エクジス工房の親方マルグ
その後は、特に問題は起きずにゴズスさんに案内されて、目的地のエグジス工房に到着する。
「ここが工房なんですね。ザ・老舗感がある大きな建物に見えますね」
俺は、ゴズスさんにそう言うと、頷いている。
「そうですね。確か百年は経っている老舗ですよ。後この工房には弟子も結構いますが、親方は厳しくも優しい頑固な方なので難しいですが、上手くいけば加工をしてくれると思います」
なる程、俺も雑貨屋の店員で商人だ。
物理的戦いは無理だが、交渉ならまだ何とかなりそうだ。
そう思いつつ俺は、ドアに手をかけようとした時にある事を思う。
「そういえば、レイナ達の装備の新調は結局どうしたんだ?」
俺がそう聞くと口を開いたのはソルだ。
「それは鉱石は安かったけど、わたし達にはツテがないのとミスリルを取りに行くことが出来なかったわ」
そう言って来て、暗い表情になっている。
俺はどうすれば良いかを悩んでいると、ルージュがある事を言う。
「ダンナ少し良いか? 俺様達が取ってきたミスリルをコイツらに分けないか。そうすれば装備もいいもんになると思うぜ」
確かにそれはいいが、流石に幼馴染とはいえ、そんな簡単に渡しても大丈夫なのかと考えていると
「それなら、ミスリルの事はボク達の借りにするね。ハルヤ君達がなんか困った時に助けるのでどう」
いや、エルお前は俺に借りを作りまくっているよね。
そう突っ込みたかったけど、何とか言葉を押さえ込む。
「まあ、私とソルはハルヤに数え切れないほど借りがあるから、今更一つ増えた所でそこまで気にならないぞ」
レイナがそうぶっちゃける。
俺は色々言いたくなったけど考えた結果、戦力が上がるならいいかなと思いある事を言う。
「わかった。俺達が取ってきたミスリルを使って装備を作成してもいいぞ。ただ素材は出すが製作費は自分で出せよ」
そう言うと三人が固まる。
「えっと、ハルヤ、実はもう一つ頼みたい事があるけどいいかな?」
「大体予想がつくが一応聞く。もし俺の予想は二つあるので先に言うが一つ目は回復魔法で親方さんを治した時に俺の装備の時に一緒に頼む。二つ目は簡単に言うと金を出してくれ、で合っているか?」
俺がそう言うと、当たりのようで三人が目をそらす。
「流石にそこまでは、主君に迷惑をかけすぎですよ。ミスリルを貰えた分だけでも感謝しないといけないと思うのはワタシだけですか?」
ローゼがそう言いゴズスさん一家も頷く。
「悪いが俺様もこの事に関しては何にも言えないぜ」
そして、ついにはルージュもそう話す。
そう考えていると、いきなり工房のドアが思いっきり開いて、壮年のお爺さんが出て来る。
「なんじゃい、さっきから工房の前で騒いでいる奴は、こっちは腰が痛くて仕方ないのに若いもんは元気でいいのう」
確かに俺達は若いから否定は出来ないな。
そう考えていると、ゴズスさんが俺達の前に出て一礼する。
「お久しぶりです、ゴズスです。今回は師匠の腰を治せそうな回復魔法使いを連れてきたので、一回試してもらってもいいですか?」
あの、俺は一応回復魔法使いだけど本業は雑貨屋の店員で商人ですが……。
そう言いたかったけど、言える雰囲気ではなかったので黙る事にする。
「なる程、ゴズスお主だったのか? 他には何人か連れてきておるようじゃが、誰がその回復魔法使いなのじゃ」
その問いにレイナ達は、俺を指さして来たので思わず呆れてしまう。
でもこのまま何も言わないのも気分が悪くなると思い俺は話すことにする。
「一応自分が副業で回復魔法使いをしているハルヤと言います。本業は商人で雑貨屋の店員をしています」
とりあえず俺はそう言う。
すると、相手の方も挨拶を返してきた。
「わしはこの工房の親方をしているマルグだ。今回きたのはおそらく鉱山から取れた金属を使って装備を作って欲しいと言う事じゃろ。そして、そのために回復魔法使いを連れてきたわけではないかの?」
その事を聞いて殆ど合っているので、俺達は驚く。
「それでしたらすみませんが、腰が悪いとお聞きしましたのでハルヤが回復魔法かけるので、その代わりに今回持ち込んだミスリルでわたし達の装備を作ってはいただけませんか? ちなみにわたしの名前はソルです」
おい、ソル何ちゃっかり便乗しているんだよ! 俺はそう思い、言おうとしたが続けてレイナが口を開く。
「それで、その交換条件で私達の装備を作っていたたけるのですか?」
レイナお前もか……。
俺は幼馴染の行動を見て、頭を抱えたくなってしまう。
そして、その状況を見ていたローゼが俺にある事を話してくる。
「主君、本当に災難ですね。流石にここまでカモられるのはひどいですね」
ローゼお前も大概だぞ、というかカモられると言うな泣けてくるだろ。
「なんじゃ、ハルヤといったか。お主その歳でかなりの苦労をしておるようじゃな。わしからは頑張れとしか言えんが強く生きるのじゃぞ」
その事を聞いて、頑固と聞いていた親方さんに慰められるとは思ってもいなかったぞ。
そう思いふと、周りを見ると通りすがりの人で話を聞いていた人から哀れまれているような気がして来たので俺は本気で泣けて来る。
「そうじゃ、イケメンのにいちゃん達、ここだと迷惑じゃろうし、中にはいらないかの?」
なんか、親方が頑固な人ではなくて優しい方だなと思ってしまう。
そして、俺達はエグジス工房の中に入り、そこそこ広い客室に通される。
「それで、話をまとめるぞ。とりあえずゴズスが連れてきたにいちゃん達はわしの腰を治す対価に、ミスリルを使った装備の作成をして欲しいということであっておるかの?」
「はい一応は、俺はまだ納得はいってはいないですが、このまま言い合いになっても困るのでそれで大丈夫です」
俺はそう言って、嬉しそうな顔をしている幼馴染達を見ると、顔をそらされる事になる。
「あの、それでボク達の装備は作っていただけるのですか?」
今まで、あんまり喋っていなかったエルがそう話す。
「それは、わしの腰が本当に治ったら作ってやっても良いぞ」
あの、聞いていた人とはかなり違うような気がするのですが気のせいですか?
そう考えているとゴズスさんが口を開く
「ハルヤさん。師匠は頑固な所もありますが大体はこんな感じですよ。だから見てもらったほうが早いと言ったのですよ」
「そうなんですね。でも自分の回復魔法で腰が治るかは分からないですよ」
俺は素直にそう言う。
すると、その事に横にいたエルがある事を喋ってきた。
「でもハルヤ君。最初に出会った時よりもとんでもなく魔力が上がっているから、これで無理ならもう本職でもほぼ無理じゃないかな」
オイィ、それをここで言うな、面倒な事になるだろ。
「確かにダンナは、俺様の大怪我も簡単に治せたから爺さんの腰を治すなんて朝飯前だと思うぜ」
ルージュ、お前までそれを言ってくるか……。
「なら一回ここでかけてもらってもよいかの? 腰が痛くて仕事にも集中できないレベルじゃからな」
俺が考えている時に、マルグさんがそう話してくる。
それを聞いたレイナ達はこちらを見て来たので、俺は目つきを鋭くして睨む。
そして、こいつらにどう仕返しをしようか悩むがとりあえず回復魔法を使う事にする。
「それでは回復魔法をかけるので、タイミングはいいですか?」
そう聞くとマルグさんは
「大丈夫じゃぞ」
と言ったので回復魔法を発動する事になった。
「それでは.回復魔法第三階」
俺はそう言い、回復魔法が発動して、光がおさまるとマルグさんは腰を確認している。
「なる程、腰が痛く無くなったわい。ゴズスが呼んで来たのは本当に回復魔法使いだったのじゃな」
「あの、自分は回復魔法が使えますが、本業は商人で雑貨屋の店員なのでそこは忘れないてもらいたいです」
「なんじゃお主、この回復魔法でかなりのお金が稼げると思うのにそれをせんのか?」
やはりそう聞かれるのはわかっていたので俺は自分のやりたい事を説明する。
すると
「そうか、面倒ごとに巻き込まれたくないのと、静かに暮らしたいから副業にしてあるのじゃな」
と笑いながらそう言われる。
その後、色々話した結果、装備を作ってもらえる事になったのでこれでなんとかなったなと思う。
そして、装備の事で相談が始まる。




