ゴズス工房での話し合い
俺達はコズス工房の中に入り、ライムの家族や弟子達が無事なのを確認した後、前と同じ部屋に通され相談が始まる。
「それでは話し合いを始めます。司会はワタシ、ローゼリア・ソーラントが取ります。皆さまよろしくお願いします」
そう言って、ローゼが一礼する。
「ソーラント様、自分達はただの平民ですよ。そんなにかしこまらなくても大丈夫ですので」
相手が辺境伯令嬢だと知った主人のゴズスさんが焦ってそう言ったが
「いえ、主君もおられますし、ワタシもこの話し方で進めます」
やはりそうなるか。
俺はそう考えていると、ライムがある事をローゼに質問する。
「あの、一つ聞きたいのですがいいですか? 何故ソーラント様は、ハルヤさんの事を主君と呼んでいらっしゃるのですか?」
うん、やはりその事を聞いて来るか。
しかし、どう話そうと。今回の件は金貸し屋と国軍、そして鉱山の事がメインでこの話は全く関係ないよな。
「なあダンナ、それは俺様も気になっていた事だ。何故ローゼという権力者が、知り合いどころか従者みたいになっているんだ?」
「ルージュ、お前までも聞いてくるか……。 ローゼ、前みたいに話してもいいか?」
「全然大丈夫ですよ。 ここにいる方は関係者の方々ですからね」
確かにそうだが、そうホイホイ言う物でも無いと思うのだが……。
まあ、そこはもう考えないようにするか。
俺は、ローゼとの関係をここにいる人達に説明する。
すると、
「なる程、ダンナは昔から優しかったんだな。今は若干捻くれている所もあるが、俺様も助けられたのはローゼと似ているな」
ルージュは、そう言って頷く。
確かにそうだよな。
形は違うが、ローゼもルージュも回復魔法で助けたのは同じだからな。
「そういえばルージュ、貴方は何故、主君の事をダンナと呼んでいるのですか?」
まて、それはヤバイ。ルージュの正体が知られたら大変な事になる。
「あ〜、それはダンナから説明するぜ。俺様はそう言うの得意ではないからな」
……。ルージュ、グッジョブだ。
よかった、これでなんとかなるはずだ。
そう思い、ルージュを見ると俺の方に頷いてくる。
そして、俺は喋ろうとした時にライムが質問してくる。
「あの、ハルヤさんとルージュさんは長い付き合いではないのですか? いつも一緒の部屋で寝ていたからてっきり僕はそう思っていたのですが」
こっちの方が爆弾を投げて来た。
だが大丈夫だ。ローゼはこの事を知っているから何とかなる。
そう思い今度はローゼを見ると、俺の方に何かを訴える目線になっている。
うん、なんか嫌な予感がする。
俺はとりあえず、ローゼからの目線を逸らす。
「まあ、かなり説明が長くなるが大丈夫か?」
俺は、一応確認を取る為にここにいる人達にそう聞く。
だが、出来ればこの事はスルーして欲しいのだが、残念ながら皆さん頷き大丈夫と言ってくる。
あの、いつになったら本題に入れるのかと思ってしまうが、それを言える雰囲気ではないので話す事にした。
「これは少し前の事だ。俺は元々ロートスの街で育ての親の爺さんから受け継いだ雑貨屋の店員だ。だが、回復魔法の適正があって色々な問題に巻き込まれてしまっていた」
そう言ってローゼを見たが、プイッと可愛らしく視線を逸らされる。
俺は半目でローゼを見ながら話を続ける。
「そして少し前にロートスの街に一万を超えるゴブリンの大群が発生して、俺はそれに駆り出されていたんだ」
「ダンナ、なんでその事を俺様に言ってくれなかったんだ。俺様がいたらそんな奴ら簡単に圧倒できると思うぜ」
確かにそうだが、面倒になりそうだしドラゴン娘は黙っていろ。
「そんな事があったんですね。もしスートルにも同じ事が起きたら大変な事になっていましたね」
ロートスでも大変でしたが!?
俺は、そう突っ込みをしたかったが、何とか言葉を飲み込む。
「まあ、話を続けるぞ。とりあえずゴブリンの事は何とか片付いたのだけど、国軍の上層部がかなり腐敗していたらしくて、それでソーラント辺境伯の個人の騎士達と、国軍がきて問題解決に当たっていたんだ」
「それがワタシ達ですね。まさか、あんな事になっているとは思ってもいなかったです」
そりゃそうだろうな、俺だって聞いた時は驚いたぞ。
その事を思い出しため息を吐く。
「すまないが、ここの話は一旦置いておくな。その後、俺は商品が品薄になったから他の街で近い所に買いに行こうと思って、幼馴染の冒険者達もこの街で装備を整える為に、行きたいと言っていたからスートルに来る事にしたんだ」
「そうなんですね。でも鉱山しかないのであまり雑貨屋の商品に向いているとは思いませんが……」
まあ、普通はそう考えるよな。でもここには何かあると思ったから行く事に決めたからな。
「俺はスートルに行く事がなかったから、一回行ってみたいなと思ったのと、幼馴染達も装備の新調でちょうど良かったからここに向かう事にしたんだ」
「後、ワタシ個人がレアな鉱石、ミスリルが取れたのを聞いて気になって話したのもあります」
本当はドアを壊されてばっかりだから、いい加減凄く頑丈な素材で作りたいと思っていたのが一番だけどな。
「それで馬車と運転手さんを雇ってスートルに向かおうと思ったんだけど、途中で変な声が聞こえて来て、気になって行ってみたらボロボロの人が倒れていた」
俺はルージュを見ながらそう言う。
「それが、俺様だ」
ルージュは、何故か自身満々に発言して来たので
「あのな、森で倒れていた奴が自信満々に言うことか?」
そう、突っ込みをさせてもらう。
「うぐっ、それを言われると辛いな。まあ、でも俺様はダンナの回復魔法で生きる事が出来たからな。それで俺様は一生人生をかけて守ると決めた」
よかった。
契約者の説明や、俺が使えるようになってしまった竜魔法の事とかを黙っていてくれて。
「まあ、そんな事があって俺の護衛になってくれたんだ。その後、何とか街について俺は商業ギルドに行き、幼馴染達は冒険者ギルドに分かれて行動したんだ」
「なる程、だからレイナ達と一緒に居なかったのですね。でも、結局鉱山に行く事になったから誘っても良かったと思いますが」
「確かにそうなんだが、よくわからない男爵令嬢様に絡まれたり工房の件で、そこまで頭が回らなかったんだよ」
まあ、こればっかりは仕方ないなと思いつつ話を続ける。
「まあ、そこは置いておき、商業ギルドでポーションを売り、その金で何を買おうかカタログを見ていたら面倒な人が絡んできてな。その問題自体はローゼのおかげで解決して何とかなったからよかったけどな」
「まさか、こんな事になるとは思ってもいなかったからな。でも主君には何もなくてよかったです」
ローゼはそう言って頷いてくる。
俺も、ローゼがいなかったら、どうなっていたかわからないからよかったと思う。
「まあ、その時は問題が片付いたからよかったけど、その次にライムから鉱山に行く方ですか? と声をかけられるとは思ってもいなかったからな」
「僕もまさか、このタイミングでお願いする事が出来るとは思ってもいなかったですからね。でもかなり追い込まれていたのでかなりの賭けでしたけどね」
ライムは嬉しそうに笑っている。
「ほんと、私達を助けていただきありがとうございます」
ゴズスさんとロールさん夫婦が頭を下げて来たので
「いえ、こちらもライムの物質鑑定のスキルでミスリルを見つける事ができたので良かったです」
俺も頭を下げてお礼を言う。
そして、まだまだ話しは続いていく。




