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数日後

 赤オーガの戦いから数日が過ぎたある日。


 いつものように雑貨屋を開け、ドアにかけてある札を準備中から営業中に変えてお客様を待っていると、ニッコリ笑った二人が来店して来た。


 俺は面倒な事になりそうだと思い、即刻帰ってくれと思ってしまう。

 

 だが、現実はそう甘くなくて、二人は俺を見つけると駆け足で俺の方に近寄って来る。


「ハルヤおはよう。今日こそは私達とダンジョンに一緒に行くぞ」

 

 レイナがいつものセリフを言ってきたので、思わずため息が出てしまう。


「ワタシ達は準備はしてきたわ、ハルヤも準備してきたわよね」 

 

 レイナに続いて、もう一人の幼馴染であるソルも言って来る。


 お前もか、というかなんで連れて行こうとするんだ、いい加減にしてくれ。


 俺は頭を抱えたくなったので


「あのな、前は緊急事態だから渋々入ったが今回は何も起きていないだろ、それに何回も言っているけどなんで安全な所に住んでいる俺をダンジョンという危険極まりない所に連れて行こうとするんだ! 後、ソルお前は俺を騙しただろ」

 

 今日も、いつも言ってきた事+騙した事に文句を言う。


 まぁ、これで反省するとは思ってもいないけどな。


 そう思っていると、やはりその予想通りは当たる。


「でも、あの赤オーガのことが終わってから、ハルヤは冒険者ギルドに何回か行っているよな」


「それは、ギルドの冒険者達に怪我をしたので、治して欲しいという依頼が、ギルド職員経由で毎日のように来るからな」


 最近かなりしんどいし、人が多いから時間がかかって大変すぎるからな。


 俺は、コップを手に持って水を飲んでいると


「確かにワタシ達が怪我をした時も、いつも治してもらったわね」 

 

 ソルが昔を懐かしんでいるみたいだな。


「私達が新人の頃いつも怪我だらけでポーション代もなくて、最低限の治療しかできなかった時も、格安で治療してくれた時は本当嬉しかった」


 ソルの言葉を聞いたレイナもそう喋る。


「まぁ、そこは大変だったから、少しは怪我を減らしてくれと思っていたけどな」

 

 俺はその時から巻き込まれて体質があったのかな?

 

 まぁ、その事は考えないようにして、レイナが何かを思い出したみたいだ。


「そういえば赤オーガを倒した時に、宝箱から出てきたアイテムはどうしたんだ」


 その問いに、俺はカウンターの横にある非売品と書いてある札の所を指差す。


「あそこに非売品という札が貼ってあるだろ、あそこに指輪を飾ろうと思うんだ。結構キレイだからな」 


 そう話すと二人はビックリしている。


 そして、俺に詰め寄ってきた後


「そういえば、ハルヤはその指輪鑑定してもらっていなかったよな。今からでもいいから鑑定士の元に行くぞ」 

 

 レイナが、焦りながら俺の手を掴む。


「ちょっと待て、さすがにこの雑貨屋をまた閉めるわけにはいかない。また空いている時でも行くから大丈夫だ」

 

 俺は、なんとか手を振り解き離れると、ソルが


「わたしが店番しておくから大丈夫よ」


 えっ……。いやお前、店員ではないだろ。


 そう突っ込みたかったが、その前にレイナが


「ソルが店番するなら、私がハルヤを連れて行けばいいんだな」

 

 そう言って、もう一度左手を強く掴んで来たので俺は諦める。


 そして、冒険者ギルドにある鑑定所にそのまま連れて行かれてしまう。


 それから、冒険者ギルドの中にある、鑑定エリアに着いたので、早速レイナが一人の鑑定士を呼んだ。


「メルさん、今空いてますか?」


 と言いその言葉に反応した、二十代中盤辺りの金髪ロングでかなりスタイルがいい女性が近づいて来る。


「あら、レイナちゃん今日はソルちゃんとじゃなくてイケメン彼氏さんとデート?」


 メルさんと呼ばれた女性がニッコリしているが、俺とレイナはただの幼馴染だ。


「違います、私とソルの幼馴染です。今回は前のイレギュラー魔物の赤オーガの宝箱から出た指輪を鑑定して欲しいと思いきました」


 レイナが俺の方を見ながら話す。

 

 その事を聞いた金髪ロングさんは、こちらに向いて


「なるほど、それで灰色のイケメン青年さんと来たのね。はじめまして、わたしはメル、この冒険者ギルド、ロートス支部で鑑定士をしているわ。よろしく」


 と言った後に右手を差し出して来たので俺は同じく右手を出して


「ハルヤです。よろしくお願いします」


 と言って握手する。


 そしてメルさんと握手した後、本題の指輪のことに入った。 


「今回出たのは、金の宝箱で良かったんだよね」


 と首を傾けていたので俺達は頷いた後、質問を返す。


「はい、そうですが何かあるのですか?」


 すると、メルさんが少し悩んだ後


「金の宝箱は出現率がとてつもなく低いのよ。そのため、かなりレアな物の可能性がとても高いのよ」


 と真顔で話してきた。


「ということは、かなりの高値で売れるのですね」 


 俺は少しテンションが上がったが


「実はそう言ったものには、適正又はすでに使用者が登録されていて、その人しか使えない物の可能性がとても高いから、売れる確率はとても低いわ」


 それを聞いて、拒否すれば良かったかなと思ってしまう。


 そんな状況を見たメルさんは


「取り敢えず、ギルド専用の部屋に移動しましょう」


 と言って、俺たちをそこに連れて行く。


 そして、この鑑定がとんでもない事になるとは、今の俺たちには想像してもなかった。


 そして、俺達三人はギルド専用の部屋に移動して、備え付けられているイスに座った後、ポケットの中に入れておいた、銀色の指輪をテーブルの上に置く。


「この指輪が赤オーガを倒した時に出た、金の宝箱の中身なのね。取り敢えず鑑定してみるわね」

 

 そメルさんは物質鑑定のスキルを発動したが、パリーンという音がして、スキルが弾かれる。


「なにこれ、わたしの物質鑑定のスキルが弾かれたわ。これは相当な曰く付きかも入れないわね」


 と言って触ろうとしたら指輪に結果が張られて触れられないみたいだ。


 それを見たレイナが驚きながら


「なんですかこれ、相当ヤバイ物ではないのですか」


 と若干パニックになっている。


 そして、今度は俺が触ると何故か指輪が右手の中指に装備される。

 

 それを見ていたレイナとメルさん、あと俺は硬直してしまう。

 

 少しして、なんとか硬直から復帰した俺は何処か変わった所がないかを確認した後、メルさんが質問してくる。


「ハルヤくん。どこか変わったところはないかしら」


 と言って俺の右手の指輪を触ろうとするが、また弾かれた時に、俺の頭の中に指輪の詳細がほんの僅かだけ入ってくる。


 だが殆ど分からなくて説明が出来ないので、ここは、普通に答える。


「特に変化はないですよ、しいて言えばこの指輪が取れない事ぐらいですね」

 

 と答えると二人はホッとした表情になる。


 だが、レイナは真面目な表情で

 

「もしなにかあったら、無理矢理にでも治療院に連れて行くからな」


 と言って来て、メルさんも頷いている。


 俺もその事に頷いておく。


 そして、この後も調べたが、指輪のことはメルさんにはわからなかったので、報酬はいらないと言われる。


 結局、何もわからずギルドから外に出て雑貨屋に向かう。


 それから、冒険者ギルドから歩いて、いつもの俺の雑貨屋に着くと、ソルがカウンターで寝ていた。

 

 俺はその状況を見て悩んでいると、レイナがゲンコツをソルに落とす。


「痛い、なにが起きたのかしら」


 ソルはそう言って飛び起きて目の前でキレる寸前の顔になっているレイナを見つける。


「ソル、お前私達が鑑定所に行っている間ここで寝ていたな。一応理由は聞く何故寝ていたんだ返答次第ではタダでは済まさないからな」

 

 と俺には使われたことのない低い声で質問する。


 それに対しソルはガクガク震えながら


「えっと、お客様が全く来なくて暇になったので寝ていました」


 と弁明する。


 なる程、つまりは客が来ない悲しい店と言いたいのか!


 俺がそう考えているとレイナは


「そうか、だから寝ていたんだな!」


 と拳をポキポキ鳴らしている。


 そして、ソルが逃げ出そうとする所をレイナがとっ捕まえた後、俺に『奥の部屋を借りるぞ』と言いソルを連れて行く。


 その後、かなりの時間なにかを叩く音と、ソルのごめんなさいの声が聞こえてきたので、俺は静かに営業中の札を準備中変える。



















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― 新着の感想 ―
[良い点] 指輪は外れなくなるわ、お店は閉店にするわで、つぶれないようにするのにギリギリなところって感じがすすけてていいですね。
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