金貸し屋シルード
朝が来て今日はルージュに抱きつかれずに起きれたなと思いつつ、横のベッドにいるルージュを起こさないように身支度をする。
すると、用意が終わってベッドに座っていると、ルージュが目を覚ましたみたいで、体を起こし何かを探しているみたいに左右を見る。
「ダンナは何処だ?」
そう完璧に寝ぼけつつ俺を見つけると、予想通り飛び込んできたのでなんとか躱す。
そして、起き上がってきたルージュは俺の方を見ながら文句を言って来る。
「ダンナ、なんで躱すんだよ。ここは熱く受け止めてくれる所だと思うぜ」
そう文句を言ってくるが、スルーする。
「それよりも、今日は早めに工房に行かないと何か嫌な予感がするから行きたいんだがいいか?」
そう言ってベッドに倒れていたルージュを起こす
しかし、なんでこんな嫌な予感がしているんだと考えていると、ドアがノックされてライムの声がしてくる。
「ハルヤさん、ルージュさん起きていますか? そろそろ、朝ごはんを食べて工房に向かいたいのですがいいですか」
俺は
「少し待っていてくれ」
と言いルージュの準備をさせて(着替えている間は部屋の外に出る)をして用意は終わったので工房に向かう事にする。
そして、途中でハムサンドを買い食いして、俺達三人はゴズス工房に向かうために歩く。
「しかしダンナ、ローゼが無事で良かったな。もしかすると金貸し屋の奴らに拐われたりする可能性もあったと思うぜ」
「そうですね。金貸し屋シルードはこの街でも権力が強いので、強い荒くれ者も沢山いる話ですよ」
ライムも心配しながら、そう言ってくる。
「それは大丈夫だと思うぞ。確かに数で押し切られる事もあるかもしれないが、前に見た感じではそんな事なかったし、後アイツは騎士の訓練もかなり受けてきていると思うから、そう簡単に負けないと俺は思っている」
俺は、そう言って安心させる。
それから、工房がある場所の近くまで歩いてくると、また何か騒がしい声が聞こえてくる。
「ダンナ、工房の方から聞こえてくるぞ。もしかして戦闘が起こっているがもしれないぜ」
「予想はしていたけどやっぱりこうなっていたか。そうなったらやる事は一つ。ルージュは援護、ライムは俺の近くにいてくれ」
「わかりました。ルージュさん工房の事よろしくお願いします」
「了解だぜ」
と言って、ルージュは工房の方に物凄いスピードで走って行く。
それを見ていたライムは
「ハルヤさん、ルージュさん本当に何者でしょうか?」
流石に正体がドラゴンとは言えずに、俺はスルーし、走って追いかける。
そして、俺とライムが工房の前に着くと衝撃的な光景が広がっていた。
それは、国軍の兵士が百人以上、道端に倒れていたからである。
「この人達国軍の兵士ですよね。なんでこんなに倒れているのでしょうか?」
「それはわからない。もしかしたらローゼ達を捕まえにきたのか? それとも金貸し屋シルードの構成員の引き渡しできたのかもしれないな」
そう言いながら、工房に着くとローゼと騎士の二人、そしてルージュがシルードの構成員のチンピラみたいなのと国軍の人達を全員倒している。
ローゼ達は、座り込みながら俺達を見つけにっこり笑ってくる。
「主君、こっちは大変でした。まさか国軍までワタシたちを襲撃してくるとは思ってもいなかったので、ここもロートスと同じくかなりの腐敗があるようです」
俺は、ローゼや騎士の怪我を回復魔法で治しながらその事を聞く。
「なる程、やっぱり辺境だから監視の目が届きにくい事をいい事に好き勝手やっていたんだな。ローゼ達はこれ以上被害はないか?」
「大丈夫です。ルージュが来てくれて一掃してくれたので。あと、我がソーラント領の辺境の街がこんな腐敗だらけとは全く知らなかったですね。一回辺境の街を調査した方がいいですね」
「俺様もここの街もあまり好きではないから、粉々に破壊してやろうと思ったほどだぜ」
うん、あんだけ店を潰すレベルの大量の飯を食いながらよくそんな事言えるな。
そう考えつつ、国軍の中でも隊長格みたいな人が地面に這いつくばりながら何かを言ってくる。
「我々は国軍だぞ。こんな事をしてただで済むと思うか? 貴様らみたいなゴミどもはさっさと死んで金を残していけばいいんだよ」
お前ら、相手をよく見た方がいいと思うぞ。
その事を聞いたローゼは
「本当になんですかここは、治安を維持する国軍がこんな人達とは思ってもいなかったです。これではロートスと同じ、いやそれ以上かもしれないですね」
「本当になんで今回もこんな事になるんだ……。 前回も似たような事があったから、他の街ならマシかなと思っていたけど結局はこれか」
俺は頭を抱えつつそう話す。
すると、いかにも悪趣味な豪華な馬車がこちらにきて止まった。
それて、中からいかにも悪徳商人ですよ、という風格の太ったオッサンが中から出て来る。
「なんだこの状況は、工房がつぶれないと聞いていて来てみたら、我がシルードの構成員と国軍が倒れているではないか。貴様らただで済むとは思うなよ」
やはり小物だな。
後、知らないとはいえ辺境伯令嬢を相手に権力を使ってくる平民がいるとはコイツはバカなのかと思う。
そう考えていると、さらに国軍の援軍とみられる方々がこちらに来たので
「国軍の援軍か、これだけいればコイツらを殺せるな。さっさと男は殺して女は奴隷として売り払え。これだけ美人なら高く売れる」
悪徳商人のオッサンはそう言ったが、新しく来た国軍の兵士達は動かなかった。
そして、その中から隊長格の騎士が出てきてローゼの前に向かう。
「ローゼリア様、我々ソーラント辺境伯領支部の騎士と兵士、今到着しました。依頼されていた金貸し屋シルードの不正も大量に発見し、さらにこの街の国軍にも賄賂などを大量に渡し犯罪を見過ごしていた書類も残っております」
その事を聞いた、悪徳商人のオッサンは何事かと言い出す。
「なんでこんな所にソーラント辺境伯領支部の兵士たちが来ているんだ!? スートルの街の国軍はワシが買収して細工しろと言い辺境伯領の国軍にはバレないようにしていたのに」
うん、何でこの人はこんなペラペラ情報を喋るのだろう。
そう考えていると、ローゼお付きの騎士が答えた。
「それはここにいる青髪ツインテールのお方こそ、ソーラント辺境伯様の長女、ローゼリア・ソーラント様その人だからだ」
おい、それを言っても大丈夫なのか?
その言葉を聞いた人達は固まり、ライムは俺に慌てて聞いてくる。
「ハルヤさん。もしかしてローゼさんの正体を知っていたんですね。なぜ僕には教えてくれなかったのですか?」
「それは、聞かれなかったからだ。あと、あまり権力で解決すると面倒なのは知っているから、今回こうなっただけだ」
俺は、ライムを見ながらそう言う。
そして、いつのまにか俺の隣にルージュが護衛に来てくれた。
「なる程、この為にローゼを呼んだんだな。ダンナは色々考えているんだな」
まあな、面倒ごとはどうやって攻略するか大切だからな。
そう考えていると、悪徳貴族が馬車に乗ろうとして逃げ出そうとしている。
「こんなの嘘だ。ワシは嫌な夢を見ているだけだ。お前らはさっさと消えてくれ」
だが、乗る前にソーラント支部の国軍の兵士がアッサリ地面に叩きつけて意識を奪った。
「しかし、ここもロートスと同じく腐敗しているとは思ってもいなかったです」
隊長格の人は、そう言って倒れているチンピラとスートルの国軍の兵士を馬車に放り込んでいく。
そして、回収が終わったら隊長格さんが俺たちに敬礼してチンピラ達を連れて行く。
「なんか簡単に問題が片付きすぎて、何か他にもありそうだよな」
俺はそう考えて、何かなかったかを悩む。
「そういえば主君。鉱山が大変なことになっているとお聞きしましたが何があったのですか?」
そういえば、それを忘れていた!?
俺は、その事などを話すため工房に入ることにした。
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