ゴブリン迎撃戦終了
やっと、ゴブリン大量発生の事件は終了した。
この、討伐戦に魔力をかなり使った俺は、ローゼから戦後の処理はしなくて大丈夫だから家に帰ってゆっくり休めと言われる。
本当、話がまだわかる奴で良かったと、思ってしまう。(他の人が、あまりにも話を聞かなかったり、利用してくるので感覚がズレている)
そして、その言葉に甘えさせて貰って俺と護衛の三人(レイナ、ソル、エル)は帰宅する。
(そのあと風呂に入って装備に洗浄魔法をかけて綺麗にして寝床に入って全員爆睡した)
次の日、街の住人の中から処理を手伝ってくれる人を募集して、かなりの人数が集まったみたいだ。
その時の俺達は、家の外に出なかったので後で聞いた話だ。
それから、ゴブリン大量発生から一週間が過ぎたある日、朝ご飯を食べ終わってゆっくりしていると、呼び鈴の音が鳴ったので外に出ると、ツインテールで青い瞳をした女騎士のローゼが家の前に立っていた。
「主君、ローゼリア・ソーラントただいま参上しました」
と俺の方を、しっかり見て敬礼してくる。
俺は、嫌な予感がするが、一応礼儀なので挨拶を返す。
「おはよう、ローゼ何か進展があったのか? 悪いが俺は、これ以上面倒ごとに関わりたくないから、ほっといてくれないか?」
「ワタシも、主君の性格を知っているのでわかってはおりますが、ある程度こちらも落ち着いて宴会も開始されるそうなので、参加して欲しいと思い、ここに来ました」
「悪いが俺は参加しない。レイナ達はどうか知らないけどな。とりあえず中に入ってくれ」
俺は、ローゼを家の中に入れる。
「お邪魔します。店の中には商品が無いのですね。確かに今までの事は他の方に報告されているので、雑貨屋の店員としてあまり働けてない事は聞いていますが」
「そうだな、数週間前の赤オーガから問題が立て続けに起きていて、悲しい事にあんまり雑貨屋を経営出来ていない。その分、副業の方でかなりのお金が入って来たから生活は苦しくはなかったけど、俺は虚しくなったな」
「主君は昔から膨大な魔力を持っていて、さらに回復魔法の適正があったので、面倒ごとに巻き込まれていたと言ってましたね」
「そうだな、だがこの話は終わりだな。リビングに行くぞ」
俺は、そう言ってローゼを連れてリビングに向かう。
そして、少し歩いてリビングのドアを開けゆっくりくつろいでいる三人を、ローゼは見た後にため息をついた。
「ここは、主君の家兼店ですよね。なのに何故この三人はくつろいで、主君が出迎えて来たのですか?」
うん、確かにそう思ったが、動かなかったので仕方なく俺が出ました。
「ちょっと待ってくれ、私は無罪だぞ。前のドアを壊した事や他の事でソルとエルにお仕置きされて、つい最近まで動けなかったからな。今でもまだお尻が痛い」
「なら、ワタシもお仕置きしていいのですね」
そう言ってレイナの肩を掴んだ。
レイナはこちらの方を見て来たが、俺達は全員目を逸らす。
まぁ、確かにこのタイミングでお仕置きされてレイナが動かなくなるのは、少し問題があるので俺は止めることにする。
「ローゼ、悪いがレイナをお仕置きするのはまた今度にしてくれないか? これから、この街を出て仕入れに行こうと思っているからな」
その言葉に、ローゼは驚くかと思ったが、意外と素直に頷いた。
「確かに、最近は主君の回復魔法を利用しようとしている輩が多いと報告を受けていました。さらにワタシの部下の騎士も何とかして雇おうと考えているものもいるのを知っているので、少し他の街へ行かれた方が良さそうですね」
「本当に迷惑な話だ。俺は普通の雑貨屋の店員だが他の奴らは回復魔法使いがメインだと勘違いしている奴があまりにも多いし、他にもローゼが言った通り従えようとしてくる奴らも多けど、この雑貨屋は形見だから守っていきたいと思っている」
「中には力で従わせようとした人もいたから、ボク達が倒して衛兵に引き渡したよ」
エルが口を開いてそう話す。
「そんな事もあったのですね。まぁ、国軍支部長があれならそうなりますよね」
「ちなみに、俺達が帰って戦後処理が終わった後は、どうなったんだ?」
俺がそれとなく聞いてみる。
すると
「それは、まず支部長他幹部が国軍予算を横領していた事が発覚しました。これはお父様が選んだ辺境伯の騎士と国軍が、何かに気づいてロートス支部の中に突入して横領などが書いている書類を回収して、問い詰めると素直に吐いたから拘束した」
なんで、いきなり爆弾を投げつけてくるんだよ!?
「まさか、国軍が横領をしていたなんてボクは気づかなかったけど、色々権力でも強引にしていたのは見たからおかしいなと思ったよ」
「ちなみに、叔父様のギルド長は何かあったのかしら?」
ソルがローゼに問う。
「それは、ギルド長は主君の誘拐や器物破損くらいだからそこまではないな」
その事を聞いて、ソルがホッとする。
「商業ギルドの方はパワハラ、セクハラ、サービス残業が当たり前で一般職員の目が死んでいたぞ」
なる程、こっちはこっちで最悪じゃないか……。
「こんな辺境の中の辺境まで、監視の目が届いてないと思い、権力者はメチャクチャな事をしているんだな」
俺は、四人を見た後に頷く。
「主君が一回街を出るのでしたら、これを渡しておきます。最近王都の研究者達が開発した通信水晶です」
そう言い、半透明な水晶を差し出してくる。
そして受け取ると、ローゼが説明を続ける。
「これは、魔力を込めるともう一つの水晶に声が届く仕組みです。魔力の込め方は簡単です。魔結晶の時みたいにすれば良いのですが、込めすぎると粉々になるので、ほどほどに込めてください」
「なる程、便利な物を渡してくれてありがとうな」
俺はローゼにお礼を言う。
「こちらこそ、たまに主君の声が聞きたい時に通信したいと思っていたので、結構高かったですがなんとか買えたので良かったです」
「ちなみに、いくらしたのよ」
とソルがローゼに聞くと
「申し訳ありませんが値段は言えないです」
と返してきた。
なので、俺は値段を聞くのが若干怖くなったので、この話は終わる事にしようと思う。
「それよりも、今回の報酬と慰謝料がかなりのお金になったから、この店から一旦離れて他の街に商品を集めに行くとするか」
「その話で少し良いですか? 実は、こことは別の辺境伯領の街の一つである、スートルの街にレアな金属が発見されたので商売にはオススメですね」
「なる程、情報ありがとう。でも、俺達もスートルに向かおうと思っていたんだよ。俺は雑貨屋の商品を探すには丁度良いし、レイナ達は装備の新調で行くと言っていたからな」
俺は、ローゼを見てそう話す。
「そうですよね、前のゴブリン戦でかなり消耗した筈ですからね」
確かに、エルの武器は殆ど消耗していなかったがレイナとソルの武器は鉄で出来ていて、かなりの年月使っているから、そろそろ新しい武器を買っても良さそうだなと思う。
「だけど、そこで俺達は別行動になるからな。俺は雑貨屋の商品を集めたりして、レイナ達は装備の新調だから一旦別れるな」
と俺は、三人が頷いたのを確認してその事を言う。
そして、レイナ達からある事を言われる。
「「「勿論ハルヤ(君)のスートルまでの護衛は自分達に任せてくれ(ね)」」」
と言ってきたので、良かったと思う。
「なる程、主君ワタシも一緒に行きたいが流石に父上様と交渉しないと行けないので難しいですが、何か困った時はソーラント辺境伯領に来てくださいね」
「その時になったらお願いするよ。それじゃあ、また今度な」
そう言って俺達五人は家から出て、ローゼにと別れて、ロートスの街からスートルの街に向うため馬車に乗る。
そして、スートルに向かう時にある出会いがあるとは、この時全く思ってもいなかった。




