ハルヤとローゼの出会い(七年前)その一
この物語は、俺とローゼが初めて出会った時のお話だ。
その日は、雨が降っていた。
「爺さん、今日もいろんな素材が手に入ったな」
俺は育ての親の爺さん、サージュさんとアイテムバックに入っている素材を見ながら喋っていた。
「そうだな。今日は〈八等級ポーション〉の素材が安くて思わず買いすぎたな」
爺さんはそう言ってアイテムバックを担いだ。
「しかし、ハルヤはソーラント辺境伯領に来ても大丈夫だったのか? レイナちゃんとソルちゃんに探検に行こうと誘われてなかったか?」
「確かに誘われたけど、俺は爺さんの買い物について行くと言って断ったぞ」
俺は、アイツらと探検に行くのはしんどいから大体断っている。
しかし、なんで毎回誘って来るんだろと思っていると
「ハルヤ、たまには遊んであげたらどうだ?」
「爺さん、それで前に魔物に追いかけられて大変だったからな」
雨が降っているので、傘を持ちながら話していると裏路地にボロボロの少女が倒れているのが見えた。
「爺さん! あそこに青髪の少女が倒れているが行って来ても大丈夫か?」
「孤児かもしれないから、物が盗まれないように気を付けろよ」
俺は爺さんの忠告に頷いて、少女の元に近づく。
〈ローゼリア・ソーラント、視点〉
ワタシはソーラント辺境伯家の長女である、ローゼリア・ソーラントです。
家はかなり裕福ですが、貴族教育が厳しいです。
今日も社交ダンスの練習や武術の鍛錬などをして、休む暇もなく頑張っていました。
ただ! ワタシの武術の師匠でソーラント辺境伯家の女騎士であるメプリスに
「ローゼリア様、何故こんな単調な攻撃も防御出来ないのですか?」
木剣での手合わせで、いつも通りボコボコにされていた。
「ワタシだって頑張って防御しようとしているのに、メプリスの攻撃が速すぎて見えないです」
なので、ワタシは泣きながら必死に剣で戦っているが
「シャンテ様は先輩との稽古で上手く戦えているのに、ローゼリア様は全然ですね」
と言われて木剣を吹き飛ばされた後、腰に思いっきり打ち付けられる。
「痛い! なんでワタシは武術の稽古をしないといけないのですか!?」
ワタシは地面に倒れなら怒っているけど
「それは、ソーラント辺境伯家は知力と武術が優れている貴族なので、ここに生まれたローゼリア様は運命を決められているのです」
メプリスはワタシを見下しながら当たり前のように喋って来る。
「何が運命ですか!? それならワタシは貴族の家なんかに生まれたくはなかったです!」
もう、ワタシは自分が何を言っているかが分からないですが
「なら、ソーラント辺境伯家から出て行ってください。当主様達には私から説明しますので」
そう言って、ワタシを担いで門の外に放り出しました。
「それでは、貴女は外の世界で惨めに死んで行ってくださいね」
ワタシはその言葉に、地面に落ちていた石を投げて
「ワタシは外の世界でも生きられる事を証明します!」
もう、貴族教育なんて受けたくもないです!
ワタシはなんとか立ち上がって、一般街の方に向かう事にします。
そして、雨も降って来たので、ワタシはさらにイライラして来ましたが、お金が無い事に気が付いて
「お腹空いたな。でも、盗みをする度胸はないです」
ワタシは、稽古でボコボコにされた痛みに顔を歪めながら、数日間彷徨っていましたが、ついに空腹で裏路地で倒れてしまいます。
「ワタシはなんて無力なんでしょう」
その時に思ったのは、ワタシがどれだけ裕福だったのか、自分が無力だったのかを思いました。
そして、ここで死ぬのかと思った時に
「おい、大丈夫か!」
これが、灰色の髪色をした少年との運命の出会いです。
〈ハルヤ、視点〉
俺は、ボロボロで倒れている少女を見て
「おい、大丈夫か!」
と声をかけると
「何故、ワタシに声をかけたのですか?」
少女は、かすれた声で話して来たので
「いや、俺がそうしたいと思ったからだ」
正直、そう話すしか無かった。
だが、少女は
「ワタシは役に立たないのですよ。なので、ワタシを助けても意味が無いですよ」
そうやって話していると
「いたぞ! アイツだ。前は、世話になったな」
薄汚れている孤児の男女が近づいて来たので
「とりあえず、逃げるぞ」
俺は当時から簡単な回復魔法が使えたので、回復魔法第二階を使って少女の怪我をある程度治す。
「貴方は回復魔法を使えるのですか!?」
「その事も後で話すからとりあえず逃げるぞ」
俺は少女の手を取って、爺さんの元に逃げる為に、ポケットに入っていた小銭をばら撒くと、孤児達は拾い始めたので
「今だ!」
俺達は全速力で爺さんの元に向かう。
そして、なんとか孤児から逃げて、爺さんの元に逃げると
「ハルヤ、少女の帰る場所はあるのか?」
「それはわからない。あと、自己紹介を忘れていたな。俺はハルヤ、よろしく」
俺と爺さんは優しく聞いてみると
「ワタシの名前はローゼです。すみません、ハルヤさん達が住んでいる所に居候してもいいですか?」
「それは、爺さんに聞いてみてくれ」
俺は爺さんの方を見てそう答える。
「ハルヤが連れて来たからには、仕方ないな。でも、ウチは雑貨屋だがら手伝って貰うぞ」
よし、爺さんからの許可が貰えたので、思わずガッツポーズをしてしまう。
「ハルヤはワタシがいても邪魔では無いのですか?」
何故かローゼが恐る恐る聞いて来たので
「いや、別に大丈夫だそ。それよりも幼馴染の二人の相手を頼んだ」
「ハルヤ、それが目的か……」
爺さんは呆れているが、俺の目的はそれである。
そして、ローゼと一緒にロートス行きの馬車に乗った。
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