貴族の館
新しく街の中央に作られた貴族の館に到着して、馬車を降りると
「なる程、結構大きいんだね」
エルがそう言って俺達は頷く。
ただローゼがある事を話してくる。
「あの、エルティアナ様の実家の方がこの数十倍は大きいと思うのですが……」
「ローゼリア、ボクの今の名前はエルだよ。本名で呼ばないで」
やっぱりエルは何かあるよな。そう思っていると
「そうか、どっかで見たことがあると思ったらお「それ以上はダメだ」えっ?」
テルメアがお、と言った時にエルが拳に魔力を込めた後、ぶん殴って地面に沈めてしまう。
「おい待て、一応貴族なのにぶん殴って地面に沈めても大丈夫なのか!?」
そう言って焦っていると
「主君。これはテルメアが悪いので罪には問われないですから大丈夫ですよ」
「それならよかった。でも、この光景を見て他の騎士達が固まっているがこっちはいいのか?」
「それも大丈夫ですよ。騎士達はこれからこの光景をよく見る事になると思うので、慣れさせるのがいいと思います」
なんかローゼが結構酷い事を言っているような気がするけど、まあいいか。
すると地面から顔を出したテルメアがこちらを見てきて
「ローゼリア様それは酷くないか? オレをもう少し丁寧に扱ってくれませんか」
「だったら、ここで文句を言ってないで貴族の館に入りなさいよ。ワタシが主君のためにどれだけ準備してきたと思う?」
「いや待て、ここは貴族の館でローゼが何か用意したのか?」
「いえ主君。用意したのはワタシの配下の者ですね。でもある程度は指示を出しておいたので、その通りになっているとも報告を受けているので大丈夫ですよ。後ここはワタシの別荘です」
なんか凄い事を聞いたような気がするけどスルーする。
「そうなのか。後俺達ダンジョンから帰ってきたばかりで疲れているから手短に頼むな」
「そうですね。それならお風呂の用意もしますので今日はここに泊まっていってください」
そう言って俺の腕を掴んで館の中に引っ張らそうになった時、ルージュが
「なる程、という事は今日は宴会はあるのか?」
と言葉を発してもう片方の腕を掴んでくる。
「それはもちろん用意しているわよ。もちろんルージュ達が超大食いなのは知っているから大量にあるわよ」
「それなら俺様は反対しないな。レイナ達はどうする?」
「私はとりあえずハルヤの横にいたいのだけどいいか?」
「わたしも、同じく。流石に疲れているからあんまり動けないわ」
「ボクは美味しい料理が出て来るなら賛成するよ」
なんか賛成が反対かの話し合いをしていたみたいだな。
ただ、俺の手短と言った意見は入っているのか?
そう思いつつ、俺は貴族の館の中に連れていかれてしまう。
中に入ると、物があんまり置かれてないが、作りたてでキレイなロビーが見えてくる。
「ここは広いわね。冒険者ギルドと同じくらいの広さがあると思うわ」
「そうだな。でもこんなに広いと掃除が大変だし俺は住みたくないな」
俺は緊張しているソル達とそう話していると
「確かに主君はワタシの実家のソーラント家の本家の時も似たような事を言っていましたね」
「ローゼ、よく数年前の事覚えているな」
「もちろんです。主君と会った時は日記を書いて忘れないようにしているので、何があったかをちゃんと記録しています」
なんか、ローゼがそう言ってきてこちらをガン見してきたので視線を逸らす。
そして、その状況を見ていたテルメアが引きながら
「まさか、あの堅物のローゼリア様がここまで柔らかくなるとは思ってもいながったぞ」
なんかそう喋っているがロビーに到着したので前を見ると、執事とメイドがビシッと整列して頭を下げていたので
「ちょっと待て、これ俺がローゼとルージュに挟まれて、さらに新しい支部長のテルメア様が後ろにいる状況はかなりマズくないか……」
流石にこの光景を見てそう言うと
「主君大丈夫ですよ。ちゃんと話は通っていると思うので、さて執事長この状況はなんだ?」
話が通っていると言いながら声が低くなるローゼに引いていると
「ローゼリア様。今日はこの貴族の館にお客様が来ると聞いておもてなしの準備をして、到着されたとお聞きして挨拶に来た次第です」
「主君、とりあえず中に入ろうか」
「待て待て、何故そうなる!?」
俺は焦りながらそう喋ると
「なぁ、灰髪。そこまで細かい事は聞かなくていいと思うぞ。それに執事長、オレはさっさと飯を食いたいから案内してくれ」
まぁ、人様の家だから俺がとやかく言う資格はないな。
少し冷静になってそう考えると後ろにいるレイナが声をかけてくる。
「ハルヤ、私貴族の家に来るのは初めてだけどどうすればいい?」
そうやって震えているので
「とりあえず余計な事はせず静かにしていればいいと思う。後俺もどうすればいいか分からないから、大体いつも流れに身を任せている」
「それ大丈夫なのか?」
「多分な」
そうやって執事長さんに案内されながら、歩いていると広い会議室みたいなところに連れてこられた。
そして、馬車から降りて一言も喋らないギルド長達と騎士の隊長達と左右に分かれて座る。
そして、少し待っていると街の上層部の人達や町長のツルットさんが入室してくる。
その事で俺はこの場は殆ど関係ないのではと思いながら、話し合いが始まったので聞いていく事にする。
それから、全員が自己紹介した後、まずツルットさんが口を開く。
「まず、新しい国軍の支部長が何故子爵令嬢なのですか? 最近ロートスはかなり危険な状況になっているのに、脳筋とお聞きしている彼女に何が出来るのですか?」
凄いストレートに聞いたな。
でも、俺も正直そう思っていたから気になるな。
すると
「それは知らん。オレはいきなり言われてこうなっただけで、領主とかのやり方はほとんどわからない」
それかなりヤバくないか……。
「ローゼリア様、この者にロートスの国軍を任せても大丈夫なのですか!?」
ツルットさんはそう言ってローゼの方に言うが
「王都からの指令で拒否出来なかったみたいで、それに経営の方は多分適任者が来ると思うからまだ大丈夫だと思う」
「それにオレは国軍では腫れ物扱いされていたから、ここに飛ばされたわけだな」
「つまりは左遷という事ですか。なる程それで国軍の新しい支部長なんですね」
ツルットさんがそう切り出すと
「そうだな、それであっている。でもオレはここにきて良かったと思うから左遷の事は気にしてないぞ」
「それは良かったです。この街ロートスはいいところが沢山ありますのでお楽しみください」
「そうか、それなら楽しみだ」
そうやって話し合いが続き、夜ご飯の時間になったので大量の料理が置いてある部屋に移動した後、バイキング風なので食べ始める。
そして、俺はそこまで食べないので適量を食べてコーヒーを飲みながらゆっくりしていると
「主君。どうですが家の者のシェフの腕は?」
「料理は美味しくいただいたからかなりいいと思うぞ。でも今日は忙しかったから正直眠い」
「そうなんですね。先ほどソル達からダンジョンからの帰りだと聞いたので相当疲れておられると思ったのですが、どうしても主君に会いたかったので申し訳ないです」
「それは別にいいが、出来れば一回家に帰りたかった。後ミスリルの装備で参加しているのは大丈夫か?」
「ワタシは全く気にしないですし、テルメアはキッチリしているのはあまり好きではないので大丈夫ですよ」
「そうか。後そのテルメア様はあそこでルージュ達と大食い対決をしているのだが食料は足りるのか?」
「それはわからないですね。一応かなりの食材を用意したのは聞いてますが、大丈夫ですかね?」
そして、この館の食材が空になるまでルージュ達は食べまくった。




