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行き倒れの少女

 俺は今、あるとんでもない状況を見ている。


 そして、何故こんな事になったのかを少し前から思い出してみる。


 発端はエル(エルティアナ)と名乗るボクっ娘が


「もっとご飯を食べたいけどいいかな」


 と言ってきた事である。

 

 その事を聞いた俺は、仕方がないので財布の中身をみて、一人三千パルの食べ放題がある食堂に向うことにした。


 俺はコイツは幼馴染と同じく、絶対大食いだから財布が空になるまで食われそうだと思いそう決めた。

(そして、その予感は大当たりする)


 特に問題が起きず、食べ放題店に入り席に案内された後にメニューを渡され、俺は二人分の食べ放題のセットを頼み、先にお金を払う仕組みなので六千パル払い、食べ放題の時間設定である砂時計を置かれて始まった。


 すると、エルがメニューを見たあと大量に注文し始めたのだ。

 

 俺は、食べきれなかった時の追加料金が発生する事を考えて止めようとしたが、それ無視して注文してしまう。


 流石に、この状況はマズイので止めようとするが


「おい、なんであれだけ注文するんだよ。食べきれなかった時どうするんだ!」

 

 俺は、焦りながらそう言う。


 すると

 

「大丈夫だよ、ボクはこう見えても大食感だから余裕で食べきれると思うよ」


 と自信満々に言ってきた。


 俺はどうなっても知らんぞと思いながら、自分が頼んだクリームパスタを待つ事にする。


 そして、テーブルの上には大量のパスタやピザなどやガッツリした肉系が大量に乗せられた。

 

 俺は、その光景を見ただけでお腹いっぱいになりそうになり、自分のクリームパスタを黙々と食べていく。


 少しして、ふとエルの方を見てみるとすでにパスタとピザが何皿か無くなっているではないか。


 俺は、その光景にビックリすると、さらにエルが追加注文していった。


 それを見て、ここにきて良かったと思ってしまう。


 そして、クリームパスタが食べ終わって、食後のコーヒーを飲んでいる俺の目の前には、大量の皿が積み重なっていた。

 

 他の人や店員さんの目が点になりながらも、それを気にせずまだ大量に食べているため、食堂とかに連れて行かなくてよかったと感じる。


 その後、砂時計の砂が全部落ちて注文がストップした時には、テーブルに乗り切らないほどの量の皿が積み重なっていた。

 

 途中までは店員さんが皿を厨房に持って行っていたが、それが間に合わずついには隣のテーブルに置きたしたらこのザマだ。


 この大量の料理を食べた張本人は、背もたれのあるイスにもたれかかり、優雅にコーヒーを飲んでいた。


「お前、よくこんな大量の料理を食べきれたな。正直どう言葉にすればいいかわからない」


 俺は、皿を見ながらそう言う。


「言ったはずだよ、これくらいならボクは軽く食べきれると」

 

 その事に、コーヒーを飲み終え腹をさすりながらエルが話してくる。


「しかし、ほんとここにきてよかった。食べ放題じゃなかったら、今頃会計が確実に大変な事になっていると思うからな」


 俺は、店員さんの驚いた視線を受けながらそう発言する。


「ボクも、久しぶりにお腹いっぱいまで食べることが出来たからありがとう」


 エルは、俺に向かって頭を下げてくる。


「お礼は俺より、この大量の料理を作った料理人の人や、運んできた店員さんに言う方がいいと思うぞ」


 そしたら、エルが頭を上げてきて俺の方をジッと見てきたので

 

「俺の顔に何か付いているか?」


 と聞くと今度はエルの方が驚く。


「今気づいたけど、相当な魔力を持っているね。正直王都の近衛魔法師団の上位の実力者よりも多いかもしれないよ」


「そうか、でも別に魔力のことはどうでもいいけどな。後、自己紹介を忘れていたな、俺はハルヤ、この街の雑貨屋の店員兼商人をしている、改めてよろしくな」


「うん、よろしく。後もう一つ頼みがあるけどいいかな?」


 何故か、エルが遠慮がちに聞いてくる。


「もしかして、泊まるところがないから俺の家に行ってもいいかと聞きたいのか?」


 俺がそう聞くと、エルがなんでわかったのという顔になった。


 なので、その事がわかったのかの説明を始める。


「路銀がないのは知っている。なら今日の泊まる場所はどうするかと考えるとそこに行きつく。でも、断わる。流石にそこまで面倒は見きれないからな」


 俺がそう言うと、エルが捨てられたペットのようになった。


「ハルヤ君は冷たいね。ボクは路銀が無くて困っているのになんでそんなひどいこと言うの?」

 

 あれだけ人の金でご飯をそれを言うか……。


「別に俺の家に泊めないだけで一般の宿ならお金を払って一日くらいは泊まれるようにする。それに冒険者ギルドか商業ギルドに行き、日雇いでどっか働いて路銀を稼げばいいと思うが」


「確かにその方法はあるけど、それだと君に恩返し出来ないから困っているんだよ」

 

 ぶっちゃけ恩返しはいらない。


 というか、この面倒な存在を即刻ダストシュートしたいと思っている。


「あのな、俺は国軍や冒険者ギルド、挙げ句の果てには幼馴染に振り回されているのに、さらに面倒ごとが増えるのは流石にやめてほしい」

 

 流石にこれ以上は面倒ごとが増えるのはごめんだ。


 その事を話すとエルは


「ならボクが君の用心棒になってあげる。それなら大丈夫でしょ」

 

 いや、どこも大丈夫じゃないし、どこから用心棒が出てきたんだよ、後それならどう転んでも大変なことになると思うぞ。


 そう考えていると、エルが立ち上がった後、俺の右腕を掴んでくる。


「ここで話すのはお店の人に迷惑だから君の店に行こう。そこでゆっくり話そうよ」


 確かにそうだが、それなら喫茶店でもよくないかという質問は棄却された。


 そして、不本意ながらエルを俺の店に連れていくことになった。

 

 その時にある事を思う、それは『なんでこうなったんだ』と。


 だが、この事がまだ序章だとは思ってもいなかった。


 食べ放題店から歩き、日も落ち始め夕方になり、やっとの事で俺の家である雑貨屋に着く。


 いつも通り鍵を開けて中に入った。そして付いてきたエルが一言発言した。


「普通な雑貨屋だね」と呟く。


 その反応に俺は


「普通でいいんだよ。俺は平和にほのぼの生きていきたいからな。最近トラブル続きだが……」


 俺達は商品スペースを抜け住居スペースに移動した。

 

 そして、エルはイスに座ったので、俺はお茶を作るためにお湯を沸かす。


「なるほど、意外と設備は整っているんだね」

 

 と周りを見ながら言ってくる。


 そして、少ししてお湯が出来たのでコップに粉末状のお茶の葉を入れてそこに注ぎ一つを渡した。


 エルはありがとうと言いながらお茶の入ったコップを受け取った。

 

 俺も座って二人でゆっくりお茶を飲む。


 そしてゆっくりしていると、いきなり扉が朝の時同様にガンガンと叩かれた。

 

 俺は、今日は国軍や冒険者ギルドには休みと伝えたから何もないはずだが、と考えているとエルが


「ボクがドアを開けてくるね」

 

 えっ……ちょっと待て。


 と俺が静止する前に行ってしまう。


 そして、少しして何かしらが壊れる音がしたので見に行ってみると木製のドアが破壊されていて、エルと俺の幼馴染の一人であるレイナが睨み合っている所を見て、なんでこうなってしまったんだと思って頭を抱えてしまう。


 俺は破壊されたドアを見ていると、幼馴染のレイナがこいつは誰と言いながら指差していた。


 その問いに


「今日道を歩いていると俺の方に倒れてきた行き倒れ」

 

 と伝える。

 

 するとエルも


「ボクは行き倒れだよ」


 と言い頷く。


 あと、行き倒れに突っ込みを入れたかったが、ややこしくなるのでスルーする事にした。


 しかし、それで全く納得しないのが俺の幼馴染の一人である。


「じゃあ、なんでその行き倒れがハルヤの店の中にいるんだ?」

 

 と聞いてきたのでエルが、


「ボクを用心棒に雇うかどうかを話していたのと、泊まるところがないからここに来たんだよ」


 うん、なんでその事を発言するかなと思う。


 そして、そのことを聞いてレイナが俺の方を睨んできたので


「断ったんだがしつこく言われた挙句こうなった」

 

 と伝えると


「なるほど、つまりは勝手に付いてきたんだな面倒な、あと用心棒なら私がなる。つまりお前には出る幕はない」


 と自信満々に言う。


 すると、エルが


「なら決闘するかい、どっちが強いか白黒つけて勝った方が用心棒に着くのはどう?」


 と言ったのである。


 でも俺はドアの惨劇をみて


「いやいや、用心棒はいらないからお前らさっさとドアをなんとかしろ」


 と二人にキレたがそのことを全く聞いてない二人は


「わかった相手になってやる」「そうこないとね」


 とやる気満々になっていた。


 その状況をみて、俺はもう一度思った。

 

 なんでこうなったんだと……。









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― 新着の感想 ―
[良い点] さて、何故かしら勝手にパーティー組まれそうな感じで、このままだと前衛に引っ張ってかれそうなお膳立て、すさまじいですね。 [気になる点] 食べ放題、おいしそうな描写でした。
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