ゴブリン討伐の作戦会議一日目
何故、こうなるんだ? そう思いながら今回の作戦を聞いている。
そして話が進み、大体の作戦が組み上がってきたので、クルフトさんが確認してきた。
「今回、ゴブリンキングを討伐に行くのはAランクのパーティー四人とBランクのパーティー二組、合わせて十四人そして国軍の先鋭十四人。そしてハルヤさんとその護衛の計三十三人でゴブリンキングと近くにいるであろうゴブリンジェネラルを倒しに行く作戦ですね」
いやいや、なんで俺が討伐隊に入っているんだよ!? ただの雑貨屋店員に、何をさせようとしているんだ!
そう考えていると、クルフトさんが話を続けた。
「ハルヤさんを討伐隊に組み込んだのは、第三階が連続で使えて体制が立て直しやすいと思ったからです。後、護身用に属性魔法が入った魔結晶を何個かアイテムポーチに入れてお渡しします」
なる程、あれか。
前の赤オーガの時に、ラッキーパンチで討伐に大きく貢献することになった奴だな。
「後、振り分けですが騎士約四百人と冒険者約三百人、衛兵の半数四百人は街の壁の外で防衛してもらって、残りの衛兵は街の中での仕事をしてもらうという作戦が、今のところ良さそうですね」
いや、籠城して辺境伯様からの援軍は待たなくてもいいのか。
その事を考た後、俺は手をあげた。
「すみません、質問一つよろしいですか?」
と聞くと
「大丈夫ですよ」
とクルフトさんに言われたので、発言することにした。
「辺境伯領からの援軍を待って籠城しないのですか? そっちの方が消耗を少ないと思うのは、気のせいでしょうか」
「勿論、その事も考えましたが、今もゴブリンは増え続けているので、今のうちに攻撃しないと取り返しのつかない事になる可能性が高くなる、と予想されるので今回の作戦にするという運びになりました」
「なる程です。ありがとうございました」
何か納得しないが、俺はこれ以上聞くのは辞めた。
「それでは、この作戦に伴って準備をしないといけないと思うので、一旦作戦会議は終了とさせていただきます」
クルフトさんが頭を下げて一旦終了したので、各々駆け足で部屋の外に出て行く。
俺と護衛の三人も、部屋の外に出て休憩所がある所に移動する。
そして、休憩所に着きイスに座りながら、どうしてこうなったと頭を抱えた。
すると、エルが
「薄々思ってはいたけど、やっぱりこうなるんだね。本当に君は巻き込まれ体質だね」
だったら変わってくれと思う。
「あのさ、お前らは大丈夫なのか? 回復魔法は使えるとはいえ戦力としては完全に足手まといだぞ」
「別にわたし達は、ハルヤの事を足手まといなんで思ってないわ。それよりも怪我をした時にすぐ治してくれて復帰できる事を考えたら、こっちの方がいいわ」
「そうだそハルヤ、私達はたまに行くソーラント辺境伯領に仕入れに行く時に、いつも護衛しているじゃないか。お前は完璧な後衛だから、私達が前衛で戦ってその後ろでバックアップしてくれたら大丈夫だ」
「なる程、それなら前衛は頼りにしているぞ」
俺は三人を見ながらそう言った。
その後、少し話しているとエルナ少尉がこちらに来て
「ハルヤ殿にお渡しする物がありますので物資が置いてある場所に来てもらってもいいですか?」
と言われたので俺は頷き、護衛の三人と一緒に向かった。
そして、物資が置いてある倉庫の近くに行くとメルさんがいたので、こちらに振り向いてきた。
「あら、レイナ達おはよう。いきなりだけど、とんでもないことになったわね。副ギルド長から聞いているけど、魔結晶の他には回復ポーションや魔力ポーションなどが入っているアイテムポーチは用意してあるから渡すわね」
そう言ってアイテムポーチが渡されたので、俺は腰に取り付けた。
「そういえば、メルさんはここで物資の検査とかしているのですか?」
俺は、ふと気になったので聞いてみる。
すると
「そうよ。今回は大規模な討伐戦になるから冒険者ギルドや商業ギルドから職員が派遣されて、物資や食事の用意など色々しているわ」
なる程、だからギルド職員の制服を着ている人がいたんだな。
そう考えていると
「そのご飯を作っている所は何処にあるのですか? ボクは少しお腹が空いたので食べたいのですが」
とエルが言った。
確かに、話し合いが結構な時間が経ったから何か食べたいなと俺は思い、レイナとソルも頷く。
「それなら、案内するわ。私もお腹すいて食べに行きたいと思っていたから丁度良かったわ」
そう言ってメルさんは他にいる職員に声をかけた後、俺達と一緒にご飯を食べに行くことになった。
そして、また三人は大量に食べて作り手を固まらせるということがあったとだけは伝えておこう。
昼ご飯を食べ終わり、休憩所でゆっくりしていると、入り口の方から何やら騒がしい声が聞こえてきた。
俺達も行ってみると、馬に乗った騎士達がいて、先頭には兜を外している女騎士がいた。俺はその顔を見て頭を抱えてしまう。
向こうも俺に気づいたらしく、馬から降りて俺の方に近づいてくる。
「久しぶりだな。主君、貴方を守る為の守護騎士、ローゼリア・ソーラントただいま参上しました」
うん、なんでここにいるんだよ。
というかお前、この時期学園にいるのじゃなかったのか?
「あの、ローゼリア様なぜここにおられるのですか? 後、学園はどうしたのですか?」
俺は恐る恐る聞いてみた。
「主君、ワタシとの関係は貴方が主君でワタシがそれを守る騎士という立場ですよ。貴族だからって敬語はいらないです。これはお父様も納得しているという事を何回も言ったはずです」
「それは知っているが、これだけ目立つ所にいて、さらに辺境伯様の長女と喋るのは神経使うからせめて、部屋を用意してくれますか?」
俺はそう言った。
そうしたら
「確かにな。それなら部屋を用意してくれ。ワタシと主君、二人で話したいですね」
何故そうなるんだ。
すると、俺の護衛の三人が反論した。ローゼリアはレイナ、ソルを見たときは余裕な表情を崩さなかったがエルを見たとき表情が固まった。
「なる程、君だったのか。ハルヤ君が頭を抱える原因は。後、言っておくけどボクはここではただのエルだからそう覚えておいてね。後、もし部屋に移動するならついていってもいいよね?」
「うぐっ、わかりました。三人はついてきて大丈夫です」
なんか、立場が逆転しているのは気のせいではないよな。
少しして、部屋が用意されたので俺達は移動することにした。
移動した部屋にあるイスに座り。俺達は話し合いすることになった。
「とりあえず、ロートスの街に援軍として来てくれてありがとう。でもローゼ(ローゼリア)、今は五月だから学園がやっていないのか?」
そう聞いてみると
「主君、ワタシのは今年で十九歳ですよ。学園は数ヶ月前に卒業して、今は騎士団で鍛錬などしています。後、辺境伯領には飛行艇に乗って帰ってました」
(飛行艇とは、モンスターから取れる魔石を使って空を飛ぶ船だ。そのスピードは馬車とは比べ物にならない程早い)
「いやいや、百歩譲ってそこまではいいとして、こんなに早くこの街に来れるのはおかしくないか?」
俺はその事を聞いてみた。
「それは、早馬で来たこの街の人にたまたまワタシがあって話を聞いてすぐに辺境伯個人が保有している騎士の約半分の三百人と、物資を最低限用意してすぐに来ました。後、お父様はソーラント支部の国軍を派遣することに決めているからかなりの戦力になりますね」
それは凄いなと思ったが、何故そこまでしてくれるのかがわからなかった。
俺は、その事を聞いてみると同時に何かあると思いながら話し合いが進んだ。