ゴズス工房
俺達は結局、商業ギルドの相談部屋をもう一度借りて、相談する事になってしまう。
そして
「改めてまして、僕の名前はライムです。親はこの街スートルの工房で働いています。ちなみに、僕はその子供です」
水色の髪をした小柄な少年? がそう話してきたので
「その、工房の子供がワタシ達に何か用があのですか?」
ローゼは不機嫌なので、若干睨みつけながらそう話す。
ライムはその眼光にビビりながらも、深呼吸をして続きを話してくる。
「最初に話した通り、僕の親の工房が悪徳金貸し屋によって潰されそうなんです。そうなったら、僕達は奴隷として売られる事になると言われましたので、助けてください」
「なる程な、でもそれなら国軍に頼ればいいのでは?」
俺が率直にそう言うと、ライムが首を横に振る。
「最初はそうしようとしたのですが、悪徳金貸し屋は国軍に多額の賄賂を渡しているらしくて、全く話を聞いてくれなかったです」
やっぱり、ここも腐敗しているんだな。
そう考えているとローゼが
「証拠はあるのですか? なければワタシ達も動けないですよ」
まさかローゼ、動く気なのか!?
「なぁダンナ、それなら今から殴り込みをかけてぶちのめすのはどうだ? それなら中にある証拠も手に入ると思うぜ」
ルージュ、お前も何でそんな物騒な事を言って来るんだ。
「あの、証拠ならあります。これを見てください、金貸し屋の契約書です。国で定められている金利を軽く超えています」
いや、なんで持っているんだよ!? 俺はそう突っ込みたくなる。
だが、ローゼはある事を喋る。
「悪いがこれでは動けないです。一回工房に行ってみて調査してみてもいいですか?」
その後、色々話し合いをした結果、一回工房に行く事になる。
それから歩いて、ライムの工房がある工房地域に向かうと、何か騒がしい声が聞こえてくる。
なので、通りすがりの人に話を聞くと、ゴズス工房の近くで金貸し屋のチンピラが喧嘩をしていると聞いた時に、ライムがそこは自分の家だと言って走り出す。
それを見た俺達は、通行人にお礼を言ってライムを追いかける。
そして、ライムに追いつき、少し落ち着かせて工房の案内をしてもらう。
少しして、工房に着くとザ・チンピラの男女が作業服を着た人達に殴る蹴るの暴行をしていたので、ローゼは二人の騎士(他の四人は男爵令嬢様を既にソーラントへ連れて行った)と一緒にチンピラを拘束する。
俺とルージュは、ライムと一緒にローゼ達がチンピラを拘束する所を見る。
そして、捕まったチンピラのリーダーぽいモヒカンが何かを言って来た。
「おれ達は金貸し屋シルードの者だぞ。お前ら、こんな事してただで済むと思っているのか?」
うん、ローゼにそれは相手が悪いぞ。
「なる程、やはりここも何かありそうですね。確かにこの辺の治安はあまり良くないとは聞いていましたが、ここまでとは思わなかったです」
ローゼはチンピラを見ながら何かを考えている様だ。
ただ、チンピラと野次馬がうるさいので、なんとかならないかとルージュに聞いでみると
「それなら、俺様が威圧すれば逃げていくんじゃねーか?」
「なら、それを頼む。だが軽くでいいぞ。やり過ぎたらとんでもない事になりそうだからな」(俺は、ルージュの正体が皇帝級のドラゴンだと知っているためそう伝える)
それを聞いたルージュが、少し気合を入れて近くにいる人達を威圧をする。
その時に、俺は少し息苦しくなったが、野次馬やチンピラが気絶したので、これで大丈夫だと思った時にローゼと騎士二人が剣を抜いてガタガタ震えていた。
「今のはなんですか? とんでもない威圧感がしたのですが」
うん、軽くでこうなるとは思ってもいなかったよ。
まだ警戒しているローゼ達に、大丈夫だと伝える。
そして、ルージュ達は気絶チンピラを担いで工房の中に入る。〈怪我をしている作業員にはポーションを渡す〉
それから、俺達は工房の中に入り、ライムと作業服を着た人達に案内されて工房でも比較的広い場所に、チンピラ四人を転がして騎士二人を見張りとして配置する。
そして、俺とルージュとローゼ、ライムと親の工房長夫婦の六人で相談する事になり、全員席に座って自己紹介した後、話し合いが始まる。(ローゼが辺境伯令嬢だということは言わないで貰った)
なので、まず工房長のゴズスさんが口を開いた
「助けていただきありがとうございます。ですが相手は金貸し屋シルードで、この街ではかなりの権力者でトップの所ですよ。あと、この街は工房が多いのですが、借金している工房も多くて、返済できなかった者達は奴隷にされて来ました」
それを聞いただけで面倒な気がしてくるのは、気のせいだろうか?
「それは何とかなりますが、捕まえるには証拠がなければワタシ達も動く事が出来ないので、何とかしたいのですが難しいですね」
うん、何でその話になるんだと突っ込みたくなる。
「別に、俺様達の力を使えば簡単に潰す事が出来るが、問題はその後、金貸し屋がどうなるかだよなダンナ」
いや、だから何で潰す前提で話しているんだよ!?
「とりあえず、俺達は商業ギルドでミスリルの話をしていたよな。それが何故、金貸し屋の話になっているのですか!?」
しかも、ここまで来たら無視する事が難しいじゃないですか……。
その事に、ライムが答える。
「それは、僕も鉱山へ荷物持ちでもいいので、着いて行って、その時に報酬をもらって、借金が少しでも返せると思ったので、冒険者ギルドに向かったけど相手にされなくて、商業ギルドに行ったら、たまたま騎士の方々がいらしゃったので、相談する事にしました」
なる程、とりあえずこの状況を何とかしたかったのだな。
そう考えていると
「なら、俺様とダンナとガキで鉱山に向かって大量に掘ってきて、ローゼ達はここで警備しておくのがいいんじゃないのか?」
ルージュがそう喋る。
んっ? ちょっと待て、俺は安全地帯で商売したいのに、何故危険な所に連れて行くんだよ!?
「確かに、それが一番いい人選の分け方ですね。ただ、ミスリルの見分け方はどうするのですか?」
ローゼがそう言って、ライムを見る。
「それは大丈夫です。自慢ではないのですが、僕は物質鑑定のスキルを持っているので、そこは大丈夫だと思います」
なる程、ロートスの街で鑑定士をしている、メルさんと同じスキルを持っているんだな。
「それなら、まだ何とかなりますね。それなら主君とルージュと貴方は鉱山に、ワタシと騎士二人は護衛で大丈夫ですか?」
あの、俺の意見も聞いてもらってもいいですかね……。
「主君、いつもすみません。また面倒ごとに巻き込んでしまったかもしれないです」
そう言ってローゼは頭を下げて来たので
「まあ、ここまできたらお断りしますとは言えない雰囲気だからやるしかないな。あと、俺は雑貨屋の店員で商人だから、冒険者ではないからな」
俺はせめてこれだけは言わせて貰う。
ただ、他の人に完璧にスルーされて悲しくなってしまう。
そして、何故か俺達は鉱山に向かう事になってしまい、ローゼ達は工房で警備で泊まり込みをするらしくて、俺とルージュにライムを足した三人は鉱山に行くための準備をする。
「なあダンナ、買い物に行く前にそろそろいい加減に飯にしないか? 俺様は腹が減ったんだが」
確かに、昼ごはん食べずに来たからお腹が空いたな。
「どこか、いい食べ放題店があれば、いいんだけどな」
俺がそう言うとライムが反応する。
「それなら、僕がいい所を知っています。一人三千パルで食べ放題の店なら近くにあるので、そこに行きましょう」
「いやいや、お金はどうするだ。お前の家は借金しているのだろう?」
そう聞くと俺の方に頭を下げてきた。
「すみませんが、僕が働いた分の所から天引きしてくれると嬉しいです」
「いや今回は別にいいぜ。ダンナ今回は俺様のサイフから出すからそれでいいか?」(ちなみに商談した時にある程度のお金をルージュに渡しておいた)
「仕方ない。店はこっちで決めたから今回は仕方なく奢る事にする」
俺がそう言うと二人は喜ぶ。
だがライムは知らない。何故この店を選んだかと言う事を。
そして、店に入りコースを頼んで俺とライムは普通に頼んで、ルージュは大量に頼んだそれを全部完食してまた頼むを繰り返す。
その光景を見て、ライムと他の人は、俺がいつも見ている様に唖然とした表情になる。




