竜魔法の威力
さて、とりあえず標的の大きな岩に向かって攻撃してみますか。
そう思い、俺は頭に浮かんだ赤竜魔法第一階を発動する事にした。
詠唱とか特に要らないので、名前だけ言えばいいらしいので、やってみる。
「赤竜魔法第一階」
俺は手を岩に向けて名前を言ってみたら、手から半径一メートル位の魔法陣が出て、その中から炎の砲撃が発射されて岩を粉々にするどころか、威力が減衰せずに斜め上に向かって飛んで行く。
それを見た俺達はある事をば思う。
それは『うん、これはヤバイやつだ……』と
俺は、この魔法は本当の緊急事態の時にしか、使わないようにしようと思う。
そして、振り向くと、魔法の威力を見て唖然としている四人。そりゃ、そうなるよな。
でもルージュ、お前はなんで驚いているんだ?
そして、やはり最初に回復したのはルージュで俺の肩を掴んで来る。
「ダンナ、あの威力は何だ!? 俺様でも同じ魔法でも竜形態(人間形態では力が落ちる)にならないと出せない出力だぞ」
それは俺が聞きたい事だ。
というか、俺は商人で雑貨屋の店員だよな、何でこんな魔法使えるようになるんだよ!?
「これは、他の人にこの事が知れたらほぼ悪用されるね。例えば国の国軍に知られたら前線に送り込まれたりすると思うよ」
絶対にそんな所に行きたくないし、平和に暮らしたいんだよ。
エルがそう言って来たので俺は、何でこうなると思った。
そして、赤竜魔法の試し撃ちが終わり、この話は絶対他の人に言うなと口止めして、その場は何とかおさまったのでよかった。
後、魔法が反則すぎるだろと思ってしまう。
そして、夜も深まってきたので見張りの割り振りを決めようとしたが、ここでも一悶着あり少し時間がかかったが何とか決まる。(前半は俺、レイナ、ルージュ。後半ソル、エル)
なので、話が終わった後はソルとエルはテントの中に入り、俺達三人は見張りを始める。
「ダンナ、見張りはやっぱり暇だな」
うん、俺もそう思っているから静かにしてくれ。
そう考えているとレイナが声をかけて来る。
「ねえ、ハルヤ、まだ雑貨屋を続けるの? 正直冒険者や治癒士とかになった方が稼げると思うけど」
確かに、普通ならそう考えるかも知れないが俺は嫌だな。
「そうだな。これからも雑貨屋の店員として働いていきたいからな。前も言った通り力を持っているのがバレると自分達の為に使えとか言ってくる、クズとかが湧いてくるからな。それで、そんな奴らに利用されたくないのと、後はあの雑貨屋は爺さんの形見だからな」
俺がそう言うと、ルージュがある事を言って来る。
「ダンナ、そんな奴らボコボコにすればいいじゃねーか。俺様ならそうするな」
確かにその手もあるけど、悪手でもあるんだよな。
俺はその事を伝えると
「ルージュ、確かにその手はあるけど、それをしたら今度は俺達は反逆者とか罪人とか言われて吊るしあげられるぞ。そして、最悪人間に危害を加える化け物として正義というクズに討伐される事になるからな」
「なる程な。人間ってそんな奴らがいるんだな。それを聞くと、生きにくい世の中だな」
俺は、その事に頷くと同時に、少し補足を入れる事にする。
「ただ、全員がクズというわけではないぞ。ごく一部がその可能性が高くて、そいつらに権力などで仕方なくそうさせられる人も沢山いると思うぞ」
「そうだな。ロートス街も国軍の上層部や商業ギルドが腐敗していて、下の物が長時間働かされていたのは知っている」
何故で、こんな世の中になったんだろうなと考える。
そして、ある事を思う。
それは、俺達はロートスとその周辺の街しか知らないから、もしかしてめちゃくちゃいい場所もあるかも知れないと言う事。
まぁ、それはさておき、この話を続けると愚痴合戦になりそうなので内容を変える事にして、その後は特に平和に見張りが終わり交代の時間が来たのでソル達と変わる事になった。
その後は寝て朝になり、俺は目を覚まし起きようとするが、体が動かない状態になっている。
よく見てみると、ルージュが抱きついて来ているではないか。
(前のローゼの時よりも、締め付けがかなり強い)
隣で寝ているレイナは大の字で爆睡しているし、ルージュを無理矢理起こして、寝ぼけてドラゴンになられるのも問題だからどうしようもない……。
そう考えていると、運よくルージュが目を覚ました。
「おはようダンナ。とりあえず美味しくいただきます」
起きていきなり俺の耳を甘噛みしてきた後、なんとか離れて貰って、顔がベトベトになったので洗浄魔法をかけてテントから出る。
「おはよう、ハルヤとルージュさん。あのバカはまだ寝ているの? とりあえず起こしてくるわね。後は朝ごはんはエルが作っているから少し待っていてね」
ソルがそう言って、レイナを起こしに行く。
「あのさダンナ、少し聞きたいことがあるがいいか?」
ルージュが、俺の方を見て来てしおらしく、そう言ってきたので不思議に思う。
「別にいいけど、何かあったのか?」
「ダンナは、俺様を助けたのと、無理矢理契約させられた事に後悔はしていないか?」
そんな事を聞いて来たので
「それは、お前が強引にして来た事だろ。でも不思議と後悔はしてない気分だな。ただ、面倒ごとが起きなければ良いなとは、思っているから微妙だな」
俺は面倒ごとは嫌いだけど、流石にここまで、行ってしまったら見捨てる事は出来ないからな。
そして、俺は自分の性格が変わって来たなと、思いながららエルがご飯作っているので手伝いに行く。
まぁ、なんだかんだ色々起きたが、朝ごはんを食べ終わり、何とか復活した運転手さんにルージュが新しく乗る事を伝えたら、心良く大丈夫ですと言ってきたのでよかったと思ってしまう。
(ちなみに、もう一人分のお金は払った+ドラゴンの事は秘密なので言っていない)
そして、特に何もなく馬車に揺られ約半日くらいかかっで夕方、やっとの事で鉱山がある辺境の街スートルに到着した。
馬車の運転手さんと別れた後、街を探索する。すると、ロートスの街よりも活気があって、筋肉マッチョな人たちが馬車などで大量の鉱石が入っているであろう袋を運んでいる。
「なる程、ロートスの街はダンジョンでここは鉱山が経済を支えているのね。すれ違う人も体格がいい人が多いわね」
ソルが周りを見て、そう判断する。
そして、なんか暑苦しい所だなと思いつつ、俺とルージュは商業ギルドに、ソルとレイナとエルは冒険者ギルドに向かった。
(行ってみたらロートスの街と同じく隣同士で手続きしてすぐに合流できた)
そして、俺達は別行動をするため少し高めの食べ放題屋店に向かう事にした。
少し歩いて、その食べ放題店に入ると、かなり混んでいたが、空いている所もあったので、店員さんに案内されてそこに座る。
メニューが渡されたが、決まっているので一人五千パルの食べ放題を頼み、先払いして店員さんが砂時計を持ってきてスタートと言ったので、それを聞いてメニューを開いて、俺は自分の分を頼んだが、大食い娘が四人に増えているため頼む量が尋常ではなかった。
(あと、予想通りテーブルに乗り切らなかったので、もう一つのテーブルを合わせる事になってしまう)
いつもの如く、俺は自分の分をマイペースに食べて、他の四人は店を潰すレベルで食べている為、一回の追加注文の量がえげつない。
俺はこの状況を見て
『どうなっているんだコイツらの胃袋は』
と考えてしまう。
「ダンナはそれだけでいいのか、食べ放題と聞いて大量に食べるかと思っていたが少ないんだな」
いや、俺が少ないんじゃない。お前らが多いんだよ。
そう突っ込みたかったけど、四人とも食べるのに夢中で全く、俺の話を聞かない。
なので、四人が大量に食べている光景を見つつ、砂時計が半分を過ぎた時になると、他の客は違うテーブルに置いてある大量の皿に唖然として、店員さんは数人がかりで大量の料理を持ってきて、それを爆食いする大食い娘達の図が出来る。
俺は、やっぱりこうなったかと思いながら、食後のアイスコーヒーを頼みゆっくりしている。
そして、砂時計の砂が落ちる時間が遅く感じたが、何とか全部落ちた頃には、いつもより大量の皿が席に乗っていた。
それを見た他の客は固まっていて、店員さんはやっと終わったかと息を切らしている。
最後に普通にホールのケーキを頼み、俺達は別れの挨拶をして、食べて別れた。〈店は大赤字らしいです〉
そして、俺とルージュは宿に泊まりに行った。




