新しい国軍支部長
ローゼから続きを聞こうとしたが、連れてきた人がうるさいので一旦切られた。
そして、俺は周りを見渡すとお通夜状態になっていた。
「ハルヤくん。今のはローゼリア様であっているよな。それで、国軍の支部長も横にいてさっきロートスに着いたと言っていたよな」
もはや真っ青を通り越して白くなっているギルド長に俺は
「そうですね。でも、ギルド長達は今日来る事は知っていなかったのですか?」
「知っていたらこうなっていないと思うわよ!? ハルヤくんのおかげで今分かったのは良かったけどなんの連絡もきてないですよね、副ギルド長」
メルさん。なんでそこで副ギルド長に聞くのかな?
そう思っていると
「僕も何も聞いてないですよ。それに昨日ツルットさんに呼び出されて話を聞いた時も、今日来るとは一言も言ってないですよ」
「それってかなりまずくないかな? ボクが思う限り国軍の支部長はかなり強引で面倒性格のような気がするね」
エルのその言葉に俺達は頷いてしまう。
「それよりも、出迎えに行かなくていいのハルヤくん。相手は辺境伯令嬢と国軍の支部長なのよ」
何故そこで俺に行かせようとするのか?
そう思っていると、会議室のドアをかなり強くノックする音が聞こえるので開けると、ギルド職員の人が汗だくで話してくる。
「すみません相談中に。今衛兵からローゼリア・ソーラント様と国軍の支部長になるテルメア・クートン様が到着してこちらに向かっているとの事です」
いや待て、普通は町長や街の上層部の人の所に行かないか?
そう思っていると
「なんで冒険者ギルドに来るのかしら? 普通は街の上層部の所に行くと思うのだけど」
「それは本人に聞かないとわからないですね。それよりも後少しで着くそうなので出迎えの準備をした方がいいですよね」
「いや待て、ここは冒険者ギルドなんだぞ。どうやって準備すればいいんだよ!?」
もはやギルド長達がパニックになっているのでどうしようかなと悩んでいると、今度は女性のギルド職員がノックもせずドアを思いっきり開けてきた。
「あの、ローゼリア・ソーラント様一行が冒険者ギルド前に到着されました」
「こうなったらハルヤくん。何とかしてくれ」
「いやいや、自分にもどうにもならないですよ!?」
そうやって言ったがこのままだと収集がつかないのでとりあえずロビーに向かう。
会議室を出てロビーに着くと冒険者達は、ギルド職員達が避難させたらしくて殆ど人がいなかった。
「何故こうなるんだ……」
「ダンナ、もし何かあったら俺様達が全力で守るからそこは心配しないでくれ」
ルージュがそう言ってきて幼馴染二人とエルも頷いてきてくれたのでそこは安心する。
そして、冒険者ギルドの開いているドアから兜をかぶった騎士が中に入ってくる。
「しかし薄汚い所ね。もう少しマシな所だと思ったのだけど冒険者ギルドはどの街も変わらないわね」
「そうだな。でもここにローゼリア様の目的の人がいるらしいぞ」
一番前にいる騎士達がそう言って話していると
「お前ら整列をしないか! 今からローゼリア様が中に入られるのだぞ」
「「すみません」」
その威厳がある声で、さっきの喋っていた騎士と、他の騎士が左右に分かれて列を作って敬礼を始めた。
そして、威厳がある声を出して騎士が俺の方に近づいてきて兜を取った後、俺の方を見てくる。
「久しぶりですねハルヤ殿。前のゴブリン戦の時は回復魔法の治療ありがとうございます。今回は違う件でロートスにきました」
「確かローゼと近くにいた騎士の方ですよね」
「そうです。自分の名前はキズードです。今も変わらずこの部隊の隊長をしています」
そう言って手を差し出してきたので俺も手を出すと力強く握手された。
そうやってしていると、入り口から二人の女性が入ってくる。
一人は俺の事を主君と言う青色の髪色をした女性、もう一人は茶髪の筋肉質で身長は俺と同じくらいの女性が近づいてきた。
「ここがロートスの冒険者ギルドか、結構しっかりした建物に見えるな」
なんか、レイナやルージュに似ているような気がする……。
そう思っているとその女性と目が合う。
「なる程、お前がローゼリア様の主君であっているか?」
と言ってきた後、ローゼがその女性の頭を魔力の込めたグーで殴る。
ゴンと鈍い音がした後、茶髪の女性は頭を押さえながらしゃがみこんでいる。
「主君には丁寧に喋ってと、前に言ったはずよね」
ローゼがかなり低い声でそう話しながら威圧している。
「俺は貴族でもなんでもないから気にしてないぞ」
「主君。そうやって甘やかすと彼女のためにならないですよ」
「まぁ、その辺はそちらの教育だから何も言わないけど、話が進まないから指導は後にしてもらってもいいか?」
「わかりました。後でシメておくので今は我慢しますね」
なんかローゼが怖いが一応何とかなったので、新しく作られた貴族の館に俺達とギルド長達は行く事になった。
そして、俺達はローゼと同じ馬車に乗り領主の館に向かう事になり俺達は自己紹介をした後、茶髪の女性の自己紹介を聞く。
「オレはテルメア・クートン、歳は今年で二十歳で、この街の新しい国軍の支部長で子爵令嬢だ。ただオレは戦いが好きで戦場とかダンジョンで戦闘を楽しんでいる。武器は片手剣二本の双剣で魔法は土魔法が使えるからよろしくな」
「主君。このバカは脳筋て到底支部長が出来るとは思えないですが、なんだかんだ働くので何とかなると思います。ただ書類整理とかは無理ですが……」
「じゃあ、何でこの街の支部長になったんだ?」
正直、凄い心配なのだが。
そう思っていると
「それは、元々我がソーラント領の貴族の割合は男性よりも女性の方が人数的に多くて、さらにテルメアはこの性格なので嫁の貰い手がないからですね。後、戦場で活躍したので何故か問題が多いロートスの街の国軍の支部長にしようという話になりました」
「そうなんだな。でも能力があるなら他の貴族の騎士団とかの隊長をしてそうだが」
「それは断る。オレはあんな規律がガチガチな所にいると精神がおかしくなるから無理だ」
なる程、確かにそうなるか。
そう思っていると
「それより男なのにひ弱そうな身体をしているなお前。オレが一から鍛えてやろうか?」
「断固拒否する。俺は雑貨屋で商人だから鍛えなくても大丈夫だ」
その言葉に
「お前、商人だったのか!? ローゼリア様や騎士からは凄腕の回復魔法と聞いていたが間違いか?」
やっぱりそうなるよな。
そう考えていると
「ハルヤ君は本職が商人だけど、副業で回復魔法使いをしているんだよ。しかもその腕は王都の神官達よりも上だから凄いよ」
「そうですね。主君はワタシや騎士達を何回も助けてくれたのて間違ってないわよ」
まぁ、なんか面倒な事になってきたなと思う。
すると、テルメアはおもむろにナイフを取り出して自分の左腕を切りつけた。
「ちょっ!? 何をやっているのテルメア」
「これで灰髪のお前の力を見れるな。本当に凄腕ならすぐに治せるよな」
こんな事が前にもあったような気がするなと思いつつ、俺は回復魔法第二階を使う。
そして腕のキズが治っていき元に戻る。
少しして、いつもの如く驚いた反応をされたので放置しておく。
それから色々言われたが全部断って、俺はゆっくり生活をしたい趣旨を伝えると何とか引いてくれた。
それから馬車は貴族の館に着いて本格的な話し合いが始まる。




