゼ達の方が上でも相手はどれだけ権力とお金を持っているかわからないからな。それでも、取り潰しとかしたら悪い噂とかが立つと思うが……」
そう話しつつ考えていると
「多分、取り潰しはもみ消されるか構成員が勝手にやったという事で責任逃れをして自分達を正当化するかもしれないと僕は思ってます」
「ハァ……。そのパターンはさらに面倒だな。それに言い方が悪くなるが、ライム達が住んでいる工房地区を潰してもあんまりいいと思わないが……。俺なら金を出して一等地を買うな。そっちの方が儲かりそうだからな」
「でも、ハルヤさん。一等地だとその分、土地代が高いから儲けも少なくなるのでは?」
「それは考えたけど、このスートルの街の状況をみて土地代よりも鉱石とかで稼いだお金の方が、高くなる可能性が高いと思ったがそうでもないのか」
「まぁ、その辺は難しいと思います。でもどちらにしても職人が追い出されたら行き場所が無くなると思うので、アルスト商会の者達は何を考えているのでしょうか?」
「さあな。俺様も特に思いつく事がないぜ」
そうやって話しているが答えは出ないまま夕方になって、ローゼが持っている通信水晶が光った。
「もしもし、ローゼ様。今スートルに到着したので今どの辺におられますか?」
「ソルか。今ワタシ達はその辺にある喫茶店の中にいるから多分わからないな」
「そうですか。わたし達は今スートルの入り口の所にいて今から冒険者ギルドに向かうのでそこで待ち合わせて大丈夫ですか?」
「ワタシは大丈夫だが、主君達は大丈夫か?」
ローゼのその言葉に俺達は大丈夫だと伝えておく。
「こちらは大丈夫と許可をもらったからワタシ達もそちらに向かうわ」
「わかりました。それでは冒険者ギルドで待ち合わせという事で」
通信が切れて俺達は冒険者ギルドに向かった。
そして、冒険者ギルドに到着するとレイナ達が待っていたので
「レイナ、ソル、エル元気だったか?」
「ハルヤ、久しぶりね。わたし達は元気だったわよ。でもなんで貴方達がスートルにきているのかしら? 公爵家の事で何か問題が起きたの?」
「それは確かに起きたわ。それで十日程暇になったからレイナ達に会うためにここにきたわ」
と話しているとレイナが
「すまないけど、私達の素材の換金が終わるまで待ってくれないか?」
「それはいいけど、こちらも問題が山積みだから終わったら話が長くなるが大丈夫か?」
俺のその言葉にレイナ達がまたかという顔をしたので
「あのな、俺も巻き込まれたくて巻き込まれているわけではないからな」
「ハルヤ君……。君は本当に大変だね。ちなみに今回はそこにいるライムさんの事で大丈夫かな?」
「はい。僕達の事でハルヤさん達を巻き込んでしまいました」
「その話は長くなりそうね。わたし達の用事が終わったら何処かで話を聞くわ」
「ありがとうございます!」
そうやって話していると換金が終わったらしくて、レイナ達は受付に取りに行った。
「なぁ、なんで俺はこんなに巻き込まれるんだろうか?」
「「「それは知らん(ない)」」」
……。泣いてもいいだろうか。
そう思いつつ、俺達はレイナ達が戻って来るのを待つ。
それから少しして、平均よりも少し高めの宿に向かい大部屋をとった後、こちらのあった事の説明をして対策を考える。
「なる程ね。ボク達三人がいない間にそんな事が起きていたんだね。それで公爵令嬢がお仕置きから復活するまでにかなりの時間があるからこちらにきたんだね」
「そうだな。本当は雑貨屋をやりたかったけど、店の商品があんまりなくてな。スートルに行けば素材もあるかなと思ってきたんだ。後そちらが大丈夫かなと思ったのもある」
「ですが、結果的にはまた面倒事に巻き込まれましたが……」
「それは言わないでくれ……」
俺は頭を抱えながらそう言うと
「でもわたし達にはライムの件はどうにもならないわよ。それにこの街の冒険者から、アルスト商会と契約しているアークイースト公爵領や他の街の冒険者をスートルにかなりの人数を連れてきたらしいわよ」
「それはかなりマズくないか?」
「そうだね。前にハルヤ君達がミスリルを大量に鉱山ダンジョンから取ってきた事も知っているから情報網も凄いね。でもこの街にきてからやり方が強引だから相当不満が溜まっていると他の人からかなり聞いているよ」
「エルさんが言う通り工房の人達からも相当聞いてますね。でもアルスト商会はそれを無視しているみたいですね」
もう、どうしようもないな……。
何か効果的な方法がないかと考えていると
「なぁダンナ。俺様達がミスリルをダンジョンから大量に取って来るのはどうだ?」
「いや、ルージュ。ミスリルを大量に取ってきてもどうしようもなくないか?」
そう言うとローゼが
「そうか! それを公爵家に献上すればいけるかもしれない」
「でもローゼ様。でもどうやって献上するのですか? わたし達にはツテはないですよ」
「それは主君の出番よ。主君は公爵家と交渉をして後ろ盾になってもらえたからそこを起点とすればいいわ」
おい待て、話がややこしくなってないか。
「ちょっと待って。ボクの聞き間違いではなかったらハルヤ君の後ろ盾が公爵家と聞こえたけど」
エルのその言葉をきいた幼馴染二人も俺の方を見て来る。
その視線に耐え切れなくなったので
「まぁ、色々あって俺の後ろ盾が公爵家になった。細かくは公爵令嬢がだけどな」
「「「「えぇー!?!?」」」」
三人とライムが俺のその言葉を聞いてよくわからない表情で驚いている。
流石にこれはマズいよな。
そう思いつつ考えていると
「ハルヤ。それは私も聞いてないぞ。もしかして公爵家に雇われる事になったのか!?」
「それは違うぞ。後ろ盾だから命令される事はほとんどないと思うから大丈夫だぞ。でも細かい事はわからないから貴族のローゼに細かい事は聞いてくれ」
「えぇ!?!? 主君丸投げしないでくださいよ」
そのあとローゼの説明が長くなったがなんとかなったのでそのまま進む。
「ハルヤ君。ローゼからの説明で色々分かったけど、君は本当にすごいね」
「それよりも対策の話だ。何か他にいい案はあるか?」
「正直言ってミスリルを大量に集めてそれを公爵家に献上してアルスト商会を止めてもらうのが一番じゃないかな?」
「でも、公爵家がこんなことで動くかしら? それよりも新しい土地を用意してそこに工房の人達が引っ越しするのが一番じゃないかしら?」
「それもそうなんですけど、あそこの工房地区はかなり老舗の所も多いので離れたくない人も多いらしいですよ」
答えがまとまらず話は平行線になっていってしまう。




