不思議な声
五千pv突破しました。皆さまありがとうございます。
馬車に乗って、生まれ育った街のロートスから出たが、不思議と感動や寂しさが湧かなかった。
「ハルヤ、私は全く寂しさなどを感じないのだが」
レイナが、そう言って来たので俺は頷く。
「わたしもよ。街の上層部の人達が、あんな不正ばかりで腐敗しているとは思ってもいなかったわ」
いや、俺は散々な目に合わされて来たから、その可能性があると薄々は思っていたけど、まさかここまでとは思ってもいなかったからな。(後、証拠がなかった)
そう考えていると、エルが話しかけてきた
「少し、不正とかの話から変わるけどいいかな。ボク達はハルヤ君の護衛としているけど、他にも何か理由はあるよね」
そういえばそうだよな。別に護衛は雇えば問題ないよな。
「それは、わたし達がハルヤの護衛以外に用があるからよ。確かに冒険者ランクはDだけど、そこそこ戦えるし、それに一番の理由は幼馴染だから色々な事を知っているから良いと思っただけよ」
まぁ、それもあるから護衛を頼んだからな。
そう考えていると
「それより、エルは何でわたし達と一緒に行こうと思ったのかしら。確か、前に修行の旅とか言っていたわよね?」
次はソルが、エルに質問した。
「その問いは来ると思ったよ。それは今回のゴブリン戦でボクの力不足を感じてね。でも修行は一人ではつまらないから、ちょうど冒険者という働き口もあるからいいなと思ってね」
エルが決めた事なら別にいいか、そう考えつつ俺は馬車に揺られた。
そして、少しして馬車が止まり、運転手さんが
「そろそろお昼にしませんか?」
と言って来たので、俺達は昼ご飯を食べることにする。
そして、昼ごはんを作った後、美味しく食べている時に何か呻き声が整備された道から外れた森の中から、何かが俺の頭の中に響いて来た。
なんか不気味だなと思いつつ、レイナ達にその事を言ってみる。
「なぁ、なんか頭に響く声がしないか?」
そう三人と運転手さんに聞いてみるが、何も聞こえないと言ってくる。
「もしかして、魔物かな? そうなったらここで戦闘になるかもしれないし、ここで戦うのはマズイから偵察だけしてここから離れた方がいいかもね」
エルが食べ終えた食器を、魔力を込めたら水が出る水筒でスポンジと洗剤をつけて洗っている。
その光景を見て俺は、いやいやのんびり食器を洗っている場合ではないだろ!?
「でも、私達には何も聞こえてこないわよ。ハルヤの聞き間違いではないのかしたら?」
「俺も最初はそう思ったけど、今も何かの声が響いて来るから聞き間違いではないな」
その言葉を聞いた、運転手さんは
「自分は、全く戦闘は出来ないので守ってもらえますか?」
と言って、震えている。
「とりあえず、ボクとハルヤ君がその音のする方に行って、レイナとソルはここで、運転手さんを守ってもらっていいかな?」
「分かったわ、ダンジョンならともかく外の戦闘は貴女の方が慣れていると思うから今回はいいわ。でも今日の見張りはわたしとハルヤにしてもらっていいかしら?」
まだ、その話続いていたのかよ……
「その話は、私がハルヤと一緒に見張りするんじゃなかったのか?」
レイナがそう言ってくるが、それよりも音が大きくなってきたので、早く見に行きたいのが本音だ。
「見張りはまた後で決めるとして、ハルヤ君ので顔色が変わってきたから、ボク達は行ってくるね」
そう言って、俺とエルは音が聞こえる方に向かって歩く。
そして、森に入り歩いて進むが特に魔物は見つからなかったが、俺が頭の中に響いてくる音は少しずつ大きくなっていた。
「本当に聞こえてきたの? ボクは何も聞こえないし、周りを見ているけど特に変化はないよ」
「いや、段々と大きくなっている。グオーという声が聞こえてくる」
俺がそう言った後、もう少し歩いていると突如、森の中に大きなクレーターが出来ていたので、俺とエルは驚く。
すると呻き声がしたので、中心を見ると赤髪で大柄な女性が倒れていたので、俺とエルは、それを見てすぐに駆け寄る。
近づいてみると、かなりの大怪我をしていたので、俺はすぐに回復魔法をかけることにする。
「すみません、回復魔法をかけますよ」
俺がそう言ったら、少し頷いたように見えたので第六階をかけた。
すると、見える怪我が治ったので、女性が起き上がってこっちを見て来る。
赤いロングの髪に鋭い目つきの美人さんで、身長は俺より高くて胸もかなり大きい女性だ。
そして、俺の方を見てきて口を開く。
「俺様を助けたのは灰色の兄ちゃんか。とりあえず、礼を言っとく、ありがとな。後、食料を持ってないか? 腹が空いて動けないから何か食わせてくれ」
うん、なんて表現すればいいのかわからないが、これだけは言える。
また面倒ごとの匂いがすると、そう考えつつ仕方なく食料を渡すと
「すまないな、怪我を治してもらった上に飯まで食わせてもらって」
何故か凄い威圧感がある赤髪の女性に、俺とエルは持っていた食料の半分を渡した。
その食料を豪快にガツガツ食べている姿を見ると、一周回って清々しい気持ちになってくるのは、気のせいでは無いと思う。
そう考えていると、食べ終わった女性が俺を見て来たので、何かな思っていると
「お前なんだその魔力量!? おかしくないか。そうか、だから俺様の怪我もキレイに治せたんだな」
うん、やっぱり魔力が感じられる人は俺の魔力量が可笑しいと言ってくる人が殆どだけど、こっちはただの雑貨屋の店員ですが……。
(今は、雑貨屋店員+商人になりました)
後、俺が聞こえていた呻き声が全く聞こえなくなったので、聞いてみることにする。
「そういえば、ここに来るまでに呻き声みたいなのが聞こえて来たが、それはお前か?」
すると、女性が目を見開いて俺の肩を掴んだ。
「まさか、あの声が聞こえていたのか?」
と聞いてきたので頷くと
「そうか、たまたまだが見つけたぜ」
と言って来た。
なんか、嫌な予感をしていると、俺の横にいたエルが何者か女性に聞く。
「貴女は何者なんだい? 少なくとも、相当な魔力を持っていることは、ボクはもう分かっているよ」
と若干睨みつけながら、そう話す。
「こっちの名前を聞く前に、自分の名前を言うのが先じゃないのか?」
確かにそうだよな。
そう言われたので俺とエルは自己紹介した。
「なる程、ダンナの名前はハルヤで、黒髪の嬢ちゃんはエルという名前なんだな。なら次は俺様の番だな。俺様はルージュ、これでもドラゴンだぜ」
えっ……。何ですと!?
「いやいや、色々突っ込み所がありますが、貴女はどう見ても人ですよね」
エルが凄く焦りながら、そう聞いていた。
「今は人間形態だからそう見えるだけで、本来は大きな赤いドラゴンだぞ。まあ、今の状態ならわからないな。それに、契約者が見つかるとは思ってもいなかったがそれはそれで好都合、体も治ったし俺様の本来の姿を見せるぜ」
いや、なんか契約者とか聞こえたのは、気のせいですか?
俺がそう考えていると、女性が光輝いて、少しすると、二十メートルくらいの、とてつもなく迫力があるドラゴンに変身している。
「どうだ、これで俺様の正体は分かっただろ。こっちの姿だと森の中では目立つから元に戻るぞ」
是非そうしてくれ。
俺はドラゴンの姿を見て固まっていたが、エルは立ったまま気絶して動かなくなっていた。
確かに本当にドラゴンだったが、何故ここで倒れていたのかが謎だな?
すると、ドラゴンの姿から人間の姿に戻ったルージュは俺の方に抱きついてきて
「そういえば、いきなりで悪いが、契約者+俺様の主になってくれないか?」
と言ってくるので、俺は他にもある事を思ってしまう。
それは、契約者ってなんだ!? (あと何で主まで入ってきたんだよ)
俺は、何でこんな面倒ごとに巻き込まれるんだと思い、頭を抱えたくなってしまう。




