赤オーガ討伐戦
レイナとソルに引っ張られながら目的地の冒険者ギルドに到着したので中に入る。
すると、中にいる人達がこちらに振り向いてきたのでどんな人がいるかの確認を始める事にする。
周りを見ると筋肉マッチョなオッサンの厳つい顔に線の細い女性、さまざまな人が集まっていたのでなんか肩身が狭く感じてしまう。
そう感じていると二人は真剣な表情で受付の前に俺を連れて行き、さっきまで書類整理をしていた受付の方がこちらを確認して来た。
「レイナさんとソルさんが言っていた貴重な回復魔法使いの方ですよね。今回戦いのための装備やアイテムは用意してあるので着替えてくださいね。ちなみに着替える場所は係の者が案内します」
係の人に案内されてギルドが用意した装備に着替えた後に二人と合流する。
俺の装備を確認すると一般的な魔法使い風の装備だ。
笑顔になった二人に似合っていると言われながら支給されたアイテムの確認をしていると、四十代くらいのゴリマッチョなオッサンが用意された台の上に立って話し始める。
「オレは冒険者ギルドロートス支部のギルド長であるドンガスだ。冒険者諸君、イレギュラー魔物討伐戦のために集まってくれてありがとう。今回出たのはオーガタイプの魔物で敗走してきた奴らから話を聞くと、通常タイプのオーガとは比べ物にならない程のパワーとタフネスがあって、後はそこそこのスピードがあると言っていた」
ソルの叔父さん、ドンガスさんがそんな感じで喋る。
というよりは、やはりレイナとソルから聞いた通り面倒だなと考え始める。
「そのため冒険者ギルドは大金を出して〈ポーション〉をなどを買い集めたり、貴重な回復魔法が使える者を招集した。なので諸君には思いっきり戦って欲しい。オレからは以上だ」
前に店にも冒険者ギルドの制服を着た職員が大量に〈ポーション〉を買っていたのか……。
そう思い出していると他のギルド職員から補足が入る。
「ここに集まって貰ったのは五十人の腕利きの冒険者と回復魔法使いの五人の方です。今回は先にチーム分けはすでにしてもらっているので、ここでは省きますね。ただ、かなりの強個体と戦うことになるので皆さん大丈夫ですか?」
強個体と聞いても、冒険者達は『大丈夫』と言ったので、その大きな声を聞いた職員が、周りを見た後に話を続ける
「それではまず、どの辺に出現したのかを伝えますね。場所は五階層の奥にある扉があって、その中はドーム状の部屋でイレギュラー魔物の名前を赤オーガと言いますね。その赤オーガの大きさは人の倍以上で武器には大きな剣を装備していたそうです。後の特徴は赤い皮膚をしているのを聞いています。これで今のところある情報はこれくらいですね。それではよろしくお願いしますね」
と言い担当の職員さんの話が終わった後、ギルド長が一言『それでは頼んだぞ!』と大声で言う。
それを聞いた俺達や冒険者達は、ダンジョンに向かい始める。
そして、ダンジョンの中に入り、一層から五層までに魔物との戦闘が結構あったが、腕利きの冒険者達にあっという間に討伐されたので被害はほぼゼロ。
そして、ついに問題の五層に着いて、ある程度歩いて広い空間にでて、そこで休憩することになったので、水筒を取り出して水を飲んだ後、座り込む。
そうやって座っていると、近くで護衛をしているレイナが
「ハルヤはなんでソルに脅されているとはいえ、今回ダンジョンに潜ることにしたんだ? あれだけ行きたくないと言っていたのに」
レイナがそう聞いて来たので、俺は答える事にする。
「それは、今回ソルから聞いた開発の事が大きいな。あの店が大切なのは、お前らも知っているだろ」
俺はレイナの方を見て言う。
「確かに、ハルヤの爺さんの形見だからな」
レイナは少し俯きながら話す。
その後、俺は幼馴染二人と色々話していると、冒険者の中から選ばれた総リーダーさんが『そろそろ行くぞ』と言ったので、冒険者や俺達は目的地には向かうために隊列を組む。
それから何回か戦闘があった後、目的地の扉に到着する。
そして、みんな最後の確認をするため、装備の手入れをしたり、アイテムが揃っているかを見ている。
俺達も準備とかして、その間にダンジョンに入る前に、計画された作戦の確認をすることにした。
「前衛剣士タイプのレイナとソルは俺の護衛と怪我をした人達の介護で、俺はその人達を回復魔法や〈ポーション〉で治していけばいいんだなよな」
「そうだな。今回の作戦に回復魔法使いはハルヤと合わせて五人しかいないから、戦闘が長くなってもいいようにしないとな」
俺達は作戦の確認をする。
その後、総リーダーさんが『お前ら準備は出来たか?』と大声で言ったので、他の冒険者達が『もちろんだ』と言う声が聞こえる。
そして、前にいた冒険者が扉を開け、中にいる魔物を確認した後、『突撃』と総リーダーさんが言って、冒険者達が突撃して行く。
俺は、後方にいたので魔物の姿は見えかったけど、中に入ると姿が確認できた。
その姿は冒険者ギルドの情報通り、人の倍以上で筋骨隆々の体で赤い皮膚をしていて、頭にはツノ何生えている魔物が、剣を地面に突き刺しながら立っている。
俺は他の魔物もいるかもしれないと思い、他の所を見たが、特にいなかったのが確認出来た。
だが俺達は、この後の光景に驚くことになる。
まず、総リーダーさんは赤オーガを取り囲むように指示して、冒険者達はその通り展開していった。
でも、この作戦は結論から言うと、失敗する事になってしまう。
何故なら、赤オーガが地面に剣を叩きつけて振動を起こし、それに耐えられず転んでしまった近くの冒険者を拳で吹き飛ばしたのだ。
それを見た、回復魔法使い達は俺も含めて、吹き飛ばされた冒険者達の近くに行き治療を始める。
「結構ダメージを受けているな。そうなると回復には少し時間がかかるな」
俺はそう呟きながら回復魔法をかけて、レイナとソルは怪我をした冒険者に〈ポーション〉を使っている。
しかし、さっきの一撃で少なくない被害が出ているので、ここは一回引いた方がいいかもしれないと思ってしまう。
でも、冒険者達の心は折れていないみたいだな。
なんとか、赤オーガのスキを見つけて体制を立て直し、果敢に武器での物理攻撃や魔法で攻撃している。
ただ、見ている限りではどの攻撃も大したダメージが無くて、さらに赤オーガの攻撃で怪我人が増える一方だ。
その状況を見て俺は、回復魔法を使いつつなんとかする方法がないかと周りを見ていると一人の荷物持ちの所にレイナが向かい、その人から何かを受け取っている。
そして、ソルに持ち場をいきなり離れた事でゲンコツを落とされた後、荷物持ちから受け取った物を見せて来る。
俺はレイナが持っている物に驚いて
「おい、それって何かしらの魔法が込められた魔水晶じゃないか!? なんでそんな物があるんだ?」
俺の質問にレイナは、真面目な顔になって話す。
「さっき会いに行った荷物持ちが奥の手として持っていたみたいだ。でも本人は魔力が足りなくて発動出来ないかったみたいで、それを発動できる人を探していたら私に心当たりが一人いると言ったら渡されたんだ」
誰だろうなその心当たりとは、そう考えているとレイナが魔水晶を渡してきたので驚く。
「ハルヤ、お前ならそれを使ってこの状況を何とか出来るかもしれないから頼んだぞ」
うん、なんでこうなるんだ……。
というより、なんの魔法が入っているか分からないのに使えるか!?
なので、その事をレイナに伝えると、他にも喋って来る。
「さっきの荷物持ちが言うには、この魔水晶の中には氷魔法第三階が入っていると言っていたぞ」
おい、それって一軒家が買えるレベルの高価な物だぞ。
そんな物をなんで荷物持ちが持っているんだよ。
そう突っ込みたかったが、考えない事にする。
なので、俺はさっき受け取った魔水晶に魔力を込めながら、前衛を見てみると半分くらいの人が戦えなくなっている。
なので、総リーダーさんが前に立って何とか均衡を維持している所が見えたので、時間があまりないと思った。
そして、魔力を込めていると、魔水晶が光ったので赤オーガに向かって思いっきり投げると、大きな氷の槍が出現して飛んで行く。
すると、たまたま運が良かったみたいで赤オーガの首に深く刺さり、それを見た総リーダーさん達が総攻撃を仕掛ける。
少しして、何とか赤オーガを倒して、黒い霧みたいになって消えた後、金色の宝箱と大きな魔石が残った。
それを見た総リーダーさんは
「さっき氷の槍で赤オーガに決定打を与えたのは誰だ?」
と言って、その事を聞いたレイナとソルが、俺の方を指差して『この人です』と言う。
俺は、なんで指差してくるんだと思う。
そして、そう考えていると総リーダーさんに呼ばれたので渋々そっちに行く。
すると、『コイツに宝箱の中身をやるが文句ないよな」と言い、他の冒険者も特に何も言わなかったので俺が中身をいただく。
中を開けてみると、銀色のリングで青色の宝石がはまっている指輪が出て来る。
その後、戦闘で疲れたので少し休憩して、何とかダンジョンから出た後、冒険者ギルドに帰り怪我人を手当てする。
そして、次の日に打ち上げがあったみたいだが、俺は参加せず家で爆睡していた。
さらに打ち上げが終わった次の日、俺の店にはレイナが
「なあハルヤ、やっぱり冒険者にならないか? 昨日の打ち上げではお前のことでかなり盛り上がっていたぞ」
そうやって言ってくるが俺はその事をスルーしてある大事な事を言う。(ちなみにソルは二日酔いでダウン中)
「それより、ここにソルがいないのはタイミングが悪いが、開発の件をの事で話し合おうと思っていたんだけどな」
そう話すとレイナがキョトンとする。
「その件だが、あの書類はソルが作った偽物だぞ」
……えっ
「偽物? ということは俺は騙されていたのか」
俺はレイナを見ながらそう発言する。
「そうだ。私も昨日の打ち上げの時にその事を聞いて驚いた」
なる程、つまりはアイツの手の上で転がされていたということか……。
そう思い頭を抱えつつ、雑貨屋の営業を続けることにした。
誤字脱字報告ありがとうございます。