休日出勤と少女達の戦闘
あれから俺達三人は、なんとかドアの代わりの物を探して応急処置をする。
その後、冒険者ギルドに向かう事になったので歩くが、結構時間がかかってしまうが、なんとか冒険者ギルドに到着したので中に入る。
すると、ギルド職員が大量の冒険者の相手をしている時に来てしまったのて、少し端に行こうと思う。
だが、他の冒険者達やギルド職員に見つけられて、ある事を言われる。
「おう、回復魔法使いのにいちゃん。今日は休みと聞いていたがおれ達のためにきてくれたのか。ありがとうな、それじゃあ治療してもらおうか」
うん、やっぱりなと思う。
俺は、今回は違うと言いたかったが、その前に連れて行かれる。
その光景を見た二人は、俺に手を合わせて来たので、俺は若干キレながら睨みつけた。
その後、治療所(仮)に座らされ、一人一人列を作り俺の前に並んだ。
ただ中には列の横入りとかがあって喧嘩になったので、ギルド職員で比較的手が空いている人が、俺の横に立ち集金を始めたり列の管理をし始めた。
あのな、回復魔法は使い慣れているからまだしも、こんなに対応した事はあまりないからな。
そう考えつつ、列を見るとかなりの人が並んでいるため、いつ終わるんだと思いながら回復魔法をかけ続ける。
結局百人以上を治療した後、やっとの事で冒険者達の治療を終わらせて二人の元に行く。
ただ、レイナとエルはメルさんと三人で座りながらお茶を飲んでいたので、その光景をみた俺はイラッとして二人の頭を叩いた。
『いたっ、なんで叩くんだよ』
と二人がほぼ同じセリフで抗議して来たので
「お前らが無理矢理連れて来たからな。俺は正直言うが帰りたかったし、かなり大変だったからな!」
と言って、黙らせる事に成功。
二人が少し引いていて、その状況を見ていたメルさんがまぁまぁと言い俺を抑えてくる。
仕方がないのでなんとか抑えると、俺の横に立っていたギルド職員の人が俺に報酬が入った袋を持ってくる。
(ちなみに、取り分は俺が七でギルドが三である)
俺は、その袋の中身を見てかなりの金額が入っていたのでまだよかったと思った。(それと同時に雑貨屋で1日働いた時よりも普通に多かったので凹む)
そして、よくよく二人を見ると、さっきまでケンカしていたのになんで仲良くなっているんだよ!?
「いやさ、最初はあれだったけど、喋ってみると案外いい奴だなとわかって、いつのまにかメルさんと三人で話していたからな。あと、一人で働いている時にごめんな」
「そうだね。意外とボク達似た者同士かもしれないね。あと、お疲れ様」
うん、もう一度叩いてもいいよな。
そう思って、もう一度叩こうとした時、またしてもメルさんに止められた。
「ハルヤくん気持ちはわかるけど、二人とも暇でやることがなかったからこうして私も交えてゆっくり交流の場を作ったのよ」
そのことを聞いた俺は「そうですか」としか言えなくなる。
俺は確かに交流の場は大事だなと思っていた時、エルが急に立つ。
「あのさ、ボクの用心棒の件はどうすればいいんだ」
知るかそんな事と突っ込みたかったが何とか抑える。
レイナもそのことを思い出したみたいで
「そうだな私かエル、どちらがハルヤの用心棒にふさわしいか戦う手はずだったな」
と言い、二人は目を合わせた。
メルさんが
「今日は、ハルヤくんが休日出勤のためについてきた訳ではなかったのね」
と俺の方を見てくる。
「そんなこと頼んでないのに、いつのまにかこうなりました。あと、休日出勤とは言わないでください。辛くなってきます」
と憂鬱になりながらメルさんに話す。
すると、たまたまギルドの受付の所に居たギルド長のゴリマッチョなオッサンことソルの叔父さん、ドンガスさんが二人の声が聞こえたのかこちらにきた。
「なるほどな、前回のイレギュラー魔物(赤オーガ)の時に大活躍したハルヤ君の取り合いか、戦うなら練習場だな。今は誰も使ってないから空いてるぞ」
何故そうやって言ってくるかな……。
俺は頭を抱えていると、そのことを聞いた二人はダッシュで向かって行った。
それを見て、レイナはともかくエルは場所を知っているのか? と思ってしまう。
それはさておき、俺とメルさんとドンガスさんの三人も、歩きながら練習場に向かって行く。
そして、無事に練習場に着き、周りを見てみるとかなりの広さの空間になっており、壁には所々傷付いた場所もあった。
俺は二人を探していると、練習場の中心で何処からか持ってきた木剣を振りながら準備運動をしていた。
準備が早いなと思いつつ観察していると、ギルド長が言葉を発してきた。
「黒髪の嬢ちゃんの剣の振り方は騎士とかが使う、型が出来ている剣に自分のオリジナルを入れた物だな。対するレイナちゃんは実戦で培った剣の振り方だな」
そうなんですねと思い見ていたが、ギルド長は二人を見てそう感じたみたいだな。
それから少し時間が経ち、二人の準備運動が終わりギルド長を呼んだ。
「ギルド長すみません、審判を任せてもいいですか?」
レイナがそう言ったので、ギルド長が「もちろんだ」と言い二人の間に立った。
後、俺とメルさんは少し離れた所で観戦することになった。
そして、ギルド長がルールの説明を始める。
「今回は魔法なしの物理勝負だ。どちらかが戦闘不能になるか降参するまで戦うことになるがいいな」
そう説明し二人が『もちろんです』と声を合わせた。
その説明を聞いた二人は、互いに剣を構えていつでも攻撃出来るようにしている。
それを見たギルド長が「はじめ!」と言い二人の戦いが始まった。
先に仕掛けたのはレイナだ。
剣を両手で持ち真上から渾身の力で振り下ろす。
しかし、エルも剣を両手持ちにしてその攻撃を真っ向から受け止める。
二人は鍔迫り合いになり、互いに力を込めているがほぼ拮抗している。
「なる程、結構力が強いんだね」
エルがレイナを挑発した。
それに対しレイナが
「お前こそかなり強いな」
と言い二人は、鍔迫り合いをやめバックステップを踏む。
そして、一定の距離を取りまた剣を構える。
俺が見ている限りほぼ互角に見える。
そう見ていると次はエルが、剣をバックバンドに構えて横薙ぎしようとする。でも、レイナがガッチリと受け止めた。
だがそれは想定内だったらしく、すぐに剣を離しさっきより軽い連続攻撃を仕掛ける。
その連続攻撃を捌けず、レイナは急所は外れているが何回か被弾してしまう。
だが、レイナもただではやられていない、エルの連続攻撃の隙をつき、反撃をこちらも直撃ではないが何回か攻撃を当てた。
そして二人の攻撃が、タイミングよく相手の腰に当たって両者の表情が変わり、また一旦距離をとった。
「ほんと、一個一個の攻撃はそこまで重くないけど、私より剣を振るスピードが早いから捌き切れない」
「レイナは逆に剣のスピードはそこまで早くないけど、攻撃がボクより重いから結果的には、ほぼ同じくらい消耗している」
二人は、息を整えながら喋っている。
そして、俺はその戦いを見て治療することになるよなと思いながら見ている。
横にいるメルさんは
「あの二人なかなかいい勝負しているわね。この戦いを見ていると久しぶりに私も剣で戦いたくなるわね」
と言っていた。
俺は、貴女も元々戦っていたんですねと聞きたかったけど、聞ける雰囲気ではないので黙っておく。
少しして、息を整えた二人のうち先にレイナが言葉を発した。
「あのさ、剣を使わず拳で語らないか」
その事にエルが言葉を返す。
「いいよ。ボクもちょうどそう思っていたからね」
そう言って木剣を地面に置いて、二人は拳を振りかぶり殴り合った。
まず、二人は顔面にほぼ同じタイミングで右ストレートを放ち、そしてどちらとも思いっきりクリーンヒットした。
次にレイナがジャブを放ち攻撃するが、エルがなんとかガードして、反撃の左アッパーを放つがギリギリかわす。
二人は拳だけではなく蹴りや頭突きなどを織り交ぜ、見ている俺は最早ケンカみたいになったと思った。
そして、二人はボロボロでフラフラになりながらも最後の渾身の右ストレートを放ち、またしても二人に直撃して同じタイミングで倒れた。
そしてギルド長が手を上げ
「この勝負引き分け」
と言って、戦いは終わった。
その声を聞いて、俺はすぐにボロボロになった二人に回復魔法をかけた。
そしてメルさんが呼んできた女性のギルド職員が、担架を持ってきて二人を治療室に運ぶ。
そのあと俺は、気絶している二人を見ながら、なんでガチンコ勝負になったんだよ剣で戦えと突っ込んだが、これはこれでいいなと思った。
だが、このことがきっかけで、別の問題が発生することになろうとは今の俺達は思ってもいなかった……。
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